ジュラルミンの特徴や強度とは?超ジュラルミンとの違いも解説
ジュラルミンとは、高強度なアルミ合金の事を指します。アルミ合金にも様々な種類がありますが、その中の一部になります。ジュラルミンにも、超ジュラルミンなど種類がありますが、超が付くほど強度に優れた材料になります。本記事ではジュラルミンについて詳しく解説します。
目次
ジュラルミンとは
「ジュラルミン」と聞くと、聞き馴染みが無い方も多いかもしれませんが、ジュラルミンとはアルミ合金の事です。このアルミ合金にも種類があり、JIS規格ではA2017(ジュラルミン)、A2024(超ジュラルミン)、A7075(超々ジュラルミン)といったように、1000~8000番台まで種類分けされています。
ジュラルミンの種類により、含まれている元素は変わってきます。2000系であるジュラルミンや超ジュラルミンは、アルミ二ウムと銅が主の合金になります。超々ジュラルミンと呼ばれる7000系の場合はアルミニウムに、亜鉛、マグネシウム、銅が加えられた合金になります。
ジュラルミンは、身近なものであればスキーや金属バットなどのスポーツ用品などにも使われています。もっと目線を広げれば、航空機の部品や航空宇宙機器などにも使われているんですよ。使用用途を聞くと、なんだかワクワクしませんか?本記事ではジュラルミンについて引き続き詳しく解説していくので、もっと知りたい方は是非読み進めてください。
ジュラルミンの歴史
ジュラルミンが誕生したのはドイツの中西部です。1903年頃、アルフレート・ヴィルム博士は鉄に適当な元素を加える事で硬度が増す、という考えを他の金属で実験していました。この実験はなかなかうまくいかなかったようですが、ある日、薬莢からヒントを得る事になります。
当時、薬莢に使われていた金属は黄銅(真鍮)です。黄銅は銅と亜鉛の合金であることから「アルミニウムに銅を加えてみてはどうだろうか。」といった考えからアルミニウム合金は生まれました。1906年9月にアルミニウム、銅、マグネシウムなどを添加したアルミニウム合金を製作し、焼き入れによる硬度の変化を計測したところ、大きな発見をすることになります。
それは「時効硬化」と言われる現象です。時効硬化は焼き入れ直後に比べ、焼き入れ後約1日放置した方が硬度が高くなる現象です。ジュラルミンは焼き入れ後20時間程度で最大硬度に達します。この時効硬化はその後、ベリリウム銅、クロム銅など他の金属でも発見されますが、はじめて時効硬化を発見したのはこのジュラルミンなのです。
ジュラルミンが使われている製品
ジュラルミンは軽量で強度も高いので、様々なところで活躍しています。航空機の機体や航空宇宙機器など、軽量で強度の高い素材が求められる分野で主に使用されます。航空機の機体においては約70%がジュラルミンで製造されているといわれています。
もちろん、私たちの身近にもジュラルミンは使われています。通常よりも高価になりますが、ジュラルミンのスマホケースもあります。スキー板やストック、野球のバットなどスポーツ用品に使用される事も多く、調理器具などにもジュラルミン製のものがあります。
知らず知らずのうちにジュラルミン製の用具を使っていたかもしれませんね。他には、自動車のホイールにもジュラルミン製のものがありますよ。超々ジュラルミンは軽量・高剛性が求められるスポーツホイールの最高峰モデルに使用されています。ドラマなどでよく見る、大金の受け渡しシーンで使われるジュラルミンケース。これは精密機器の運搬などにも一般的に使用されます。
このように、ジュラルミンだと意識していないだけで、実はジュラルミンからつくられていたもの、というのは身の回りに沢山あります。
ジュラルミンの特徴と強度
ここからは、ジュラルミンの特徴と強度について解説していきます。ジュラルミンはアルミニウムに銅を加えたものです。そのため、耐食性や溶接性など一部の特性において注意しなければならない点もあります。強度においては、他の金属と比較して紹介する事で、感覚的にわかりやすく解説します。
ジュラルミンの特徴
ジュラルミンの大きな特徴は、アルミニウムに銅を加える事で強度を確保している点です。ジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンすべてに銅が添加されています。これら3つの違いについては後ほど解説しますが、銅が添加されたアルミ二ウム、というのが大きな特徴です。銅が含まれている事で、一部の特性に注意が必要なので紹介します。
ジュラルミンの耐食性
ジュラルミンは、純粋なアルミに比べ耐食性が劣ります。その理由は、銅を加えたアルミニウム合金だからです。
鉄などと比較すれば銅は錆にくいイメージがありますよね。しかし、アルミニウム合金(2000系)は、強度は高いのですが耐食性はアルミニウム合金の中でも弱い部類となり、粒界腐食が発生しやすいと言えます。
粒界腐食は、金属組織の結晶粒界にそって腐食が進行していく、局部腐食の一種です。酷い場合には、結晶粒が脱落する恐れもあるので、腐食環境で使用する場合には特に注意が必要になります。十分な防腐処理を施して使用しましょう。
ジュラルミンの溶接性
ジュラルミンの溶接は難易度が高く、溶接性は一般的に他の金属に比べ劣ります。割れ感受性が高く、溶接施工が非常に難しいです。
溶接には通常の溶接よりも低温となる、抵抗スポット溶接機が用いられます。使用される溶接棒によっても、仕上がりに大きく差が出るようなので、溶接にはある程度の経験、ノウハウが求められます。ジュラルミンの溶接が必要な場合、実績が十分にある会社に依頼すると良いと思います。
このように、溶接施工が難しいので、ジュラルミンを結合する場合は、リベットやボルトが使われる場合も多くあります。
ジュラルミンの強度
ジュラルミンは銅を加える事で強度を高めた合金だと解説しました。実際には、どれくらいの強度があるのか比較してみましょう。
金属の硬さを表す単位は複数あります。鋼材でよく使われる単位はHRC(ロックウェル硬さ)なのですが、今回はHB(ブリネル硬さ)という単位を用いて解説します。まずは、各々の材質による硬度の違いを見てください。
- A5052 アルミニウム 65HB
- A2017 ジュラルミン 105HB
- A2014 超ジュラルミン 120HB
- A7075 超々ジュラルミン 160HB
- SS400 普通鋼(軟鋼) 130HB
- SUS304 ステンレス 187HB
このような硬度になっています。通常のアルミニウムと比較し、ジュラルミンがどれほど硬度に優れているのか、わかって頂けると思います。
柔らかいアルミニウムに銅を添加し、合金となることでSS400程度の硬度と引っ張り強度を得ることができるようになるのです。反対に、ステンレスと比較すると、ジュラルミンの硬度が105HBに対しステンレスが187HBなので、ステンレスの方が硬度は優れています。(比強度ではジュラルミンの方が優れています)
アルミ合金だけでなく、他の金属の硬度と比較することで違いがハッキリわかりますね。
「ジュラルミンは強度の高い材料だ。」と端的に覚えてしまうよりも、アルミ合金の中では非常に強度に優れた材料だが、一般的な金属と比較すると同等、もしくは劣るくらいであるというように覚えておくことで、間違った認識を予防する事ができると思います。
ジュラルミン加工方法
ジュラルミンは、切削加工、切断加工、プレス加工など、通常の鉄鋼材料と同様に様々な加工を行う事ができます。ジュラルミン製のボルト、ギア部品、軸受け、油圧部品など複雑で強度が必要な部品をつくる事も可能です。
さらに、比重の軽さを武器に部品の軽量化をはかる事もできます。ステンレスなどと比較すると、重量は1/3程度になり、軽量化へのパフォーマンスは非常に高いと言えますね。
このように、通常の鉄鋼材料と同等の加工を行う事ができるジュラルミンですが、加工時には注意点もあるので、次項で紹介しておきます。
ジュラルミンを加工する際の注意点
ジュラルミンは「アルミ」ということで、腐食に強いイメージが先行しますが違います。ジュラルミンの特徴でも軽く解説しましたが、Cu(銅)が添加されているジュラルミンは強度が強い反面、耐食性が劣ります。アルミは錆に強いイメージがありますが、アルミ合金に関しては「どんな元素が加えられた合金なのか。」によって特性が大きく変わる事を理解し、加工する必要があります。
例として、いくつかアルミ合金の特徴を紹介しておきます。1000番系のアルミ(純アルミ)であれば、強度が低く、粘り気が強いため、切削加工時の難易度は上がってしまいます。2000番系であれば、溶接割れが発生しやすいため、一般的に溶接には不向きだと言われています。熟練した技術者でなければ難しいでしょう。5000番系であれば、Mg(マグネシウム)が添加される事で耐食性と強度を向上させた材料になります。加工性が良く、切削材料として一般的に広く使用されています。
このように、アルミ合金の中でも添加物によって特性が変化するので、アルミ合金を加工する際はその特性を理解したうえで作業を行う必要があります。特にこの記事で紹介している2000番系のジュラルミンは「耐食性が低い」「溶接性が悪い」という特徴があるので加工の際には注意が必要です。
ジュラルミンと超ジュラルミンなどとの違い
ここまでで、ジュラルミンについてある程度理解が深まったと思います。では、ジュラルミンと超ジュラルミン、超々ジュラルミンにはどんな違いがあるのでしょうか。簡潔ににわかりやすく解説しておきます。
超ジュラルミンとは
ジュラルミンと同様の2000番系のジュラルミンであり、A2024の事を指します。そのため、ジュラルミンと同じくアルミニウムと銅を主とする合金です。
超々ジュラルミンとは
超々ジュラルミンは、7000番台のアルミ合金となり、A7075の事を指します。アルミ合金の中で最高クラスの強度を誇る材料となります。
鋼材と同等の強度を誇る超々ジュラルミンは、亜鉛が5.1~6.1%程度含まれています。ただし、ジュラルミン同様、耐食性が劣るため、使用環境や防腐処理には注意しなければなりません。
ジュラルミンと超ジュラルミンの違い
ジュラルミンとの違いは銅とマグネシウムの添加量です。添加量を増やす事で、ジュラルミンよりも強度・切削加工性が向上しています。
ジュラルミンを単純に強化したような特性になっています。
ジュラルミンと超々ジュラルミンの違い
ジュラルミンと超々ジュラルミンの大きな違いは、やはり強度となります。超々ジュラルミンは銅とマグネシウムに、さらに亜鉛を加えた合金です。強度はステンレス鋼にわずかに劣る程度であり、アルミ合金の中ではトップクラスとなります。(ジュラルミンの硬度が105HBに対し、超々ジュラルミンの硬度は160HBとなります。)これが、ジュラルミンと超々ジュラルミンの一番の違いになります。
ジュラルミンと他金属との違い
他の金属との大きな違いは比強度に優れていることです。比強度とは、密度あたりの引っ張り強さの事であり、比強度が大きいという事は、軽いわりに強い金属である事を表します。アルミの軽さと強さはみなさんも良く知るところであると思いますが、手に取った時の金属とは思えない軽さ、簡単に曲げる事は出来ない頑丈さは普段の生活からも経験する事はあったと思います。
手に持った時の軽さから「アルミ製かな?」と判断した経験をお持ちの方も少なくはないのではないでしょうか。この軽さと強さが他の金属には無い魅力だと考えます。
まとめ
今回は「ジュラルミンの特徴や強度とは?超ジュラルミンとの違いも解説」といった内容で解説させて頂きました。
「ジュラルミンって何だろう?」「ジュラルミンにはどんな特徴があるのかな?」そんな疑問は解決できたのではないでしょうか。
ジュラルミンという単語で聞くと難しく聞こえますが、高強度なアルミ合金の事を指します。アルミの軽さを活かしたまま強度を高めているので、比強度に優れた材料になります。この特徴を活かし、航空機やスポーツ用品、工業部品など幅広い分野で活躍しています。
アルミという大きな括りで製品を見るのではなく、アルミ合金にもたくさんの種類がある事を知ったあなたなら、もっと広い視野で金属と関わり合っていく事ができるのではないでしょうか。ジュラルミンの注意点である耐食性、溶接性に劣る部分も理解しつつ、今後に役立てて頂きたいと思います。