構造用鋼とは?ss材などの種類や特徴

構造用鋼って何だろう?どこに使うんだろう?そんな疑問を解決します。本記事ではSS材をはじめとする各種構造用鋼の種類や特徴について詳しく解説します。主に機械に使用される構造用鋼に焦点を当てて解説するので、製造関連で働く方のお役に立てる内容となっています。

構造用鋼とは?ss材などの種類や特徴のイメージ

構造用鋼とは?

構造用鋼 歯車

構造用鋼とは、建物の骨組みや、機械の部品など幅広い用途で使用される鋼材です。

幅広い用途に対応するために、使用用途に応じてC(炭素)やP(リン)などの化学成分をJIS規格に合わせて調整し、強度や特性を確保しています。その為、様々な種類の構造用鋼が存在します。

構造用鋼の特徴

構造用鋼の特徴は、構造用鋼の種類によって違います。

なぜなら、使用用途に合わせて最適な鋼材を選択できるように様々な種類の構造用鋼が存在し、一つ一つ強度や特性が違うからです。

例えば、SS材(一般構造用圧延鋼材)であれば、他の鋼材よりも安価で入手しやすいが、溶接には不向きです。SC材(機械構造用圧延鋼材)であれば、炭素含有量が高い為、強度が高いです。さらに、SC材は溶接性も良くなります。

このように一般的によく使用されるSS材とSC材でも特徴は大きく異なります。構造用鋼の種類によって、特徴は変わると理解しておきましょう。

 

構造用鋼の用途

構造用鋼は土木、建築、工場、機械など幅広く使用されています。
すべての分野の説明はできないので、工場でのSS材の使用用途に絞っていくつか紹介します。

・配管固定用の架台
・各種ブラケット
・工場内の階段
・プレス金型のダイセット

など、ふと周りを見渡せば確実に視界に入るくらい、SS材は至る所で使用されています。

補足として、建築現場で主に使用される構造用鋼はSN材(建築構造用圧延鋼材)となります。他にも、SM材(溶接構造用圧延鋼材)、FR鋼(建築構造用耐火鋼材)といったように、構造用鋼は種類が豊富なので混同しないように注意が必要です。
 

ss材など構造用鋼の種類

構造用鋼の種類

構造用鋼がどういったものであるのか、なんとなく理解して頂けたのではないでしょうか。

ここからは、SS材を含め機械性に特化した各種構造用鋼について解説していきます。特徴も解説するので、普段からものづくりの現場で働いている方は、知っておくとお仕事に活かせる事もあるかもしれません。

・SS材(一般構造用圧延鋼材)
・SC材(機械構造用圧延鋼材)
・機械構造用合金鋼
・焼き入れ性を保証した鋼材
・冷間圧造用鋼

これらについて解説していきます。
 

ss材(一般構造用圧延鋼材)

SS材は一般構造用圧延鋼材という名前からわかるように、広く一般的に使用されている鋼材です。特にSS400が主流となっています。
皆さんも一度は聞いた事があるのではないでしょうか?

「SS400」の「400」の部分は最低限保証される引っ張り強さを表しています。よってSS400の引っ張り強度は400以上の400~510N/㎜2となっています。(JIS規格)
他にもSS330、SS490、SS540がありますが同様です。

SS材は引っ張り強さ、降伏点に重点を置いている鋼材なので、P(リン)、S(硫黄)の含有量を0.050%以下(SS540のみ0.040%以下)と定められている以外に、成分についての明確な基準はありません。機械的性質が重視されている鋼材となります。

ss材(一般構造用圧延鋼材)の特徴

SS材は汎用性が高く、様々な場面で使用されている鋼材ですが万能ではありません。

基本的には炭素含有率の低い軟鋼なので加工性に優れています。しかし、溶接を必要とする鉄骨材料等には不向きとなります。

鋼材の中には、肌焼きを行う事で表面を硬化させたり、熱処理を行う事で特性を強化出来るものもありますが、SS材はこれらに向いていません。

SS材は熱を加えて補強する事は苦手なのです。

機械構造用炭素鋼

機械構造用炭素鋼は、炭素含有量が多く強度が高い鋼材となります。

SS400と比べ、JISによる成分規格も明確であり、溶接性や熱処理特性も格段に良くなります。主流なのはS45Cであり、SS400と肩を並べるくらい、広く一般的に使用される鋼材です。

「S45C」の「45」は炭素含有量をあらわしています。S45Cの場合は0.42~0.48%(JIS規格)であり、中央値が45%という意味で「45」と表記されています。SS材が機械的性質を重視した規格である事に対して、SC材は炭素をはじめとする化学成分を重視している鋼材となります。



 

機械構造用炭素鋼の特徴

S45Cは炭素含有量が軟鋼の倍程度の0.45%含まれており、硬く強度のある材料となっています。

機械の部品に使用される事が多く、機械の構成部品やシャフトなど幅広い分野で使用されています。強度が必要とされる回転軸やピンなど強い負荷が掛かる部品には、焼き入れ、焼きならし(熱処理)を行ったうえで使用する事が一般的です。

加工性も良く、熱処理を行う事で機械的な性質を高める事が可能なため、活躍の場がとても広い材料です。特別な特性を求められない限りは汎用性は非常に高いので、バランス力に優れた鋼材だと言えます。


SS400とS45Cはどちらも広く一般的に使用される構造用鋼であり、違いをハッキリ答えられる人は実は少なかったりします。

ここまでの解説で、なんとなく両者の違いは分かって頂けたと思いますが、どちらを使うべきか迷った際には以下の三点で判断しましょう。

・コスト SS400(安価)、S45C(高価)
・熱処理が必要か
・必要な強度

熱処理や強度が必要ない場合は、安価なSS400を使用し、必要であればS45Cを使用する。といったように、同じポピュラーな構造用鋼ですが使用場面に応じて最適なものを選び使用してください。

適切な鋼材選定や加工方法など、特殊鋼専門商社に問い合わせましょう。

 

お問い合わせ|鋼板・鋼材の加工・専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

機械構造用合金鋼

構造用合金鋼は、様々な元素を添加する事で、鋼の強度やじん性をより強化させた合金のことです。

自動車の主要部品やボルト・ナット、航空機やエンジンなどにも使用される合金です。使用用途からもわかるように、耐久性や強度が求められます。

構造用合金鋼の記号は、添加されている元素によって違います。

・SMn〇〇 マンガン鋼
・SMnC〇〇 マンガンクロム鋼
・SCr〇〇 クロム鋼
・SCM〇〇 クロムモリブデン鋼
・SNC〇〇 ニッケルクロム鋼
・SNCM〇〇 ニッケルクロムモリブデン鋼
・SACM〇〇 アルミニウムクロムモリブデン鋼

このよう種類を分ける事ができます。

それぞれ、JIS規格にて合金元素の添加量が定められており、合金元素の種類と添加量によって鋼の特性は大きく変わってきます。


 

機械構造用合金鋼の特徴

硬さや強度に影響を与えるC(炭素)以外に、Cr(クロム)やMo(モリブデン)、Ni(ニッケル)等様々な元素を必要特性に応じて適量添加します。

高い硬さが必要な場合、Cの含有量が多い鋼材を選びます。それに加え、高い引っ張り強度が必要な場合はCrやMoを添加させたクロムモリブデン鋼などの鋼材を選びます。高いじん性が必要であればNiやMnを含有している鋼材を選ぶことで必要な特性を得る事ができます。

このように、必要な硬さ、引張強度、じん性に合わせて必要な元素とその添加量は変わってくることを覚えておきましょう。

構造用合金鋼を選定する際には、「この合金はどこで使われ、どんな特性が必要なのか。」をしっかり見極めたうえで、炭素含有量と合金元素の種類と添加量を見る事が大切です。

焼入性を保証した構造用鋼

先ほど紹介した、構造用合金鋼には「焼入性を保証した鋼材」があります。

焼入試験のデータをもとに、焼入性能を保証した数値の範囲を定め(Hバンド)、その範囲内に収まる合金鋼を一般的には「H鋼」と呼び、構造用合金鋼と区別されています。

焼入性を保証した構造用鋼の特徴

焼入性を保証した合金鋼の表記は語尾に「H」がつき、一般的に「H鋼」と呼ばれます。

例えば、構造用合金鋼の一つである「SCM435」の場合、「SCM435H」と表記されます。Hが付いただけだの全く同じ鋼材であると思ってしまいがちですが、両者では微妙に含有成分量が違い、別々の合金として扱われています。その為、JIS番号も変わります。

焼入性を保証するH鋼は、焼入れした際の表面硬さだけでなく内部の硬さも保証しています。具体的には、焼入れ表面から10㎜内部はどれくらいの硬さが得られるのか。50㎜内部の硬さはどれくらいになるのか、といった事が保証されます。

構造用合金鋼のH鋼は種類が豊富なので、それぞれ内部1.5㎜~50㎜までの得られる硬さの上限、下限が定められています。通常、表面に近いほど硬度は高くなり、最大で63HRCの硬度を得られる構造用鋼も存在します。反対に、内部に行くほど硬度は低下します。

構造用鋼を選定する際において、焼入れを行う事でどの程度の硬さを、どれくらいの深さまで得ることができるのか、といった判断に役立てる事ができます。

構造用合金鋼のほぼすべてに、焼入性を保証したH鋼があるので、熱処理が必要な場合には一度検討してみるとよいでしょう。

冷間圧造用鋼

冷間圧造用鋼は、ボルト・ナットなど、様々な形状に加工されるコイル状に巻かれた線材の事です。

ボルト・ナットは冷間圧造によって製造されていますが、冷間圧造とは、常温の鋼を金型に押し込み、高圧力を加える事で必要な形状を作り出す方法です。

その為、冷間圧造用鋼には高精度な外形寸法、高い冷間加工性が求められます。もちろん、最終的な製品としての耐久性も確保しなければなりません。

加工性を低下させずに耐久性を確保する必要性があるという事で、高い品質が求められる鋼材です。

冷間圧造用鋼の特徴

冷間圧造用鋼にも、硬さや強さを強化した冷間圧造用炭素鋼線(SWCH)が存在します。

主にボルト・ナットを成型しているのがこの冷間圧造用炭素鋼線となります。

ボルトの頭に「8.8」と表記してありますよね?
これは強度区分を表しており、強度区分8.8までの製品にSWCHが使用されています。

補足として、SWCHの表記についてもう少し詳しく解説しておくと「SWCH10R」の「10」は、炭素含有量をあらわしています。JIS規格では0.08~0.13%と規定されている為、その中央値として「10」と表記されています。

語尾についている「R」は鋼の種類を表しています。Rはリムド鋼、Aはアルミキルド鋼、Kはキルド鋼と分類されています。
 

構造用鋼の加工や熱処理

構造用鋼の加工

構造用鋼は必要な形状に加工してから熱処理を施す事が一般的です。

なぜなら、熱処理を行う事で表面硬度が増し、切削加工が難しくなるからです。

例えば、構造用合金鋼の場合であれば熱処理後の加工は熱処理前に比べ格段に手間が掛かる事になるので注意が必要です。

通常のドリルでは全く加工できないくらいに構造用鋼の表面硬度は上昇します。切削加工に超硬工具を使用する必要性がでてくるのです。超硬工具を使用したとしても、切削加工に掛かる時間は長くなってしまうのが一般的です。

ボルトやシャフト、歯車などの構造用部品を加工する際は、「加工漏れが無いか」「加工寸法は問題ないか」しっかりと確認してから熱処理を施しましょう。
 

まとめ

構造用鋼まとめ

今回は構造用鋼について詳しく解説しました。
「構造用鋼ってなんだろう?」「どんな種類があるんだろう?」そんな疑問は解消したのではないでしょうか。

今回は機械や設備に使われるものに焦点を絞って解説したので、あなたが製造現場で働いているのであれば確実に役に立つ知識だと思います。

・構造用鋼は使用用途に合わせて強度や特性を変化させている為、様々な種類がある事。
・含有元素の種類と量によって鋼材の性質は大きく変化する事。
・熱処理が必要な場合は、熱処理特性が保証されている鋼材が存在する事。

この3つを覚えておくことで、普段のお仕事の中で「この改善にはこんな材質が必要だな。」「この設備に必要な強度を確保するにはどうしたらいいだろうか。」と思った際に、解決の糸口となるかもしれません。
使用用途に合わせて最適な鋼材を選んでください。
 

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