マグネシウム合金の特徴/強度/用途/加工などを解説

本記事ではマグネシウム合金の特徴について詳しく解説しています。マグネシウム合金の強度や用途、腐食への耐性、加工時の注意点など広く解説します。近年注目されている合金ですが、取扱いを誤ると危険です。加工時の注意するべきポイントについては是非知っておくべきです。

マグネシウム合金の特徴/強度/用途/加工などを解説のイメージ

マグネシウム合金とは

マグネシウム合金とは

実用金属の中でも、最も軽量で比強度の高い金属がマグネシウム合金です。似ている特徴を持つアルミ合金も軽量で比強度の高さがメリットの合金なのですが、マグネシウム合金はアルミ合金よりも軽量な金属となります。

普段、金属に携わる事の無い方は「マグネシウム合金」という言葉もほとんど聞いたことが無いのではないでしょうか。本記事では、マグネシウム合金の強度や腐食、加工などについて詳しく解説していきます。

アルミよりも軽量な金属、というだけで興味を惹かれませんか?深くマグネシウム合金について知りたい方は是非読んでみてください。

マグネシウム合金の特徴/強度/用途

マグネシウム合金の特徴、強度、用途

マグネシウム合金の特徴・強度・用途についてそれぞれ解説していきます。

マグネシウム合金の特徴

マグネシウム合金には沢山の特徴があります。内容は以下の通りです。

 

  • 最も軽量で比強度が最大の合金
  • 耐くぼみ性が高い
  • 振動吸収性に優れた合金
  • 電磁波シールド性が良い
  • 加工性が良い
  • リサイクル可能


となっています。それぞれの内容について簡潔に解説していきます。

最も軽量で比強度が最大の合金

冒頭で「マグネシウム合金は実用金属の中で最も軽い金属」だと解説しました。マグネシウムの比重はなんと、アルミニウムの2/3程度の軽さです。具体的な数字(純金属としての数字)では、アルミニウムの比重は2.70、マグネシウムの比重は1.74となります。マグネシウム合金AZ31と比較した場合、比強度はチタンと同程度で、鉄鋼の約2倍となります。

耐くぼみ性が高い

加工硬化率が高い特性をもつマグネシウム合金は、耐くぼみ性が高くなります。なにか物体がマグネシウム合金に衝突した際、凹みが小さくなるという意味です。これはアルミ合金などと比較しても、マグネシウム合金の方が優れています。

一方で、加工硬化を起こす、と聞くと「加工性が悪い。」というイメージになりますが、マグネシウム合金は切削加工性が良い合金です。

振動吸収性に優れた合金

実用金属の中でマグネシウムは振動吸収性が最大の金属です。振動吸収性とはそのままの意味で、外部から受けた振動を吸収、または外部に逃がす特性の事を言います。この特性はマグネシウム合金の中でも、マグネシウムの割合が高い(純度の高いマグネシウム)ほど高くなります。

電磁波シールド性が良い

マグネシウム合金の電磁シールド性は安定しており、30~200MHzの域で90~110dBのシールド効果が見込めます。電磁シールドとは身の回りに沢山潜んでいる電磁波から体や機械の不調などを防ぐ役割を果たします。

加工性が良い

マグネシウム合金は加工硬化が高い一方で加工性の高い金属です。マグネシウムの切削抵抗は比較的小さくなります。他の金属に同じ加工を施す場合であっても、マグネシウム合金の場合は短時間、且つ機械や工具を傷める事はほとんどありません。

リサイクル可能

マグネシウムはリサイクルにかかるエネルギーが小さく、リサイクル性に優れた金属です。マグネシウムを製造時に掛かるエネルギーの4%程度でリサイクルを行う事ができるのです。ただし、アルミ二ウムなどと比較し、マグネシウムのリサイクル技術は硬度な技術を要します。

マグネシウム合金の強度

代表的なマグネシウム合金である「AZ31」の強度について解説していきます。AZ31はアルミニウム(Al)を3%、亜鉛(Zn)を1%含むマグネシウム合金です。この合金が実用金属の中で比強度が最大の金属となります。

具体的な数字として、引張強さは220~260Mpaを誇ります。硬度はブリネル硬さ(HB)でいうと49HBとなります。数字で見るとその程度かと思われるでしょうが、比重が1.74という事を考えると素晴らしい数字だという事ができます。

マグネシウム合金の用途

マグネシウム合金の用途は年々広がってきています。使用用途が広がるのは、優れた特性を沢山もっており軽量化の観点からも優れた金属だからです。自動車のホイールやエンジン、航空機、パソコン・カメラなどの電子機器などが使用用途として良い例となります。

マグネシウム合金を使用する事で軽量且つ高強度とすることができるため、年々需要は高まる傾向にあります。みなさんが知らないだけで、マグネシウム合金はあなたの身近なところで活躍しているかもしれませんね。

マグネシウム合金の加工や腐食

マグネシウム合金の加工や腐食

マグネシウム合金はどんな金属なのか、ここまでの解説でわかって頂けたのではないでしょうか。ここからはマグネシウム合金の加工方法や腐食について解説していきます。

特に加工については火災や爆発事故につながる可能性があります。加工の項目では安全上理解して頂きたい点がありますので、しっかり読んで頂きたいと思います。

マグネシウム合金の加工方法

マグネシウム合金は切削抵抗が少なく、加工性の良い素材です。しかし、加工の際はリスクもあります。マグネシウムの特性を理解し、安全を確保しつつ作業を行う事が大切です。まず、マグネシウムの持つ特性(燃焼性)以下3つを覚えておいてください。

 

  • 大気中の窒素と反応すると窒化マグネシウムとなり、水と激しく反応して高温となる。
  • 燃焼中のマグネシウムと水が接触すると、水分が分解されて酸素・水素が発生する。
  • 高温水や塩化物系の水分と反応し、水素を生成しながら水酸化マグネシウムを形成する。


このような化学性質があります。文中の言葉から火災や爆発事故の危険性が高い事がわかると思います。こういった特性を持つ金属である事は必ず理解したうえで加工を行ってください。

水と反応すると危険なので、切削加工時には「鉱物油」を使用してください。それから、科学反応を起こすリスクを極力小さくするために、切り屑を少なくしてください。加工後も切削屑を放置しないようにしましょう。空気中の酸素や水分と反応する恐れがあるためです。十分に取り扱いには注意してください。

マグネシウム合金は腐食に弱い

マグネシウム合金は簡単に腐食します。大気中に塩分やガスなどが少しでもあると、表面の不動態は崩れます。弱酸性(PH4)程度の水溶液でも腐食するため、このままでは日常的に使用できるようなものではありません。

そこで一つの表面処理の方法として「化成」というもがあります。正確には脱脂・エッチング・化成といった三段階の処理が必要になります。脱脂で表面の油汚れなどをキレイに落とします。エッチングではマグネシウム合金表面を均一に良い状態にします。ここまでが化成の下処理となります。

次に化成処理を行うのですが、化成処理は表面を強制的にサビ(腐食)させる処理です。ただのサビではなくキメ細かなサビを形成し、合金内部まで腐食が及ばないようにする表面処理の方法が化成となります。表面処理の方法としては他にもメッキ、コーティングなどが考えられますが、マグネシウムの特性を考えると非常に難しい技術となるのではないでしょうか。

まとめ

まとめ

今回は「マグネシウム合金の特徴/強度/用途/加工などを解説」といった内容で解説させて頂きました。
「マグネシウム合金の特徴は何があるの?」「マグネシウム合金の加工性は良いの?」そんな疑問は解決できたのではないでしょうか。

マグネシウム合金は、軽量・比強度にとても優れた金属であり、優れた製品を製造するためにその用途の幅を広げています。用途の幅を広げるにあたって、やはり複雑な加工を行う際には注意が必要になります。

空気中の窒素や水分、塩分などとも反応してしまう特徴を持っているため、加工を行う際に気が休まる事はありません。腐食に耐える事のできる表面処理においても難しい技術が必要になってくるでしょう。

取り扱いには沢山の注意が必要なマグネシウム合金ですが、さらに用途の幅を広げ、私たちの生活をより良いものへと変化させてくれることでしょう。