インコネルとは?耐熱温度や耐蝕性などの特性や溶接加工などの方法を解説

インコネルの耐熱温度や加工性、溶接性といった特徴を詳しく解説します。インコネルはレーシングカーのマフラーにも使用されています。あなたの車のエンジン内にも使用されているかもしれません。耐熱温度の高いインコネルは重要度の高いところで活躍する金属です。

インコネルとは?耐熱温度や耐蝕性などの特性や溶接加工などの方法を解説のイメージ

インコネルとは?

「インコネル」とは、耐熱性、耐蝕性、耐酸化性といった高温化での特性に優れている超耐熱合金のことです。優れた耐熱性能から、各種プラント設備、ごみ焼却炉、航空機のエンジンなどに使用されます。強度が高く、加工し難い金属を難削材と言いますが、このインコネルは難削材に分類され、最も切削加工が難しい合金の一つとなります。

難しいと聞くと、金属加工に携わった事がある方なら興味が出るのではないですか?加工は難しいけれど、超が付くほどの耐熱特性を持つインコネル、その魅力を知りたい方は引き続き本記事を読んでみてください。

インコネルの特性

ニッケルを主として、鉄やクロム、モリブデンなど様々な合金元素を添加したインコネルはどのような合金なのでしょうか。ここでは、インコネルの特性や、加工の難しさについて解説していきます。

インコネルは耐熱温度が高い

インコネルは過酷な高温下でも高い強度を維持する事ができます。一般的に、金属では耐熱温度といった表現はあまりしませんが、インコネルは約700℃の高温下で使用しても十分な強度を確保する事ができます。
エンジン部品、各種プラント設備など、高温下で使用される場合には、熱により強度が変化しないインコネルは非常に重宝される素材となります。

高温下でも十分に強度を確保できるインコネルですが、通常の鉄に比べ、融点が高いのかと言えばそういうわけではありません。鉄の融点は1538℃、インコネルの融点は約1400℃です。融点が高い金属の方が耐熱温度が高いと思ってしまいますが、必ずしもそうではないと言う事ができますね。

インコネルは耐蝕性がある

インコネルは約1000℃まで優れた耐蝕性を発揮します。通常の金属ならすぐに錆びてしまうような環境下であっても、インコネルは腐食しません。水や汚れが溜まっているところ、薬品を使用しているところ、繰り返し高温下に晒されるところであっても簡単に腐食する事はありません。

イメージ的にはステンレスに近いと思います。インコネルはステンレス同様、クロムやニッケルが含まれているので、不動態皮膜を形成する事ができます。この皮膜により、耐食性を高める事ができるのです。

この耐蝕性の高さと耐熱性の高さがインコネルの一番の特徴になります。ただし、耐食性が高いために薬品を使用した表面処理などは難しくなります。表面処理にお困りの方は専門の業者様に相談されると良いと思います。

インコネルは切削加工が困難

優れた耐熱特性を発揮するインコネルですが、加工性は悪いです。インコネルは難削材に分類され、加工の難易度も高く扱いずらい素材となります。インコネルの加工を検討中の方は、加工実績を積んだ加工会社に委託する方が良いかもしれません。

どういった理由で加工性が悪いのか、少し具体的に解説しておきます。

加工硬化

インコネルは加工硬化が生じやすい合金です。加工時に応力を加えるとインコネルの硬度がさらに増します。硬化する事で加工性が著しく低下します。工具の寿命を短くするとともに、加工方法によっては製品の仕上がりも粗悪なものになってしまうかもしれません。

工具寿命を低下させる

インコネルは耐熱性に優れる合金なので、切削抵抗が高いです。コーティング処理された特殊な刃物でも工具が折損してしまう事があります。この原因は、インコネルよりも工具の方が熱に弱く、熱伝導性が悪いために発生します。クーラント等で冷却しながら切削加工を行わなければなりません。

工具への溶着

インコネルはドリルなどの工具素材との親和性が高いです。そのため、加工中に発生した切粉が刃先に溶着する事があります。刃先に溶着が発生する事で刃物の切れ味が悪くなり、仕上がりが悪くなります。

工具の切れ味が悪くなることでさらに加工熱が発生しやすく、工具折損の原因にもなります。こちらも溶着しないよう、クーラントや切削液などを使用して、加工熱を抑える工夫をしなければなりません。

インコネルの用途

インコネルの強みは耐熱性と耐蝕性の高さです。その強みを活かして様々なところで活躍しています。各種プラント設備、水処理装置、航空機エンジン、原子炉部品などあげればキリがありません。しかし、これらで使用されていると言っても、小難しくてイメージし難いと思います。なので今回は自動車でインコネルの使用例を紹介しようと思います。

エンジン内部の部品

自動車のエンジン内は非常に高温になります。その高温下で繰り返し負荷が掛かり、強度が必要になる部品は沢山あります。一つ例をだすとエンジンバルブです。

エンジンバルブはエンジンが動力を生み出す為に必要な混合気をシリンダーに吸入するための弁とシリンダー内で発生した排気ガスを外に逃がすための排気弁があります。どちらの弁(バルブ)も高温下の中、繰り返し負荷が掛かる部品です。

自動車のエンジンを掛けると停車中でもエンジン回転数は約1000rpm程度を指していると思います。その際、一つのシリンダーについている各エンジンバルブは一分回に500回開け閉めを繰り返しています。一分間に500回と聞くとどれだけ過酷な環境で使用されているのかがわかると思います。

高温の中、高速で繰り返される負荷に耐える強度を確保しなければならない部品、という事でインコネルが使われています。このエンジンバルブが破損すれば、当然エンジンは動かなくなります。それだけ重要な部品にインコネルが使用されています。

レーシングカーのマフラーにも使われる

インコネルはエキマニやマフラーなどに使用される場合があります。といっても、購入した自動車に初めから付いている純正マフラーにインコネルが使われていることはほぼありません。純正でインコネルを使用しているのは一部の高級車やスポーツカーとなります。

インコネル製のマフラーやエキマニをよく使用するのはレーシングカーです。エンジンをブンブン回して他車と競い合うわけですから、発生する熱量も高く、一般車に比べマフラーにかなりの負荷が掛かります。インコネル製であれば耐熱性が高いため、チタンなどの材質の比較しても耐久性に優れています。

チタンほど軽量に仕上げる事は出来ませんが、インコネルも薄肉加工を施す事で軽量で良いサウンドを奏でるマフラーにする事も可能です。耐久性と軽量化、これらを求めるとインコネルは最適な素材だと思います。

このように、自動車に限定してもインコネルはその特性を活かした場所で活躍しています。主にエンジンですが、求められる性能によってはマフラーやエキマニなどにも使用されます。自動車以外の使用用途も同様で、使用される環境に合わせてインコネルは使用されています。インコネルの持つ特性上、要となる部品に使用されている場合が多いように感じます。

インコネルの溶接加工など方法

溶接方法の前に、インコネルの溶接性はインコネルの種類にもよります。インコネル600、インコネル625は比較的溶接性が良いです。しかし、チタンやモリブデンなどの合金元素を加え、機械特性を向上させたインコネル718の溶接性は悪いです。

溶接割れが発生しやすいため、溶接が必要な場合は方法を考える必要があります。一般的に抵抗溶接、電子ビーム溶接等が適用される場合が多いです。

それでは、インコネルの溶接方法を紹介します。

  • 抵抗溶接(スポット溶接、シーム溶接、プロジェクション溶接)
  • アーク溶接(ティグ溶接、プラズマ溶接)
  • レーザー溶接(ファイバーレーザー溶接、YAGレーザー溶接)
  • 熱圧着
  • 摩擦圧接

といった様々な方法があります。材料の厚みや加工内容によっても選択は変わってきますが、状況に応じて最適な手段を選んでください。インコネルの溶接加工は簡単ではないので専門の加工会社に依頼する方法もあります。インコネルの溶接実績が豊富な会社であれば安心して任せる事ができますね。

まとめ

今回は「インコネルとは?耐熱温度や耐蝕性などの特性や溶接加工などの方法を解説」といった内容で解説しました。

「インコネルってどんな金属だろう。」「インコネルはどんなところで活躍する金属なんだろう。」このような疑問は解決できたのではないでしょうか。

インコネルはニッケルを主とした合金であり、耐熱温度が高く高温下であっても強度を維持する事ができる合金です。さらに耐蝕性も高いため、純粋な耐久性の面でも優れています。これらを活かして様々なところで活躍しているわけですが、加工性は良くありません。

インコネルの加工において実績がないのであれば、加工実績のある会社に委託する方が良いと私は思います。ワーク温度の管理や工具の選定、切削送りの条件、加工機の剛性確認など沢山のデータ取りを行わなければ満足のいく加工は難しいでしょう。