旋盤加工とは?旋盤とは個人加工できるか/手順の種類や加工機を解説
旋盤とは円柱状の素材加工に用いる機械です。本記事では「旋盤とはどんな機械?旋盤加工とはどういった加工なの?」といった疑問に答えます。加工手順についても簡潔に紹介します。個人で旋盤加工を行う事は出来るのか、という事についても触れますので参考にしてみてください。
目次
旋盤加工とは?
回転させた工作物に切削工具を当てる事で任意の加工形状を作り出す加工方法が旋盤加工です。工作物を回転させるため丸棒を材料として使用します。工作物を回転させて切削加工を行う事で真円度の高い加工が可能になります。
工作物の外周の加工はもちろん、ドリルで中心に穴をあける事も可能です。基本的に工業部品を製作するために使用されるので、旋盤加工で仕上げられた製品を日常で目にする機会は少ないでしょう。しかし、工業部品であるシャフトやボルト、ピンなどは旋盤加工を用います。
このような部品は製造現場では欠かせません。旋盤加工を行う機械にはたくさんの種類がありますが、工作物を回転させて切削加工を行うこの方法は、これからも日本のモノづくりの現場を支えてくれることでしょう。
本記事では、旋盤加工について詳しく解説し「個人で旋盤加工が行えるのか。」についても掘り下げてみます。興味があれば引き続き読んでみてくださいね。
旋盤とは
旋盤とは、旋盤加工を行うための機械の事です。旋盤は加工したい工作物を回転させ、そこに刃物を当てる事で加工を行います。加工物を回転させる主軸(チャック)と刃物(バイト)を固定し、加工物に接触させるための刃物台があります。
実際の加工を見た事が無ければイメージし難いと思うのですが、簡単にイメージをお伝えすると、りんごの皮むきが良い例だと思います。りんごの皮をむく際にはリンゴを回転させますよね。そのリンゴに包丁を軽く当てる事でりんごの皮むきを行います。旋盤も同じです。リンゴが主軸に取り付けられた加工物となり、刃物台は手に持つ包丁をイメージするとわかりやすいと思います。
旋盤の主要部品
旋盤は以下の主要部品から構成されています。
- 主軸(チャック):工作物を固定し、回転させる部品。
- 往復台(刃物台含む):工具を水平に移動させる役割や工具の固定、工具の切削角度の変更を行う部品。
- 心押し台:工作物を主軸の反対側から支える役割を果たす。ドリルを取り付ける事で穴あけ加工を行う事もできる。
- ベッド:往復台を左右にスライドさせる役割を果たす旋盤本体を構成する部品。
旋盤加工の特徴
旋盤加工は、加工物を回転させて加工を行うため、円柱状の加工を施す場合は高い寸法精度を出しやすいです。旋盤加工を施す前の材料は、黒皮のついた円柱状の素材を使う事が多いです。その状態の真円度は悪く、ダイヤルゲージを当てると大きく針が触れるのですが、旋盤加工を行った後では0.01㎜以下の寸法精度となり、真円度の高い加工を施す事が可能になります。
また、加工方法や素材に合わせて主軸の回転方向、回転スピードなども任意で変更できるため、切削加工後だとは思えないほど、美しく仕上げることも可能です。
旋盤加工が使われている物
旋盤加工が使われているのは、私たちの身の回りにあるもの、と言うよりは工業部品が多くなります。工業部品では円柱状の精密部品は至る所で使用されています。工場で使用する機械のシャフトやピン、ノズルなどが良い加工例となります。
これらの部品は、単に精度の高い丸棒を製作しているわけではなく、テーパー加工、内径加工、ねじ切り加工、穴あけ加工、突切り加工など、旋盤加工における様々な加工方法を使い分けて複雑な形状を加工しています。(これらの加工については後ほど詳しく解説します。)
旋盤加工は私たちが普段使用している製品を作るための機械を構成する部品に使われています。金属部品を製作するうえで欠かせない加工方法だと言えるでしょう。
旋盤加工のメリット
個人加工を行う場合、基本的には汎用旋盤を用いる事になると思います。なので、今回は汎用旋盤を使用するにあたってのメリットを解説します。
試作品の製作にピッタリ
汎用旋盤は試作品の製作を行う用途で使用される場合が多いです。試作品の製作時には変更や修正など追加工が必要になる事が多々あります。その際、汎用旋盤であれば面倒なプログラムを組むことなく、すぐに加工を行う事ができます。
また、手作業で加工を進める事で図面の不備や製品の改良点に気付く機会を得る事ができます。NC旋盤などの自動制御も悪くはないのですが、量産向けです。より良い製品を世に送り出すためには、汎用旋盤による試作品の製作を通し、気付きを得る事も大切だと私は思います。
単品の製品制作向け
汎用旋盤は単品の製作に向いている加工方法です。例えば、シャフトが一本破損したため、それに代わるシャフトを旋盤で製作したい場合を想定しましょう。
破損したシャフトを測定し、必要な寸法を把握してしまえば、すぐに加工を開始することができます。加工が最小限ですむ材料を探して使用したり、必要最低限の加工で代用したりと、色々と応用が利かせやすいのも汎用旋盤ならではです。このようなメリットがある事から、個人で旋盤加工を行う場合は汎用旋盤や卓上旋盤を用いた方がメリットが大きいように感じます。
切削工具(バイト)交換時の補正が不要
NC旋盤の場合、工具の摩耗に合わせて切り込み量、送り量を調整する必要があります。しかし、汎用旋盤ではそういった手間が必要ありません。汎用旋盤ではすべての加工を目視確認しながら行います。工具の摩耗が確認できれば、技術者の裁量で切り込み量の調整を行います。工具交換時も、必要に応じて寸法の測定と各ハンドルのメモリを再調整することで問題なく加工を進める事ができます。
旋盤加工のデメリット
次は汎用旋盤を用いるにあたってのデメリットを解説していきます。
技術者のレベルに品質が左右される
汎用旋盤加工は個人の技術レベルによって、製品の品質にバラツキが生じます。熟練した技術者であれば、自動制御以上の加工を行うことも容易です。熟練した技術者は指先で0.01mmの誤差も確認することができ、寸法精度、外観の仕上がり、ともに高レベルで仕上げる事が可能です。
しかし、技術者のレベルが下がればガクッと品質は下がります。製品に螺旋状の模様が付いていたり、寸法が公差内に収まっていなかったりなど様々です。汎用旋盤は誰でも扱える一方で、使用する技術者によって大きく品質が左右されるデメリットがあります。
コスパが悪く、大量生産に向かない
汎用旋盤は大量生産には不向きです。加工中は技術者一名がその場から離れる事無く加工を行わなければ仕事が進みません。NC旋盤であれば加工物をセットすれば、ボタン一つで自動加工を行ってくれます。その間、別の仕事を行うこともできるわけです。
一つ一つの製品を丁寧に、応用を効かせて加工を行える汎用旋盤ですが、大量生産の現場で使用されることはほぼ無いと思っておいて良いでしょう。
安全に十分な配慮が必要
汎用旋盤は回転物や刃物工具がむき出しの状態で加工を行います。そのため、回転物への巻き込まれや、切粉の飛散による被災に十分注意する必要があります。加工物を固定する主軸の回転数は80~1800rpm程度使い分ける事ができるため、回転数が高い状態で加工を行う場合は特に注意が必要ですね。
刃物工具の固定やチャックの固定なども徹底的に確認してから作業を行ってください。加工中に工具が弾かれてあなたに向かって飛んでくる可能性も十分考えられます。汎用旋盤では十分に安全に配慮して作業を行う必要があります。個人で旋盤加工を行う場合は、必ず教育を受け、最低限必要な知識を学んでから旋盤を使用してください。
旋盤加工手順の種類
旋盤を使用するにあたって、加工方法や手順を知っておくことは大切です。詳しく解説すると非常に長文になりますが、今回は簡潔に基本的な作業手順について解説しておきます。切削工具取り付けや主軸の回転数など、細かい部分の解説は割愛します。
外径加工の旋盤とは
旋盤における外形加工は、テーパー加工、端面加工、面取りなども含まれ、多くの加工があります。その中でも一番基本的な、円柱状の素材の黒皮切削の手順について解説します。
黒皮(黒錆)の切削手順は以下の通りです。
- チャックに加工素材を取り付ける。
- ダイヤルゲージを使用し、取り付けた加工素材を回しながら振れを確認する。(ダイヤルゲージの針が均等に触れるように調整を行います。)
- 主軸を回転させ、バイトが加工物の外周に軽く接触するまで近づけます。接触したら、刃物台の送りハンドルを動かし、外周全体の接触具合を確認します。
- 問題なければ、バイトを一旦端面より外側まで逃がし、バイトを切り込む。
- 送りハンドルをゆっくり回し、外周を切削する。バイトとチャックが接触しないように注意してください。
- 黒皮が取り切れなければ、再度端面までバイトを逃がし、切り込み量を増やして加工を行う。
内径加工の旋盤とは
旋盤で内径加工を行う手順を解説します。内径加工はバイトによる切削加工が可能な開口部がある事を前提とします。
- 刃物台に内径加工用のバイトを取り付ける。
- バイトを加工物に接触しないように加工物内に挿入します。
- 各ハンドルを操作し、加工物に軽く接触させます。
- 一旦、端面までバイトを逃がし、バイトを切り込みます。
- 送りハンドルを操作し、内径加工を行います。内径加工の深さに指示がある場合は、端面に接触した際に、送りハンドルのメモリのゼロ点調整を行う。
あとは外形加工の手順と同じ要領で加工を行っていきます。
穴あけ加工の旋盤とは
旋盤による穴あけ加工の手順について解説します。
- 旋盤の心押し台に取り付けられているセンタドリルを取り外します。
- 専用のアタッチメントにドリルを取り付け、心押し台に取り付けます。
- 心押し台を工作物に近づけた状態でレバーを引いて固定する。
- 主軸を回転させ、ハンドルを回してドリルを切り込んでいく。
という手順になります。
ねじ切り加工の旋盤とは
ねじ切り加工は少し難易度の高い加工になります。初心者の方はしっかりと知識のある方に教わる必要があると思います。手順は以下です。
- ねじ切り加工を施したい箇所の外形を仕上げる。同時に、ねじ切りバイトの逃がし加工を行っておく。
- ねじ切りの送りピッチを設定する。旋盤により調整方法は異なるので確認が必要です。
- 主軸を回転させます。回転数は遅い方が送り速度も遅くなるので、逃がし範囲で加工を停止しやすいです。
- 送り装置を使用し、複数回に分けてねじ切り加工を行います。
仕上がりはピッチゲージなどを使用して確認するとよいでしょう。
突切り加工の旋盤とは
突っ切り加工は比較的簡単です。突っ切りバイトと言われる、先端部が平たい形状をしているバイトを使用します。手順は以下です。
- あらかじめ、突っ切りバイトの切刃の幅をノギスで測定しておきます。
- 突っ切りバイトを加工物端面に接触させ、ゼロ点とします。
- 突っ切りバイトの幅分を送りハンドルで主軸側に動かします。この位置をゼロ点に合わせる事で、加工が行いやすくなります。
- 切り落とし、溝加工、どちらにせよ必要寸位置まで切刃を動かし、ゆっくりと加工物の中心に向かって切り込みます。
旋盤加工の手順は個人でできる?
サイズの小さな旋盤は比較的安価なので、個人で購入する事も可能です。しかし、旋盤加工は工業系の学校や職場で使い方を学んだ方向けだと私は思います。機械の扱いに慣れている方であればそれほど心配はありませんが、慣れていない方にとっては非常に危険です。少し間違えば大けがをする可能性もあります。
それから、十分な品質のものを製作できるようになるまでかなりの練習が必要になるでしょう。なにより、あなたの安全のために専門業者に依頼することをおすすめします。個人向けにワンオフパーツを製作してくれるところもあるので検討してみても良いかもしれませんね。
旋盤加工機の種類
今回は汎用旋盤について解説してきましたが、旋盤にはいくつかの種類があります。NC旋盤と呼ばれる数値制御装置を取り付けた旋盤や、卓上旋盤と呼ばれる小型のものも存在します。他にも、大きな部品を加工する際に用いられる縦旋盤といったものがあります。金属加工の現場では、いろんな旋盤を必要な数量や用途、加工物の大きさなどにより、適切に使い分けて加工を行っています。
まとめ
今回は「旋盤加工とは?旋盤とは個人加工できるか/手順の種類や加工機を解説」といった内容で解説させて頂きました。
「旋盤加工ってどんな加工なの?」「自分で旋盤加工はできるのかな。」といった疑問は解決したのではないでしょうか。
旋盤加工は金属加工において必要不可欠な加工の一つです。工業部品に多く使用されているので、私たちが一般的に目にする製品の中には、旋盤加工で仕上げられた製品というのはあまり無いかもしれません。しかし、旋盤加工を施した部品を使ってあらゆる製品を製作していることから、陰ながら私たちの生活を支えてくれている加工方法の一つだと言えますよね。
それから、旋盤の個人加工ですが、個人的には難しいと思います。必要な機材を揃えるだけでも大変ですし、なにより危険です。本文でも言いましたが、普段から機械を扱っている方が卓上旋盤を購入しDIYするのは良いと思います。しかし、知識と経験が不足していると少しでも感じるなら、旋盤加工は専門業者に依頼した方があなたのためになると思います。