アルミ合金/アルミニウム合金の種類/特徴/強度/比重を解説

アルミニウム合金は沢山の種類がある事をご存じですか?アルミ合金は比重が軽く、やわらかいイメージがありますよね。しかし種類によってはとても硬いアルミニウム合金も存在します。本記事では、アルミ合金の種類やメリット、ヤング率など幅広く解説していきます。

アルミ合金/アルミニウム合金の種類/特徴/強度/比重を解説のイメージ

アルミニウム合金(アルミ合金)とは?

アルミ二ウム合金とは、アルミ二ウムを含む2種類以上の金属元素・少量の非鉄金属を加えられた合金の事を指します。通常柔らかく、比重の軽い純粋なアルミ二ウムも、他の元素を加えた合金となる事で軽量、且つ大幅に強度を向上させる事も可能になります。

アルミ二ウムに添加される代表的な素材をいくつか挙げると、銅、マグネシウム、亜鉛などがあります。これらが添加される事でアルミニウムはどのような変化を遂げるのでしょうか。興味があれば最後まで読んでみてください。

アルミニウム合金(アルミ合金)の特徴

アルミニウム合金には沢山の種類があります。なのでアルミニウム合金の特徴はその種類によって異なります。アルミ二ウム合金はアルミニウムに何を添加したのか、によってNo.1000~8000番まで区別されます。

例えば、1000番台は純アルミ二ウムであり、加工性や耐食性、電気伝導性に優れますが、構造材として使用するには強度が不足しています。NO.7000番台であれば、一般的にジュラルミンと呼ばれるアルミ合金が存在し、アルミ合金の中で最も強度の高い金属となります。

このように同じアルミ合金であっても番手によって全く性質は異なります。記事後半で各種アルミニウム合金について解説しているので、詳しく知りたい方は後ほど解説させて頂きます。

アルミニウム合金(アルミ合金)の用途

アルミ二ウム合金の使用用途はアルミ合金の種類によって分けられています。上記で解説したように、アルミニウム合金は番手によって大きく特性が異なるため、その特性を活かせる分野で各種アルミ合金が活躍しています。

1000番台のアルミ二ウム合金であれば純粋なアルミ二ウムのため、導電部品であるブスバーや電線に使用される事もあります。7000番台であれば強度が高いので航空機の本体部品やバットなどのスポーツ用品として使用されているものもあります。

その他の番手では、自動車のアルミホイール、建築部品、圧力容器、船舶、ピストン・シリンダーなど活躍の場は多くあります。アルミ二ウム合金は比重の軽さを活かし様々な分野で使われている金属です。私たちの生活を支えるために必要不可欠だと言えますね。

アルミニウム合金(アルミ合金)の比重

純粋なアルミ二ウムの比重は2.7となります。いろいろな元素が加えられた各種アルミ合金の比重は約2.6~2.8程度におさまります。なのでアルミニウム合金全般に対し、非常に軽量な金属であり、比強度に優れた金属だと言えるでしょう。

アルミ合金の中で最も強度が高いと言われているジュラルミンの場合、比重は2.8です。ジュラルミンはSS400(比重:7.85)よりも圧倒的に軽量です。しかし、SS400よりも強度に優れている部分があります。アルミ二ウム合金の強度については次項で解説しますが、「比重に対し強度が高い」という比強度に優れているのがアルミニウム合金の一番の特徴とも言えますね。

アルミニウム合金(アルミ合金)のヤング率

アルミニウム合金はヤング率が70E/GPa前後の低い素材です。純アルミ二ウムで69E/GPa、超々ジュラルミンでは72E/GPaとなります。ちなみに一般構造用圧延鋼材のヤング率は206E/GPaなので、比較するとアルミニウム合金よりも優れていることがわかります。

「ヤング率ってなんだろう?」という方もいると思いますので、ヤング率についても解説しておきます。ヤング率は別名「縦弾性係数」と呼ばれる事もあります。ヤング率が高いほど、剛性(変形にしにくい、または変化量が小さい)の高い材料だという事ができます。

このヤング率の低いアルミニウム合金は、比較的小さな力で変形させる事が可能です。このように解説すると「ヤング率が低い素材は強度が小さいという事かな?」といった疑問が生まれる方もいるかもしれませんが、ヤング率と金属の強度は別の問題だと思っておいてください。

金属の強度とは耐える事のできる力の強さ(引張強さなど)のことを言います。一方、ヤング率は剛性を表しています。剛性は変形のしやすさと変形量を見るための数字です。アルミニウム合金の中でも強度の違いが大きい純アルミ二ウムと超々ジュラルミンを比較した場合、強度の違いは140HBもあるのにヤング率の数値の違いは小さいです。

純アルミ二ウムが69E/GPa、超々ジュラルミンは72E/GPaであり、わずか3ポイントしか違いがありません。アルミ二ウム合金全般に対してヤング率が低く剛性に欠ける金属である、という事ができるでしょう。

アルミニウム合金(アルミ合金)の融点

アルミニウム合金の融点について語る前に、融点について簡単に解説しておきます。融点とは個体が液体になる温度の事を指します。通常とても硬い金属も、高温に熱する事で液体にすることができます。

アルミ二ウム合金の融点は約650℃程度ですが、アルミニウム合金の種類によって融点は多少異なります。アルミニウム合金1000番台~7000番台までざっくりと7つに分けた融点は以下の通りです。

  • 1000番台:純アルミ二ウム、融点は660.4℃となります。
  • 2000番台:AlーCu系の合金、融点は約500~640℃程度です。
  • 3000番台:Al-Mn系の合金、融点は640℃前後です。
  • 4000番台:Al-Si系の合金、融点は約530~570℃程度です。
  • 5000番台:Al-Mg系の合金、融点は約570~650℃程度です。
  • 6000番台:Al-Mg-Si系の合金、融点は約580~650℃程度です。
  • 7000番台:AlーZnーMg系の合金、融点は約480~640℃程度です。

このように、大きな違いはないものの、アルミ合金の種類によって融点に違いがある事はわかって頂けたと思います。

アルミ二ウム合金加工時の注意点

アルミニウム合金は基本的に柔らかい素材なので、被削性に優れています。しかし、融点が約650℃と低く、さらに延性も良いので工具の切刃に溶着し、加工性が著しく悪化する事があります。切粉の排出が上手くいかなくなることで、製品に傷が付く事もあるので注意が必要です。また、加工箇所にバリが発生しやすい欠点もあります。

このような注意点に対し、取るべき対策は以下の通りです。

  • 切削温度を抑えて加工を行う。
  • すくい角がポジティブな刃先工具を使用する。

切削温度を抑えるにはクーラント液を吹きかけながら切削加工を行う方法があります。常時冷却しながらの加工であれば、加工熱が溜まる事も無いのでスムーズな加工が可能になります。

すくい角がポジティブな工具を使用する事で、切粉に排出がスムーズ、且つ切削抵抗が少なくなります。低速加工を行う場合でも良好な加工面を得る事ができます。結果的に加工熱が発生し難い状況を作る事ができます。

アルミニウム合金(アルミ合金)のメリット

アルミニウム合金のメリットには「比重が軽く、比強度に優れる」「軽量」など特徴の解説で挙げたポイントもありますが、もう少し広い目線で見たアルミニウムのメリットを紹介します。

  • 加工性が良く、仕上がりが美しい。
  • 耐食性が高く錆びにくい。
  • 無害、無臭。
  • リサイクル性が良い。
  • 低温への耐性が高い。

上記5つについて簡潔に解説していきます。

加工性が良く、仕上がりが美しい

アルミニウム合金は加工性に優れています。切削加工などはもちろん、アルミを薄く伸ばしたりする加工も可能なので、プレス加工の材料としても使用される事は多いです。アルミ合金は丁寧に仕事をすれば仕上がりはとても美しいものになります。しかし、加工中に傷が付きやすいのもアルミニウム合金の特徴の一つです。加工前後の取り扱い時は注意が必要です。

耐食性が高く錆びにくい

アルミニウムと言えば、錆びないイメージをお持ちの方は多いと思います。実際、アルミニウムは自ら酸化被膜を生成する事で錆を抑制しているため、鉄などに比べると非常に錆びにくいです。

しかし、この酸化被膜はとても薄いため使用環境によっては錆びてしまう場合もあります。アルミ二ウムをさらに錆びにくくするためにアルマイト処理を行う方法もあります。

無害、無臭

アルミは人にも自然にもやさしい金属です。無害無臭、且つ衛星的なのでお菓子の包装や缶ジュース、医療機器などにも安心して使用できる素材です。

リサイクル性が良い

アルミニウムの融点が低い事や酸化しにくい性質を持つことからリサイクルに掛かるコストも抑えられるため再利用しやすいです。アルミ二ウムはリサイクル時に掛かるエネルギーは新たにアルミを製造する場合のわずか3%です。非常に小さなエネルギーでリサイクルできるので、省エネルギーにも貢献する事ができます。リサイクルの技術力は高く、リサイクル品であっても新品同様の品質にすることが可能です。

低温への耐性が高い

アルミニウムは-160℃を超えるような液化天然ガス、液体窒素などの貯蔵タンクに使用する事ができる金属です。低温下でも優れた性能を発揮する事ができるため、バイオテクノロジーなど様々な分野で活躍する事ができる金属です。

アルミニウム合金(アルミ合金)のデメリット

次はアルミニウム合金のデメリットについて解説していきます。アルミ二ウム合金は鉄などに比べ、優れた点が多くある金属ですが、それでもデメリットは存在します。メリット・デメリットを知ったうえでアルミニウム合金を使用しましょう。デメリットについては以下の内容で解説していきます。

  • 強度が十分とは言えない
  • 溶接性に劣る
  • 材料費が高い

強度が十分とは言えない

純アルミ二ウムの強度は低いです。鉄などに比べ、アルミニウムの方が柔らかい金属であることはみなさんも肌感覚でご存じだと思います。アルミ二ウムは柔らかく扱いやすい金属である一方、強度や硬さ、耐久性の面では劣ってしまいます。

アルミ二ウム合金の中にはジュラルミンと呼ばれる強度を高めたものも存在し、航空機の機体に使われるようなアルミ合金もあります。ですが、全体としてやはり強度が不足している印象は残ります。アルミは軽量なので比強度には優れる素材である事は忘れないでください。

溶接性に劣る

アルミの融点が低い事は解説したと思いますが、その点が溶接性の悪化を招いています。溶接で熱を掛けると、融点の低いアルミはあっと言う間に溶け落ちてしまいます。それでは溶接はできません。
アルミの溶接で大切なのは母材への入熱管理であり、それができなければ美しい仕上がりの溶接は出来ません。

材料費が高い

一般的に良く使用される軟鋼と比較すると、材料費用が高く付きます。しかし、あくまで比較対象は軟鋼です。(軟鋼は価格が安いため。)アルミ合金を使用すると高く付く場合もありますが、アルミ合金を使用する事によるメリットも多く得られるはずです。

アルミ合金を含め様々な金属を使用する際は、金属に求める性能と使用環境、コストをトータルで考え、最適なものを選ぶことが大切です。アルミ二ウム合金が最適だと判断した使用環境の場合、決して高すぎるコストとはならないと思います。

アルミニウム合金(アルミ合金)の種類

ここからはアルミニウム合金の種類ごとに、特徴を解説していきます。アルミ二ウムに何を加えるかで大きく特性が変わる事がわかって頂けると思います。

純アルミニウム

純アルミ二ウムは1000番系となり、アルミ純度が99%以上のものを指します。アルミの純度が高い事で、導電性、熱伝導、耐食性に優れています。デメリットは強度が不足している事と、それに伴い加工時には注意が必要になる点です。

柔らかく粘り気がある素材なので、切削加工時の切粉の排出がうまくいかない場合があり、製品に傷や凹みができる原因となってしまいます。この素材は構造材としては不向きな素材なので、ブスバーや電線などに使用される事が多いです。

Al-Cu系

アルミに銅を加えたアルミニウム合金で、2000番台に分類されます。ジュラルミンと呼ばれるA2017、超ジュラルミンと呼ばれるA2024もここに分類されます。

アルミニウムの強度を向上するために銅が加えられているのですが、銅を加えているためアルミ二ウムの持つ耐食性は劣ります。溶接割れが発生しやすく、溶接には不向きな側面も持っています。単純な強度の面ではとても優れた素材となります。航空機の機体や宇宙航空産業などにも使用される事があります。各種構造材としても良く使用されているのであなたの身近でも使用されていると思います。

Al-Mn系

アルミニウムにマンガンを加えた合金です。これは3000番台のアルミ二ウム合金であり非熱処理型です。アルミニウムのもつ耐食性を損なわずに強度を向上させた純アルミ二ウムの強化版となります。代表的な番手としてはA3003があげられます。

一般的に切削材料として用いられることはほとんどありません。使用用途のわかりやすい例としてはアルミ缶、屋根材などの建築材料、カラーアルミなどに使用されています。

Al-Si系

アルミ二ウムにシリコンを加えた4000番台の合金です。シリコンを加える事で耐摩耗性を向上させることができます。シリコンに加え、さらに銅やマンガン、ニッケルなどを添加した耐熱特性を向上させたものもあります。

熱膨張率も少ない(線形膨張率が他アルミ合金の80%程度となります。)ので、鍛造ピストンの材料として使用されます。代表的なのはA4032です。こちらも切削加工に用いる事はあまりありません。

Al-Mg系

マグネシウムが添加された5000番台に分類されます。マグネシウムを添加する事で強度や耐食性を向上させています。アルミ合金の中では加工性の良い素材なので、切削加工材として最も良く使用される素材です。

マグネシウム含有率を高め、強度をさらに向上させているものもあります。A5052と呼ばれる板材やA5056である丸材も良く使用されています。他にも溶接性に優れた番手もあるので、船舶や車両、建築関連に使用される事もあります。

Al-Mg-Si系

シリコンが加えられたアルミ二ウム合金です。6000番台に分類され、上記の5000番台のアルミ二ウム合金よりも耐食性、強度、ともに優れている素材です。このアルミ二ウム合金は押出成型性にも優れており、L型アングルやC形チャンネルなどの型材の材料として使用される事もあります。

また、銅を加えたA6061は、ジュラルミン同様熱処理を行う事で強度が向上し、軟鋼であるSS400程度の強度を確保する事もできます。番手にもよりますが、加工性、耐食性、強度に優れた合金です。ボルトやリベットで接合する構造材料として使用されているものもあります。

Al-Zn-Mg系

アルミニウムに亜鉛とマグネシウムが加えられた合金が7000番台のアルミ二ウム合金となります。7000番台の中には、さらに銅を加えた熱処理系の合金もあり、アルミ二ウム合金の中でも最も強度が高いとされる超々ジュラルミン(A7075)もここに分類されます。A7075はその強度から航空機の部品などにも使用されています。

その他

ここまで紹介してきたアルミ合金のうち、2000系、5000系、7000系など、高強度な合金に対してさらにリチウムを加えたものはAl-Li系合金として8000番台のアルミ合金になります。リチウムを添加する事でヤング率の向上や低密度の高剛性材として活躍できるようになります。

まとめ

今回は「アルミ合金/アルミニウム合金の種類/特徴/強度/比重を解説」といった内容で解説させて頂きました。
「アルミ合金にはどんな種類があるのかな。」「アルミ合金の特徴やメリット・デメリットが知りたい。」このような疑問は解決できたのではないでしょうか。

アルミニウム合金とはアルミに2種類以上の金属元素を加え、様々な特性を付与・強化させたものであると解説しました。その加える金属元素によって、1000系~8000系までアルミニウム合金は分類されます。

アルミ二ウム合金の特徴や用途、強度などはアルミニウム合金の種類によって大きく異なります。アルミ二ウム合金の選定時には、それぞれのアルミ合金の特性を押さえ、メリット・デメリットを理解している必要があります。

本記事では、アルミニウム合金の一般的なメリット・デメリットについて解説しました。細かな内容については記事を読み直して頂きたいのですが、最大の特徴はやはり「比強度に優れる」ことです。軽量な素材にもかかわらず、SS400と同程度の強度をほこるものもあり、軽量且つ高剛性という大きなメリットがあります。

反対にデメリットでは、強度が不足している素材も存在していること、溶接性が悪い事などをあげました。アルミ二ウム合金は溶接割れに十分注意する必要があります。一部、比較的溶接性に優れたアルミ合金も存在するので、溶接が必要な場合には検討が必要になるかもしれません。