低圧鋳造法とは?メリット・デメリットや他の鋳造方法との違いを解説

低圧鋳造とは、金型に溶融金属を低圧・低速で注入することで鋳物を成形する加工方法です。低圧・低速で注入するため、気密性の高い高強度な製品を作れる一方で、時間効率の悪さという弱点もあります。この記事は、低圧鋳造の特徴と、他鋳造方法との比較を紹介します。

低圧鋳造法とは?メリット・デメリットや他の鋳造方法との違いを解説のイメージ

低圧鋳造についてお調べでしょうか。

低圧鋳造とは、金型に溶融金属を低圧・低速で注入することで鋳物を成形する加工です。

低圧・低速で溶融金属を注入するため、気密性の高い高強度な製品を作れるのが利点になります。

一方で、低速で注入するため時間効率の悪さという弱点もあるので注意が必要です。

この記事を読めば、低圧鋳造の特徴と、メリット・デメリットに加えて他の鋳造法との違いが理解できます。

この記事を通して、低圧鋳造法の特徴を把握して高品質な製品を鋳造しましょう。

低圧鋳造とは?特徴をわかりやすく解説!

低圧鋳造の特徴をわかりやすく解説します。

低圧鋳造とは金型に溶融金属を低圧で注入する方法で、気密性の高さから機械部品の製造に用いられてる鋳造方法です。

低圧鋳造の工法を把握して、特徴を把握する土台としましょう。

金型に溶融金属を低圧・低速で注入する鋳造方法

低圧鋳造法は、金型に溶融金属を低圧・低速で注入する鋳造方法です。

1Pa程度の低い圧力で、溶融金属を下から上へ比較的低速で注入します。

気圧が低く緩やかに充填されるので、ピンホールや巣穴の欠陥を少なく抑えることができるのです。

低圧鋳造は、低気圧のガスでゆるやかに金属を注入する鋳造方法になります。

低圧鋳造の製品例

つづいて、低圧鋳造の用いられる製品例の紹介です。

低圧鋳造は、自動車の部品の製造に用いられます。

軽量でコストの低いアルミを気密性の高い品質で作れるため、機械部品の製造に適している鋳造方法なのです。

例えば車の部品では、シリンダーヘッドやアルミホイールなどの製作に用いられます。

低圧鋳造は、気密性が求められる機械部品の製造に用いられる鋳造法なのです。

これだけは抑えよう!低圧鋳造のメリット・デメリット

低圧鋳造にも、メリット・デメリットがあります。

高気密な製品が作れる一方で、圧力が低圧なので注入が遅く時間効率が悪い側面もあるのです。

ここからは、低圧鋳造のメリットとデメリットを紹介します。

メリットとデメリット両方の特性を把握して、目的に合う鋳造かどうか見定めましょう。

メリット

低圧鋳造のメリットは下記の3つです。

  • 高気密な鋳造ができる
  • 歩留まりが高い
  • 複雑な形状の鋳造ができる

以下で詳細を解説します。

高気密な鋳造ができる

高気密なアルミ鋳物ができるのは、低圧鋳造の最大のメリットです。

静かに溶湯したアルミを型内に流すので、ガスの巻き込みが少なく高気密な製品が製作できます。

湯口より遠い所から順次凝固し、湯口が凝固するまで加圧を保持する特性も高気密を保持する要因です。

低圧鋳造では、ガスによる低圧のコントロールで高気密な製造ができます。

歩留まりが高い

低圧鋳造は歩留まりが高いです。

歩留まりとは、実際に投入した素材と成果物の量の比率になります。

圧をかけない鋳造方法だと、溶湯内部に溶けた金属がいくらか留まるのです。
低圧鋳造では、ガス圧で溶融金属をゆるやかに押し出すことにより、加圧が維持されたまま押し出されるため、歩留まりが高い鋳造方法になります。

低圧鋳造は、歩留まりが高いというメリットがあります。

複雑な形状の鋳造ができる

低圧鋳造は複雑な形状の鋳造ができます。

砂中子が使用できるため、中空部品や複雑な鋳物の鋳造が可能なのです。

中子を用いた鋳造による複雑な中空構造を実現できるのが、低圧鋳造の利点になります。

デメリット

高気密で複雑な形状に対応できる、低圧鋳造にもデメリットが2つあります。
 

  • 時間効率が悪い
  • アルミ鋳造の際には塗型が必要

それでは、低圧鋳造のデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

時間効率が悪い

時間効率が悪いのは、低圧鋳造のデメリットと言えます。

低圧でゆっくりと溶融金属を流すので、サイクルタイムが長いのです。

溶湯したアルミがゆっくり金型内に充填する構造上、金型温度が高くなり冷却速度も遅くなります。

気密性が高く品質は高いが時間はかかるのが、低圧鋳造のデメリットなのです。

アルミ鋳造の際には塗型が必要

アルミ鋳造の際には塗型が必要なのも、低圧鋳造のデメリットになります。

溶融したアルミが型内でゆっくり冷やされるので、型とアルミが反応しやすく境界となる型表面に塗型が必要なのです。

塗型のクオリティが製品のクオリティに直結するので、製作には塗型技術が求められます。

また塗型は作業者の手仕事なので、製品に多少のバラつきが出る可能性もあるのです。

低圧鋳造でアルミ製品を鋳造する際は、塗型が必要な弱点があります。

低圧鋳造の工程を4つのSTEPで解説!

ここまで、低圧鋳造の概要とメリット・デメリットについて述べてきました。

低圧鋳造で製作する際は、以下の4つのSTEPで製作します。

STEP1:低圧鋳造機に金型を設置する
STEP2:注入口から空気圧をかけて溶融金属を金型まで上昇させる
STEP3:凝固するまで冷却する
STEP4:専用工具で金型から製品を取り外す

それぞれの工程を見ていきましょう。

STEP1:低圧鋳造機に金型を設置する

最初の工程は、低圧鋳造機への金型設置です。

溶融金属を溜めて密閉した溶湯炉の上に下型をセットし、上部の可動プレートに上型をセットします。

プレートを設置後、上部の金型をシリンダー圧で下降させて下部の金型と密着させるのです。

低圧鋳造では、設置した上下の金型を密着させて金型の準備工程が完了します。

STEP2:注入口から空気圧をかけて溶融金属を金型まで上昇させる

次は、注入口からガス圧をかけて溶融金属を金型まで上昇させる工程です。

下部金具の下に接続された溶湯炉に対して、ガスで注入口より圧縮した空気を送り込みます。

空気圧によってストークから溶融金属が上へ押し上げられて、金型に注入されるのです。

STEP3:凝固するまで冷却する

注入が終わると、凝固するまで冷却する工程になります。

凝固時間が経過後、スライドシリンダーが縮んで可動プレートが上昇すれば凝固完了です。

製品が凝固したら、シリンダーで上部金型と共に持ち上げて、下部金型から剥離して冷却工程は終了です。

STEP4:専用工具で金型から製品を取り外す。

最後は、専用工具で金型から製品を取り外す工程です。

上部金型と密着している製品を、専用工具で取り外します。

金型から剥離した塗型を研磨し、製品の完成です。

他の鋳造方法と何が違うの?低圧鋳造とその他鋳造方法の比較

鋳造には低圧鋳造の他にも、ダイカスト鋳造・重力鋳造・ロストワックスなどの種類があります。

ここからは、低圧鋳造と他の鋳造について比較を紹介です。

鋳造の特徴を比較して、最適な鋳造法を検討しましょう。

低圧鋳造とダイカスト鋳造

低圧鋳造とダイカスト鋳造の比較を紹介します。

鋳造方法特徴こんな場合に最適
ハンマーやプレス機などで高い圧をかけて湯入して鋳造する。圧入と冷却の時間が短く大量生産に向きだが、気密性は低圧鋳造と比べて低い。生産性が求められる、大量生産に最適。

ダイカスト鋳造は、ハンマーやプレス機などで高い圧をかけて湯入する鋳造方法です。

低圧鋳造に比べて圧入と冷却の時間が短く、大量生産に向いています。

一方で、ガスの巻きこみによって気密性は低圧鋳造と比べて低いのが特徴です。

また、金型に強度が求められるので設備コストは低圧鋳造よりも高くなります。

高気密性なら低圧鋳造、生産性ならダイカスト鋳造が有利です。

低圧鋳造と重力鋳造

つづいて、低圧鋳造と重力鋳造の比較を紹介します。

鋳造方法特徴こんな場合に最適
金型に溶融金属を重力で流し込んで鋳造する。設備構造が簡単で製造コストが易い、しかし湯金属が湯漏れしやすく肉厚なものには適さない。簡単な構造かつ肉厚な製造に最適。

重力鋳造は、金型に溶融金属を重力で流し込む製造法になります。

低圧鋳造と異なり、圧力をかけないのが特徴です。

一方で、重力鋳造では重力に依存して流入を行うため溶融金属が湯漏れしやすく、肉厚なものには適していません。

また、設備構造が簡単で製造コストが安いというのも利点です。

肉厚で気密性が求められる複雑な構造ならば低圧鋳造、簡単な構造で肉薄なものならば重力鋳造が適しています。

低圧鋳造とロストワックス

さいごに、低圧鋳造とロストワックスの比較を紹介します。

鋳造方法特徴こんな場合に最適
ワックスの原型にセラミックの型を固着して鋳造する。特殊鋼、ステンレス、銅合金、アルミ合金など高融点な金属を使えるが、ランニングコストが高い。高融点の金属を使用する製造に最適。

ロストワックス鋳造は、ワックスで作った原型の周りにセラミックの型を固着して型を作る鋳造方法です。

特殊鋼・ステンレス・銅合金・アルミ合金など、高融点の金属を使えるのが最大の利点になります。

一方で、型を毎回破壊して製作を行うのでランニングコストが高いというのが弱点です。

低圧鋳造と比較する際は、製品の素材が高融点の金属である場合にはロストワックス鋳造が適しています。

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まとめ

低圧鋳造は、金型に溶融金属を低圧・低速で注入することで鋳物を成形する加工です。

気密性の高さと、中空のある複雑な構造へ対応できことが利点になります。

また、歩留まりが高く金属のロスが少ないので経済面にも優れているのです。

一方で冷却に時間がかかるので、時間効率は悪く生産性は他の鋳造に劣るという弱点もあります。

それぞれの鋳造方法に利点と弱点がありますので、用途に合わせた選択が必要です。

もし、鋳造を用いた加工にお困りの場合は、実績多数の専門商社クマガイ特殊鋼株式会社までお問い合わせください。

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