サンドブラスト加工は個人でできる?加工のやり方や研磨剤の選び方など

個人用のものでも、サンドブラスト加工用の機械はそれなりに大きく費用がかかります。個人の趣味としてガラスのコップなどにサンドブラスト加工を施したい場合、やり方はもちろん、機械と研磨剤の選び方も重要なポイントです。美しく仕上げるコツについて解説します。

サンドブラスト加工は個人でできる?加工のやり方や研磨剤の選び方などのイメージ

サンドブラスト加工とは?

ブラストとは表面処理の方法のひとつで、研磨剤(研磨材・研削材・投射材・噴射材・メディアともいう)を噴射することによって加工物(ワーク)の表面に凸凹をつくる加工方法のことです。ブラストは大まかに下記の2種類に分けられます。

  • ショットブラスト(遠心投射式ブラスト)
  • サンドブラスト(エアーブラスト)

そのうちショットブラスト加工ではインペラー(ローター)という機械の遠心力、サンドブラスト加工では基本的にコンプレッサーという機械による圧縮空気(圧縮エアー)で研磨剤を打ち付けるという違いがあります。

サンドブラストは、アメリカのティルマン(B.C.Tilghman)という技術者が1870年、船のサビを取るために金剛砂を噴射する機械を考案したことから始まりました。ただ、現代でよく使われている研磨剤は砂ではなくアルミナ(酸化アルミニウム)やガラスビーズです。

サビ取りなどのクリーニングのほか、塗装やメッキ加工などの下地処理、美装やすべり止めなどを目的とした梨地加工、ガラス工芸・木工芸・陶磁器・鋳物・石材彫刻といった用途でもブラスト加工が用いられています。高度な技術が必要なので美しく仕上げるためにはプロにお願いしたいところですが、個人のDIYとしてサンドブラスト加工に挑戦する方法をまとめました。

サンドブラスト加工のやり方

個人でサンドブラスト加工を行う場合、まずは作業する場所を確保し、機械と研磨剤をそろえます。機械は大まかにサンドブラスト装置(エアーブラスト装置)・ブラストガン・エアーコンプレッサーの3つがあり、コンプレッサーのみ別売りの場合が多いので注意が必要です。

コンプレッサーを使って研磨剤をガンから噴射しますが、その作業は通常キャビネットという箱の中で行います。このキャビネットは装置本体と一体型のものもありますが、別の場合もあり、機械全体の重量や大きさに合わせて作業場所を確保することが大切です。キャビネットがついていない装置でキャビネットを使わない場合、専用のブラスト室がない場合は屋外で作業します。

例えばガラスのコップに独自のイラストを添えてサンドブラスト加工をしたい場合は、マスキングシートにイラストを描いたり印刷したりしてガラスコップに貼り、キャビネットの中にガラスコップをセットして、ガンで研磨剤を打ち付けます。マスキングシートを取って水で洗うと、研磨剤が噴射されたところだけすりガラスのような仕上がりになっているというやり方です。
 

サンドブラスト加工のポイント

試しにサンドブラスト加工をしてみたいという感覚であれば、機械をそろえる前に環境が整ったサンドブラスト工房などで体験してみるのもひとつの方法です。個人で楽しむDIY用の機械でもそれなりに大きな買い物で、初期費用と作業スペースが必要になります。サンドブラストを施したい加工物の数が少ないときはプロに頼んだほうがお得で美しく仕上がるものです。

その点を踏まえたうえで挑戦する場合、最初はガラスのコップくらい適度に小さい加工物を選びましょう。デニムや革製品、金属、木材、石材、陶磁器とさまざまな素材のものを加工することができますが、例えばシルバーの指輪のように小さすぎるものだと作業が細かすぎて大変です。逆に木製のテーブルのように大きなものだとキャビネットに入りきらず、個人の場合は屋外で作業することになります。慣れるまではガラスのコップで何回か練習してみるのもおすすめです。

実際にイラストつきでガラスのコップにサンドブラストするときは、細かいデザインだと失敗する可能性が高まるので、最初は太めの線を意識してデザインすることがコツになります。マスキングシートを貼った部分は加工されないので、加工したい部分・加工したくない部分をしっかり見極めるようにしましょう。
 

サンドブラスト加工の機械

サンドブラスト加工の機械には大まかに「重力式・吸引式・直圧式・ブロワ式」の4種類があり、それぞれ研磨剤を打ち付ける仕組みが異なります。

  • 重力式(サクション式・サイフォン式・落下式)
  • 吸引式(吸上式・吸い上げ式・自吸式)
  • 直圧式(加圧式)
  • ブロワ式

一般的なのはサクション式・サイフォン式・落下式とも呼ばれる「重力式」です。

重力を利用して研磨剤を噴射します。ガンから打ち付けられた研磨剤は集じん機によって装置本体に戻されるので、連続して噴射することが可能です。

「吸引式」は吸上式・吸い上げ式・自吸式とも呼ばれます。ガンの吸引力によって研磨剤を打ち付ける仕組みです。

加圧式ともいう「直圧式」。装置本体の加圧タンクで圧力を加えることによって研磨剤を噴射します。噴射速度が速く、研掃(クリーニング)やピーニング(耐久性向上)の効果が高いところがメリットです。

「ブロワ式」はコンプレッサーによる圧縮エアーではなく、ブロワ(blower・送風機)のファン(fan・羽根車)による風を利用して研磨剤を打ち付けます。新しいサンドブラスト加工の方法で、コンプレッサーを使わない分、機械代と電気代を節約することが可能です。

サンドブラスト加工機械の選び方

サンドブラスト加工の一般的な機械は「重力式」、噴射速度などのパワーが重力式と同様で構造がコンパクトな機械は「吸引式」です。

ただ、「重力式」や「吸引式」では金属系の重い研磨剤は使えず、高速噴射もできません。「ブロワ式」は機械代や電気代といったコストパフォーマンスがいい点がメリットですが、噴射速度は「重力式」や「吸引式」よりも遅くなります。そのため加工のクオリティを追求したい場合はパワーの強い「直圧式」の機械がおすすめです。

  • 手軽さ重視→重力式、吸引式
  • クオリティ重視→直圧式
  • コスト重視→ブロワ式

上記のように、何を重視するかによって適した機械は変わってきます。また、どの方式の機械でも個人用の小型のものからプロ用の大型のものまであり、性能に応じて価格も異なるものです。

どのような加工物をどのような用途でどれほどのクオリティで仕上げたいのかによっても、使うべき研磨剤や適した機械が変わります。上記の重視したいポイントはあくまでも目安として、詳細まで検討したうえで購入することが大切です。

サンドブラスト装置本体にブラストガンが付属しているものもありますが、一体化していない場合は装置本体に適したガンを選びましょう。

エアーコンプレッサーはほとんど別売りです。装置本体ごとに適したタンク容量が決まっています。100Vの家庭用電源で使用できる小型のものもあり、騒音値が50~70dB程度などと表示されている静音タイプを選ぶと騒音はあまり気になりません。

サンドブラスト加工の研磨剤

サンドブラスト加工に使う研磨剤は、大まかに「セラミック(無機化合物)・樹脂・ガラス・金属・植物」という材質に分類できます。よく使われるのはセラミック系の「アルミナ」や炭化ケイ素「ガーボランダム」、ケイ酸塩鉱物「ジルコンビーズ」、ガラス系の「ガラスビーズ」です。

サンドブラスト加工研磨剤の選び方

最も一般的な「アルミナ」は白色より褐色のほうが用途は広く、研磨力や耐久性に優れています。繊細な梨地加工に適しているのは「ガラスビーズ」。「ガーボランダム」は研磨力が強いので、クリーニングやバリ(不要な出っ張り)取り、下地処理に向いています。「ジルコンビーズ」は梨地加工とクリーニング向き。ガラスビーズより耐久性が高い分、価格も比例して高いという特徴があります。用途・研磨力・耐久性・価格などを見極めて、適した研磨剤を選びましょう。

まとめ

個人でガラスのコップにイラスト入りのサンドブラスト加工を施す際、美しく仕上げたいならブラストガンやキャビネットが一体化した直圧式装置、装置に応じたタンク容量で静音タイプのエアーコンプレッサー、褐色アルミナなどの研磨剤をそろえるのがおすすめです。

ただ、始めるまでに手間や費用がかかり、実際に挑戦しても繊細なデザインは難しく、サンドブラスト加工が趣味として長続きしないケースもあります。満足のいくクオリティを求めるのであれば、サンドブラスト加工はやっぱりプロにお任せしたほうが安心です。