ネジはなぜゆるむ?トルクや軸力、ゆるみの原因について解説します

ネジのゆるみ対策についてお調べですね?この記事では、ネジに関する悩みをお持ちの方にネジがゆるむ原因とそのメカニズム、ゆるみを止める方法や製品について解説いたします。あらゆる機械設備や建築・構造物に使用されているネジやボルト。設計時の最適な商品選定、日常点検やメンテナンス業務効率化のヒントになればと思います。

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本記事は、創業1946年 ねじ締結部品・DIYの製造、販売を手掛ける 株式会社八幡ねじ による提供となっております。

一般規格品から、特注品まで。ネジやボルトなど締結部の課題をお持ちの方は、ぜひ 八幡ねじ までお問い合わせください。


クルマや鉄道、航空機はもちろん、ビルや橋などの建造物、あなたの手元にあるスマートフォンにまで、ネジはあらゆるものづくりの現場やその製品に使われている重要な部品です。

1本のネジやボルトのトラブルが重大事故を誘発することも。

ゆるみの原因について改めて理解することで、最適なネジ選びや点検整備の品質向上にお役立てください。

『ゆるみ』の定義

ねじのゆるみとは「締め付けた時よりも軸力が減少した状態」です。


それでは、軸力とはなんでしょうか?軸力は、物体に作用する軸方向の力のことを言います。一般的に物体が外部からの力によって軸方向に変形する場合には軸力が発生します。

おねじとめねじで説明すると、ねじを締めることによっておねじが伸びて、引っ張られることによって発生する軸方向の力が軸力となります。

ねじが安定して物を固定できるのはこの軸力のおかげであり、「ゆるみ」とはねじを締めつけた時よりも軸力が減少してしまった状態を言います。

トルクと軸力

トルクとは

トルクは物体に対して、軸を中心に回転させる力のことを言います。これをねじりモーメントと呼ぶこともあります。そして、ねじを締める時に加えるトルクは「締め付けトルク」と呼ばれます。


締め付けトルクは「力」に「回転軸から力をかける点の距離」をかけ算することで求められます。

てこの原理を思い出していただくとイメージしやすいのですが、同じ大きさの力を加える場合でも中心からの距離が大きくなればトルクも大きくなります。

よって、適正な力を加えてトルクを管理しなければ、ゆるみや破断といった事故のリスクが上がってしまいます。

軸力について

ねじを締め付けると 軸力 が発生します。その時に加えた締め付けトルクのうち軸力に変換されるのは10%程度で、残りの大部分はねじや座面の摩擦に奪われてしまいます。

また、同じ締め付けトルクで締め付けをしても、締め付け環境や締め付け条件の違いにより発生する軸力にバラツキが生じてしまいます。

実際の締付作業現場で締め付けトルク中の何%が軸力に変換されているのかを可視化することは非常に難しく、たとえトルク管理をしていたとしても軸力を完璧にはコントロールできていないということになります。

それでも製造現場では、加工の品質をできる限り一定にする目的で、定められた締め付けトルクにて管理することが一般的となっています。

ゆるみの種類

1.回転ゆるみ

衝撃や振動が加えられると、ねじが逆方向に回転してゆるんでしまいます。これは回転ゆるみといって、強い振動が加わる場所では注意が必要です。ねじが直接振動を受けない設計にするなどして対策する必要があります。

2.非回転ゆるみ

初期ゆるみ

締め付け時に接触面の凹凸がなじんでしまい隙間ができることがあります。これでは軸力が発生しないのでねじは緩んでしまいます。これを初期ゆるみといいます。自動車のタイヤを交換した際に、しばらく走るとボルトが緩んでしまうときなどは初期ゆるみの可能性があります。ボルトの増し締めをしたり、接触面の凹凸を無くして対策します。

陥没ゆるみ

締め付けた時に接触面がねじの力で変形してしまい、ねじの頭が陥没することで隙間ができることがあります。これを陥没ゆるみといいます。木材をボルトで固定するときなど、相手材と硬度に差がある場合はボルトが沈み込みやすく、陥没ゆるみにつながる場合が多いです。トルクの管理や材質の選定、ワッシャーの使用などで対策できます。

塑性変形ゆるみ

金属の変形には「弾性変形」と「塑性変形」があります。弾性変形は、例えばスプリングのように変形しても元の形に戻れる範囲内の変形です。

塑性変形は、元の形に戻れる範囲を超えてしまった変形で、例えばスプーン曲げのような変形です。塑性変形によるゆるみというのは、ねじを変形させてしまうほどの大きな力がかかることによって隙間ができてしまい、軸力が失われてしまうことです。設計を見直したり、高強度のボルトを使用することで対策できます。

温度によるゆるみ

金属は温度の変化に敏感で、温度が高いと膨張し低いと収縮します。橋や線路など、大きな構造物はこの影響を受けやすいため、わざと隙間を作って対策していますよね。

一方で、温度変化による体積の変化はねじという小さなパーツにも影響を及ぼします。

四季による気温の変化や、温度変化が激しい場所での使用などでねじの体積が変わってしまい、隙間ができることで発生するゆるみを温度変化によるゆるみといいます。膨張・収縮を加味した設計をしたり、適正な環境下で使用をすることで対策できます。

ゆるみ止め対策

前項でご説明した通り、ゆるみはいろいろな原因が複合して引き起こされるものであり、万全を期していても油断はできません。

ネジのゆるみを防ぐ方法や商品は、ゆるみの原因に応じて使い分ける必要があります。ゆるみ止め商品を利用する場合も、適切な評価試験を実施されているかも選定ポイントになります。

ゆるみ止め製品の評価試験

NAS3350振動試験

ボルトとナットを締め付け、上下方向に強い衝撃を加えます。約1760回/1分の振動を最長17分間(最大30,000回)与える試験です。評価の基準は以下になります。

・ナットが1回転以上戻り方向へ回転していない
・試料が破損していない

ユンカー式振動試験

軸直角方向へ微振動を加えます。750回/1分、最大2,000回の振動を与える試験です。
評価の基準は以下になります。

・試験後の軸力が80%以上残っている(締結時を100%とする)

ゆるみ止め商品のご紹介

ネジのゆるみは時として人の命にかかわる事故の原因になります。そのようなことにならないためにも、原因ごとに適した対策を実施しましょう。

ゆるみと一口に言っても様々な原因があるため、ゆるみ止め商品にも様々な種類があります。 ご紹介したような厳しい評価試験をクリアした商品を活用することで、一定のゆるみ止め性能が期待できます。

株式会社八幡ねじ “yht notes”

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