重力鋳造についてわかりやすく解説!他の鋳造方法との違いも紹介
本記事では重力鋳造について解説しています。重力鋳造では直接圧力をかけないため、空気の巻き込みの少ない鋳造が可能です。とはいえ欠点もあります。そこでこの記事では、他の鋳造方法についても重力鋳造との比較で紹介しました。この記事を参考に最適な鋳造方法を選びましょう。
目次
重力鋳造についてお調べですね?
重力鋳造とは重力を利用した金型鋳造方法で、コストを抑えて複雑な形状の鋳物を製造することができます。
しかしデメリットもあり、製造するものや経済的条件によっては適さない場合もあるのです。
そこで本記事では、重力鋳造の特徴やメリット・デメリット、他の鋳造方法との違いをまとめました。
本記事を読むことで、適した鋳造方法が選べるようになり、コストカットも実現できるようになります。
わかりやすく解説していくので、ぜひ参考にしてください。
重力鋳造とは【自由度が高く低コストの鋳造方法】
「重力鋳造」は金型を使った鋳造方法のひとつで、自由度が高く低コストな鋳造方法です。
以下で詳しく見ていきましょう。
1ー1.圧力をかけずに溶融金属を流し込む鋳造方法
重力鋳造は圧力をかけずに重力のみを利用して、溶解金属を金型に流し込む鋳造方法です。
重力を利用するため「グラヴィティ鋳造」とも呼ばれています。
溶融金属の重力で流し込むことで、空気の巻き込みが少ない高気密な鋳物の製造が可能です。
圧力をかけないため、中子を使用して複雑な形状の製品も造ることができます。
一方で、ゆっくりと溶融金属を流し込むため、圧力をかける鋳造方法に比べて生産性は高くありません。
重力鋳造に使われる鋳造機は、金型を手動で開閉する簡単なものから、油圧シリンダで金型を開閉するものまで幅広くあります。
1ー2.ダイカストとの違い
同じように金型を使用する「ダイカスト」と重力鋳造の違いを紹介します。
「ダイカスト」は圧力をかけて溶融金属を金型に注入する金型鋳造方法です。
ダイカストと重力鋳造の大きな違いは、溶融金属を流し込む際に圧力をかけるか否かとなります。
溶融金属の重力でゆっくりと流し込む重力鋳造は、圧力はかけません。
そのため、製品の強度や生産スピードに違いがあるのです。
鋳造装置の構造も異なるため、設備コストや汎用性に違いが出ます。
重力鋳造のメリット・デメリット
重力鋳造の特徴や、ダイカストとの違いについて解説しました。
次に、重力鋳造のメリット・デメリットを紹介します。
鋳造方法を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも把握しておきましょう。
メリット
重力鋳造の主なメリットは、以下の4つです。
- 複雑な形状も実現可能
- 気密性の高い鋳造が可能
- ダイカストに比べて設備コストが低い
- 同じ金型を繰り返して使える
1つずつ見ていきましょう。
2ー1ー1.複雑な形状も実現可能
重力鋳造は、複雑な形状の鋳物も実現可能です。
重力鋳造は溶融金属の注入時に圧力をかけないため、砂中子が使用できます。
砂中子を使用することで、中空がある形状や複雑な形状の鋳造が可能です。
複雑な形状の鋳物には、圧力をかけない重力鋳造が適しています。
2ー1ー2.気密性の高い鋳造が可能
重力鋳造は、気密性の高い鋳造が可能です。
重力鋳造は重力を利用して静かに溶融金属を金型に流し入れるため、空気の巻き込みが少なくなります。
金型内のガスもゆっくりと抜けて、金属が自然に充填されるため、鋳巣ができにくいのです。
そのため、重力鋳造で作った鋳物は気密性と耐圧性が高くなります。
自動車用の厚肉な部品など、気密性と強度が求められる製品の製造では重力鋳造を採用しましょう。
2ー1ー3.ダイカストに比べて設備コストが低い
重力鋳造は、ダイカストに比べて設備コストが低いメリットがあります。
圧力を使用しない重力鋳造の設備は、ダイカストに比べ構造が単純で、価格が安く汎用性も高いです。
設備コストが高く小ロットに向かないダイカストに比べて、重力鋳造は鋳造機の規模も幅広く、小ロットにも向いています。
なので、重力鋳造はダイカストに比べて設備コストが低く済むのです。
2ー1ー4.同じ金型を繰り返して使える
重力鋳造は、同じ金型を繰り返して使えるメリットがあります。
同じように重力を利用した「砂型鋳造法」は1製品につき型が1つ必要になりますが、重力鋳造は同じ金型で、数千~数万回の製造が可能です。
2ー2.デメリット
重力鋳造のデメリットは、主に以下の4つです。
- 湯流れの問題がある
- 冷却時間が長い
- 金型への充填速度や溶湯供給時の流速調整が困難
- 歩留まりが低い
1つずつ見ていきましょう。
2ー2ー1.湯流れの問題がある
鋳造加工では、溶融金属を「湯」と呼び、重力鋳造は溶湯を保持炉から金型へ供給します。
その際、溶湯の流れによって鋳造欠陥が起こる可能性があるのです。
鋳造欠陥は酸化物の巻き込みや、異なる経路で流れ込んだ溶湯が合流することで起こる「湯境」があります。
重力鋳造は湯流れの問題で、薄肉の製品には向きません。
2ー2ー2.冷却時間が長い
重力鋳造は、冷却時間が長いデメリットがあります。
金型にゆっくり注入されるため、金型の温度が高くなり冷却に時間がかかるのです。
冷却に時間がかかると、熱で金型と溶融金属が反応しやすく、型を保護する塗型材が必要になります。
2ー2ー3.金型への充填速度や溶湯供給時の流速調整が困難
重力鋳造は、充填速度や溶湯供給時の流速調整が困難です。
溶融金属の重力のみで自然に金型へ注入するため、圧力を利用する鋳造方法に比べて流速調整が難しくなります。
2ー2ー4.歩留まりが低い
重力鋳造は、重力で流し入れるため湯口・湯道・押湯のすべてに溶湯を充填させなくてはなりません。
10kgの製品を作るために20kgの溶湯が必要になるなど、歩留まりが低いというデメリットがあります。
重力鋳造以外の鋳造方法【重力鋳造にない特徴を解説】
ここまで重力鋳造の特徴や、メリット・デメリットを見てきました。
重力鋳造は気密性やコストが低いメリットがありますが、歩留まりの低さや薄肉の鋳物に向かない面もあります。
製品によっては、他の鋳造方法が適している場合もあるため、重力鋳造以外の鋳造方法も見ていきましょう。
3ー1.低圧鋳造
「低圧鋳造」は、溶融金属を空気圧や不活性ガス圧で金型へ注入する鋳造方法です。
中空がある形状や複雑な形状の製品を短時間で大量に生産したい場合には、重力鋳造ではなく低圧鋳造を選びましょう。
以下で、特徴やメリット・デメリットを紹介します。
特徴 | ・重力を利用する重力鋳造に対して、低圧鋳造は空気圧や不活性ガス圧を利用して溶融金属を金型へ注入 |
メリット | ・圧力をかけるため、重力鋳造に比べると押湯がいらず、流速調整が可能 ・重力鋳造と同じように砂中子が使用できるため形状の自由度が高い ・圧力をかけるため歩留まりが高くなる |
デメリット | ・重力鋳造と同様に冷却時間が長く、型を保護する塗型が必要になる ・圧力をかけるため重力鋳造にくらべて設備コストがかかる |
中空を有する構造で、歩留まりを重視する場合は低圧鋳造を選択しましょう。
3ー2.ダイカスト
「ダイカスト」とは、圧力をかけて溶融金属を金型に注入する鋳造方法です。
短時間で大量に製造したい場合や、寸法精度が重要になる鋳物は重力鋳造ではなくダイカストを選択しましょう。
以下で、特徴やメリット・デメリットを紹介します。
特徴 | ・重力を利用する重力鋳造に対して、ダイカストは圧力をかけて溶融金属を金型へ注入する |
メリット | ・圧力をかけるため重力鋳造に比べて短時間で溶融金属を金型へ注入できる ・重力鋳造よりも寸法精度が高く、製品の表面が滑らか ・圧力で流速調整が可能で、重力鋳造よりも生産性が高い |
デメリット | ・圧力をかけるため重力鋳造よりも設備コストがかかる ・短時間で注入するため鋳巣ができやすく、製品の強度は重力鋳造に劣る ・砂中子が使えないため、形状に制限がある |
流速調整をして生産性をあげる必要がある場合は、ダイカストを選択しましょう。
3ー3.ロストワックス
ロストワックスは、ロウで作った原型を鋳砂などで固めて型を造り、ロウを溶かしてできた空洞に金属を流し込む鋳造方法です。
以下で、特徴やメリット・デメリットを紹介します。
特徴 | ・金型ではなく、ロウで作った原型を鋳砂などでかため型をつくる鋳造方法 |
メリット | ・様々な金属を使うことができる。 ・重力鋳造より精密に造ることができる ・重力鋳造のように高額な金型が必要ないため、生産コストがかからない |
デメリット | ・1製品につき1つの型が必要で、大量生産に向かない |
精密さが求められる場合や、小ロットで何種類か製品を製造したい場合は、重力鋳造ではなくロストワックスを選択しましょう。
重力鍛造に困っているならプロに相談
重力鍛造における作業技術のレベルは、製品のクオリティやコストに大きく影響します。
不安な人はプロに相談しましょう。
4ー1.クマガイ特殊鋼株式会社【図面があればどんな加工にも対応】
クマガイ特殊鋼株式会社は、豊富な加工技術でニーズに合った鋳造方法と鋼材の提案をしてくれます。
図面があれば素材の仕入れから設計・加工・検査まで行ってくれるため、重力鋳造に関する疑問があれば、クマガイ特殊鋼株式会社へ相談しましょう。
まとめ
本記事では、重力鋳造について解説しました。
重力鋳造とは、重力を利用して金型の空洞部に溶融金属を流し込んで鋳物を作る方法のことです。
溶融金属を流し込む際に圧力をかけるどうかがダイカストとの違いになります。
重力鋳造は圧力をかけないため、機密性の高い製造が可能である点や、砂中子が使えるため、中空や複雑な形状も実現可能です。
一方で時間をかけて溶融金属を流し込む為、湯流れの問題があり、薄い製品の製造には向きません。
重力鋳造以外の鋳造方法についても紹介しましたので、この記事を参考に適切な鋳造方法を選択しましょう。