プラズマ切断とは?原理/切断面/特徴/資格/ガス切断との違いを説明

プラズマ切断ってどんなものだろう?ガス切断はわかるけれど、プラズマ切断について実はよく知らない。そのような方の為の記事になっています。プラズマ切断の原理や特徴、加工後の切断面について解説します。プラズマ切断機を使用する際の資格についてなど徹底的に解説します。

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プラズマ切断とは

プラズマ切断とは、水素、酸素、または大気などをプラズマ化し、切断したい材料に照射する事で切断加工を行う切断機です。

難しく聞こえますが簡単に言えば、金属を高温で溶かし、吹き飛ばして切断している機械です。

金属を切断する方法は沢山ありますが、このプラズマ切断はガス切断などでは対応できない様々な材質、分厚い金属板などの加工に対応する事が出来ます。プラズマ切断機、及び使用するプラズマガスによって特性は異なりますが、その特性の違いを上手く使い分け、いろんな所で活躍しています。

プラズマ切断の原理・特徴・切断面

上記では、厚みのある金属材料、様々な材質、これらに幅広く対応する事ができるプラズマ切断であると解説を行いました。

ここからはプラズマ切断はどうしてそのような事が可能なのか、といった部分を掘り下げていこうと思います。

プラズマ切断の特徴(プラズマガスの種類)や原理、切断面について解説していきます。

プラズマ切断の特徴

プラズマ切断の大きな特徴は「電気を通す金属材料であればほとんど切断可能」だという点です。

なぜ?という原理の部分は事項で解説しますが、この特徴によりアルミ、真鍮、ステンレス(ステンレスは、ほぼ酸化しないのでガス切断は不可)など、様々な金属材料の切断を行う事ができるわけです。

しかし、冒頭でも少し触れましたがプラズマ切断機、及び使用するプラズマガスによってその特性や加工可能板厚も変化します。板厚に関しては、切断機の能力に依存するので解説しませんが、使用するプラズマガスによって特徴が変化するので、その点について解説していきます。

アルゴン、水素を使用するプラズマ切断機

アルゴンガス、水素ガス、必要に応じ窒素ガスを適切に混合し、プラズマガスとして使用されます。

ステンレス鋼など非鉄金属の切断時に、その効果を発揮します。水素ガスには還元効果がある為、切断加工時の熱で酸化する事を防ぎます。よって金属の切断面は光沢のある美しい状態となります。

酸素を使用するプラズマ切断機

酸素と金属の酸化反応により、燃焼エネルギーが増幅される為、スピーディーな切断加工が可能になります。

炭素鋼などであれば高速で切断可能となります。しかし、酸化反応が殆どしないステンレスには不向きであり、十分に機能を発揮する事ができません。

圧縮空気を使用する切断機

大気をコンプレッサーで圧縮した圧縮空気をプラズマガスとして使用します。

小型のプラズマ切断機では主流になりつつあります。ランニングコストが非常に安く、一般家庭のDIYにも使用できるタイプも存在します。

ただし、小型のものは切断可能な板厚は小さくなります。(極薄~12㎜程度のタイプなど)対応可能な板厚について明記されていると思うので確認が必要です。

プラズマ切断の原理

プラズマ切断は、母材と切断機の間に強力なアーク熱を発生させ、母材を溶融させることで切断します。その原理を簡単に解説しますね。

アーク熱を発生させる電極には、非消耗性であるタングステン等の電極を使用します。電流を流す事で母材と電極間にアークを発生させ、母材を溶融させることができる温度に達します。

そのプラズマアークの密度をさらに高めるために、アーク周囲を水冷ノズルなどで拘束し、冷却します。これにより、アークプラズマは緊縮し、エネルギーが周囲に広がることなく一点に集中させることができます。

この一点に集中したアークプラズマの高密度エネルギーにより、母材を一瞬で溶融させ、プラズマガスの高圧気流によって母材の溶融物を吹き飛ばし、切断加工を行っていきます。

プラズマ切断による切断面

プラズマ切断の仕上がりは、プラズマ切断機や使用するプラズマガス、機械を操作する技術者の熟練度によっても大きく左右されます。

比較的薄い金属板であれば、トーチの角度を一定に移動させることができれば、きれいな切断面になります。しかし、厚い金属板の場合は加工面裏側にドロス(ノロ)が付着する事が多いです。これはガス切断などでも同様ですね。

一般的に切断面を比較すると、ガス切断、プラズマ切断、レーザー加工機の順に切断面はきれいになっていきます。プラズマ切断の場合、熱で切断面が変色する場合もありますが、アルゴンガスに水素ガスを使用し、その還元効果を発揮させることできれいな切断面を確保する事も可能です。

プラズマ切断の資格

プラズマ切断機を使用するために特別な資格は必要ありません。

しかし、法律上「アーク溶接機を用いて行う金属の溶融・切断業務」に該当する為、労働安全衛生法が定める特別教育が必要になります。プラズマ切断作業に従事する方は特別教育の講習を受ける義務があり、使用者には受講させる義務があります。

座学で基礎知識や法令、安全について学び、実技で実際にアーク溶接機を使用し、安全な作業方法について学ぶことができるので、怪我や事故を防ぐためにも特別教育はしっかり受講しましょう。

プラズマ切断とガス切断の違い

プラズマ切断とガス切断の大きな違いは、持っているエネルギーの大きさです。

ガス切断の予熱炎のエネルギーは小さいです。しかし、ある程度熱した鉄に酸素ガスを吹き付ける事で酸化反応を促し、熱エネルギーを高めて溶解させます。

一方プラズマ切断では、プラズマアークそのものが大きな熱エネルギーを持っています。(摂氏約2万度)この高エネルギーを前に、あらゆる金属は一瞬で溶解します。

ガス切断は酸化反応熱により鉄を切断する為、ステンレスのように酸化しにくい素材の場合十分な溶解温度に達する事ができず、切断する事はできません。しかしプラズマ切断であれば反応熱ではなく、持っているエネルギーそのものでステンレスも溶解可能な為、切断可能となります。

まとめ

今回はプラズマ切断について詳しく解説させて頂きました。

プラズマ切断はプラズマアークという高エネルギーを用いて金属を溶解・切断する為、厚みのある金属板や殆どの金属材料の切断加工に使用する事が出来ます。

レーザー加工機と比べれば切断面や精度は劣りますが、あらゆる金属の切断加工が可能になる点ではガス切断よりも優れています。

プラズマ切断はご家庭でのDIYから金属の加工工場まで幅広く活躍しています。使用するプラズマガスの種類によって、切断面、切断後の溶接特性、効率、ランニングコストなどが変わってくるので、使用環境に合わせて最適なものを選ぶことが必要になってきます。

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