鋼と鉄の違いとは?特徴や種類など

あなたは鋼と鉄の違いは何なのかわかりますか?答えられる人は少ないのではないでしょうか。鋼とは鉄に炭素を加えた合金です。では、鉄とは何なのでしょうか。わたしたちは金属の総称として鉄と読んだりしていますが、何気なく鉄と呼んでいる金属、実は鋼であり合金なのです。

鋼と鉄の違いとは?特徴や種類などのイメージ

鋼と鉄の違い

あなたは鉄と鋼の違いを説明する事ができますか?明確に違いを答える事ができる人は意外と少ないのではないでしょうか。

私たちが普段目にする、一般的に鉄と呼ばれる金属は「鋼」です。鋼は鉄に炭素を加えた合金であり、通常0.02~2%程度添加されています。一方鉄ですが、鉄(Fe) 100%の純粋なものは一般的に目にすることはほとんどありません。純粋な鉄のみの場合、非常にもろく、酸化しやすい特徴があります。

しかし、鉄に炭素など微量成分が加わる事で、私たちが良く知る、強く硬い金属になります。なので、私たちが一般的に目にする金属は鉄ではなく、正確には「鋼」となるのです。

鉄と鋼の違いについて、簡単ですがわかって頂けたと思います。鉄や鋼についてもっと知りたい方は、引き続き、本記事を読むことでもっと詳しく知ることができます。 

鋼とは

まずは「鋼」から解説していきます。わたしたちが普段から目にしている金属は鉄ではなく「鋼」です。専門用語で言えば「炭素鋼(たんそこう)」と呼ばれます。鋼について知る事で、今までとは違った視点から金属を見る事ができるようになるかもしれません。

  • 鋼の特徴
  • 鋼の用途
  • 鋼が使われている製品
  • 鋼の種類

について解説していきます。

鋼の特徴

鋼の大きな特徴は、0.02~2%の炭素を含んだ合金である事です。といっても、鉄と炭素だけで構成されているわけではなく、P(リン)やS(硫黄)、Mn(マンガン)など、微量成分も含まれていますが、鋼の性質に大きな影響を与えるのは炭素の含有量となります。

一般的に炭素含有量が多くなるほど、鋼の性質は強く硬くなります。しかし、多ければ多いほど良い、というわけではありません。炭素含有量が増えすぎると、鋼の靭性(金属の粘り強さ)が失われていきます。

この靭性を確保する事はとても大切な事であり、靭性が低いとある一定の力を加えると簡単に折れてしまいます。わたしたちが良く知る鋼は曲げる事ができますよね?靭性の低い鋼は曲げ事ができずに折れてしまうのです。そのため、炭素含有量は2%以下で鋼は作られていることが多いです。

鋼の用途

鋼の用途は多岐にわたり、様々です。炭素含有量によって鋼の特性も変化するため、使用用途に応じて、鋼を使い分ける事になります。

一般的な使用用途としては「構造用」です。土木、建築、工場などで主に使用されます。みなさんが普段から利用している建築物や自動車にも鋼が使われています。鋼がむき出しの状態を目にすることは無かったとしても、普通に生活していれば鋼を目にし、何気なく鋼で作られた建物や移動手段を使って生活している事になります。

どんなところに「鋼」が使われているのか、子供と探しながらお散歩するのも楽しいかもしれませんね。

鋼が使われてる製品

鋼が使われている用途では、土木や建築、工場など広い分野で活躍していると解説しました。このような分野に普段から携わっている方であれば、どんなところに鋼が使われているか想像する事は容易いと思います。

しかし、まったく関りが無い方は想像する事が難しいと思うので、ご自宅に使われているであろう製品を紹介してみます。

丁番

丁番と言えば、ドアや窓を取り付け、開閉可能にする建具金物ですね。あなたのご自宅のドア、扉の片側に必ず取り付けられているはずです。

この丁番も材質は色々なものがあり、アルミやステンレス、鋼にメッキしたものなど様々です。ドアを開閉する事ができるこの金具も、よく見れば鋼板を曲げ、、穴をあけ、組み合わせて製品になっていますよね。このような加工は純粋な鉄ではできません。炭素を含んだ鋼だからできる事です。

ボルト・ナット及びねじ

ボルト・ナットやねじにも鋼が使われています。あなたの自宅が木造、軽量鉄骨、コンクリートどれであっても、建築の過程でボルトやねじは使われています。

しかし、家の中にも探せば見つかります。よく見ればエアコンのリモコンホルダーや各所手すり固定に使われているネジ。テレビやパソコンの後部配線部やおもちゃの電池カバー。爪切りなんかも鋼からつくられていますね。

あまり目立ちませんが、家の中にもボルトやネジというのは結構あるものです。しかし、一番重要な役割を果たしているのは、やはり建築時に使用される金物です。住宅の基礎をつくるときの鉄筋や各種アンカーボルトは強固な住宅を建てるために欠かせません。木造住宅でも、木材同士の接合部に、さらに金物をネジやボルトで取り付け、強度を向上させる事もあります。

あなたの家が、今もしっかりあなたと家族を守ってくれているのは、様々な形に加工された各種鋼があってこそだと言えるでしょう。

鋼の種類

代表的な鋼の種類にはどういったものがあるのか解説します。少し専門用語も出てきますが、鉄(鋼)は強度や特性から細かく細分化されているので、今から紹介する呼び名が明確な鋼の種類となります。(その種類の中でも引っ張り強さや炭素の含有量によっても呼び名が分かれますが、今回は割愛します。)

SS材

SS材は、一般構造用圧延鋼材(いっぱんこうぞうようあつえんこうざい)の略称です。SS材は鋼の中でも柔らかい材料(軟鋼)になります。炭素含有量によって鋼の硬さが変わると解説したと思いますが、SS材は0.15~0.2%程度の炭素が含まれている低炭素鋼となります。

SS材の中で最も広く使われているものはSS400という鋼材です。SS400は比較的安価であり、汎用性の高い材料なので、様々なところで使用されています。
加工性の良い鋼なのですが、溶接加工には向きません。溶接部材として使用する場合は、他の鋼を検討した方が良いと言えるでしょう。

SC材

SC材は、機械構造用炭素鋼鋼材(きかいこうぞうようたんそこうこうざい)の略称です。SC材は炭素含有量が各々設定されています。一般的によく使用されるSC材は、S45Cと呼ばれる鋼材です。S45Cの真ん中の数字である「45」は炭素含有量を示しており、0.45%前後の炭素を含む鋼材という意味になります。

先ほど紹介したSS400の倍以上に炭素が含まれている鋼材になりますね。そのため、硬度や強度が高く、品質の高い鋼になります。強度が必要な建設部材や工場で使われる機械などに使用されます。熱処理を施す事で、さらに硬度や強度を高める事が可能になります。

鉄とは

冒頭で、純粋な鉄(Fe) 100%のものを扱う事はほぼ無いと言いました。しかし、一般的に「鉄」という言葉はよく使われますよね。あなたも鉄という言葉を使う時は、金属を大きな括りで指すときに使っているのではないですか。実際、鉄は鋼をはじめ、各種特殊鋼のメインとなる素材です。

  • 鉄の鋼とは違う特徴
  • 鉄の用途
  • 鉄が使われている商品
  • 鉄の種類

このような内容で、視野を広くもって解説していきます。

鉄の鋼とは違う特徴

まずは、鋼とは違う鉄(Fe100%)の特徴を紹介します。純粋な鉄について、まずは知識を深めておきましょう。

純粋な鉄の見た目

皆さんが思う鉄というのは、重厚感のある灰色で、艶の無いものを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、それは鋼の方です。純粋な鉄は、どちらかと言えば白い光沢をもっています。ただし、その光沢をもった状態を維持する事が難しいです。次項で解説します。

純粋な鉄は酸化しやすい

純粋な鉄は、とても酸化しやすいです。そのため、脆くデリケートな一面があります。鉄の原料である鉄鉱石も同様で、赤さびのような色をしています。あなたが思っている鉄の匂いも、実は鉄が酸化した際に発生する匂いであり、鉄そのものに匂いはありません。

純粋な鉄の特徴

鉄は、酸化しやすく、脆くデリケートなため、単一(100%)で使用される事はほぼありません。しかし、純度が低下し、炭素など微量成分を添加する事で、あなたもよく知る、強い金属になる事ができます。

微量成分を添加された鉄は、硬度、強度、靭性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性など、様々な特性を持つことができます。鉄には、このように高い可能性があったため、世界中で使われるようになりました。

鉄単体では力不足な印象ですが、鉄は色んな元素とタッグを組むことができます。そうして発揮される特殊な耐性や基本能力の向上により、私たちの生活基盤を支えてくれていると言えるでしょう。

鉄の用途とは

「鋼とは」の項目では、私たちが普段から目にする鉄と呼ぶ金属は「鋼」だと解説しました。鉄は、様々な合金元素を加えられることで、多種、多様に姿を変えて私たちの身の回りに溢れています。言わば鉄とは、身の回りに溢れる金属の総称とも言えるでしょう。あなたも、そういった意味合いで鉄という言葉を使っていると思います。

では、身の回りにはどんな鉄があるでしょうか。台所のキッチン用品、テレビや洗濯機などの家電、デスクやキャビネットなどの事務用品などがありますよね。もっと広い視点から見れば、ビルやショッピングモールなどの建築物、自動車などもそうですよね。そして、普段何気なく使っている歯ブラシや衣服、漫画なども鉄で作られた機械によって作られています。

このように、身の回りのほとんどのモノは、元をたどればどこかで鉄と間接的な関係をもっています。こうして考えると鉄は凄いと思いませんか?鉄が無ければ、今の生活は無いのですから。

鉄が使われている製品

鉄の用途で、鉄が使われているものについてなんとなくわかって頂けたと思います。鉄の用途はとても幅広いのです。そこで、鉄の意外な使用用途として使い捨てカイロについて解説したいと思います。

使い捨てカイロに鉄が使われていることはご存じでしたか?鉄が使われていることは知っていても、どうして温かくなるのかについては意外と知らないのではないでしょうか。鉄が使われている製品である「カイロ」を例に、鉄の化学について少し学んでみましょう。

ごく一般的な事を言いますが、鉄は錆びます。鉄を濡れたまま放置したり、長年の長期使用により空気中の酸素と反応し、あなたも良く知る赤褐色の錆となります。正しくは酸化第二鉄とも言います。

この錆が発生する過程、つまり鉄と酸素が結びつく酸化反応の際に発熱が伴います。しかし、通常は酸化反応がゆっくりと進行するため、熱を感じる事はありません。使い捨てカイロは、この酸化反応を早めることで発熱量を大きくしたものになります。

カイロの中身は、鉄粉(表面性を大きくする)、水(酸化反応を促進する)、活性炭(酸素を取り込む)、食塩(酸化反応の促進)、高分子吸収剤(水分を含んだうえでサラサラにする)などが入っています。酸化反応のスピードを上手くコントロールし、心地よい暖かさとなるように作られています。使い捨てカイロは、鉄の酸化反応による発熱を上手く利用した製品だという事ですね。

鉄の種類

一般的に鉄と呼ばれる金属の種類は非常に幅が広いです。鋼の種類で紹介したSS材、SC材ももちろん含まれます。その他にも溶接構造用、耐候性、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐腐食性など様々な特性が付与された金属も一般的には鉄と呼ばれるでしょう。

ここでは紹介できないくらいに種類が多いです。鉄には非常に多くの種類があって、使用用途や環境に合わせて最適な特性を付与し、使い分けられています。それだけ多くの種類がある鉄に対し、もっと興味をもって頂けると嬉しく思います。

鋼と鉄の違いとは?

ここまで、広い視点から鉄と鋼の違いについて解説してきました。純粋な鉄と鋼の大きな違いについて、要点をもう一度まとめておきます。

鋼と鉄では炭素量が違う

鉄とは、一般的には広く鉄鋼製品のことを指しますが、本来はFeという純粋な元素のことを言います。純粋な鉄は私たちが知っている鉄よりも、早く酸化する上に脆く、加工して使用できるようなものではありません。

鉄と鋼の大きな違いは炭素が含まれているか否かであり、鋼は鉄に炭素を加えた合金の事を指します。
純粋な鉄を目にする機会は、ほとんどありません。わたしたちが普段、鉄と呼んでいるモノは正しくは「鋼」だという事を理解しておきましょう。

炭素量が違うことによる性質変化

鉄に炭素を加える事で、私たちがよく知る鉄になります。炭素を加える事で、鉄の硬度・強度の向上をはかる事ができます。純粋な鉄にわずか0.02~2%程度の炭素を加える事で、驚くほど鉄の特性は変化します。

炭素を加えた鉄は合金であり、鋼となります。鋼の炭素量を増やせば増やすほど、鋼の強度・硬度は向上します。しかし、増えすぎると靭性という金属の粘り強さが低下し、一定の力が加わると曲がるのではなく、折れてしまいます。プラスチックは多少のしなりがありますが、ガラスや陶器などは簡単に割れてしまいますよね。この場合、靭性が低いのはガラスや陶器の方になります。

鋼の硬度・強度と靭性は相反する性質のため、同時に両方の性質を高める事はできません。使用用途や環境に合わせて最適な鋼を使用する必要があります。そのため、鋼には炭素を含む量が定められたものもあります。目的に合わせて最適な鋼を選択し、使用する事が大切になります。

まとめ

今回は「鋼と鉄の違いとは?特徴や種類など」という内容で解説させて頂きました。「鋼や鉄の特徴や種類について知りたい。」「鋼と鉄の違いってなんだろう。」このような疑問が解消できたのであればうれしく思います。

この記事を読んで頂いたことで、私たちが普段目にする金属は、正確には「鋼」であり、合金である事がわかって頂けたと思います。鉄というのは一般的に、それら合金の事を指す相称のようなものです。普段から金属に携わる仕事をしている私でも、純粋な鉄100%は目にする機会がありません。しかし、鉄というのは本来そのことを指すのだと思います。

これまでは、「鉄」と一括りに読んでいたとしても、鉄には鋼を含む様々な合金が存在します。これら合金が目的に合わせて使用され、活躍している事で私たちの生活は成り立っています。

本文でも解説した内容になりますが、世の中のほとんどの製品が、間接的に鉄(合金)と関係を持っています。こういわれると「鉄ってすごいな。」と思いませんか?鉄に興味をもって生活すると、また違った目線から普段の生活を楽しむことができるかもしれません。観光地でみる建築物や梁橋などを見る目も変わってくるかもしれませんね。

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