アルマイト処理は個人diyでもできる?方法や基礎知識を解説
アルミニウムは酸化しやすく腐食しやすい金属です。それを防ぐための方法の1つとしてアルマイト処理があります。そんなアルマイト処理とは一体どんなもので、どんな方法で行うのでしょうか。diyでもできるのかを合わせて、アルマイト処理の知識を詳しく紹介します。
目次
アルマイト処理とは?
アルマイト処理とは、1929年に理研の植木栄が発明し1931年に宮田聡が特許を取った、日本で生まれた処理方法です。
アルミニウムは元々酸素と結びつくことで酸化被膜を作るので耐食性がいい金属と言われていますが、その膜は非常に薄いので、一度傷つくと腐食や摩耗しやすくなってしまいます。
それを防ぐために、アルミニウム製品の表面を強酸性の電解液で電解処理し人工的に厚い酸化被膜を作る方法です。
アルマイト処理が行われているものの代表としては、アルミホイール・スマホなどです。
近年ではアルマイト被膜にできた孔に染料を浸透させることによって、酸化被膜が剥がれない限り剥げることがない染色の仕方も行われています。これをカラーアルマイトと呼びます。
アルマイトには普通アルマイトと硬質アルマイトの2種類あります。普段使われるのは普通アルマイトです。
硬質アルマイトは超低温で作られるので普通アルマイトに比べ、硬度、耐食性、耐候性に優れており、シャフトや航空機の部品に使われています。
作業工程も全くの別物で普通のアルマイトは個人diyでもできるのに対し、硬質アルマイトは工場でなければ行うことができません。
アルマイト処理の特徴
アルマイト処理をしたアルミの表面を顕微鏡で見ると孔という微細な穴が空いており、六角形の鉛筆が束ねられているように見えます。それがアルマイト層と呼ばれるものです。
アルマイト処理をすることで表面を保護することができます。表面を保護できると防錆効果や絶縁効果をもたらすので腐食を防ぎ、製品の耐久性を高めます。さらに硬度も高くなるので、摩耗にも強くなります。
装飾性も高く鏡面のように仕上げたり、アルマイト処理の時に着色をすることによって酸化被膜が取れない限り、永遠に剥げない着色をすることができます。
この着色技術はスマホケースやインテリアなどに利用されています。
アルマイト処理とメッキの違い
金属の表面加工と言うとメッキを思い浮かべる方も多いと思いますが、メッキ加工とアルマイト処理は全く違うものです。
アルマイトは陽極で電解し、アルミニウムが溶け出し上下に被膜を作ります。アルミの表面に成長被膜、アルミの下に浸透被膜を作り上下に成長していくので半分は浸透し、半分は成長します。そのこともあり、元のアルミに凹凸がある場合はその凹凸がそのまま残ってしまいます。
それに対しメッキは、電解液中にある金属イオンを還元し、元の素材とは違う金属で表面をコーティングします。元の金属とは全く別物なので、元の素材に浸透することはありません。
また、主にメッキは錆びやすい素材に防錆効果を持たせる目的で使われています。
アルマイト処理の方法
基本的なアルマイト処理の方法は、まず処理を行いたいアルミ製品を治具に取り付け電解液の中に入れます。この時の電解液には基本的に硫酸か蓚酸が使われます。
電解液の中に入れたら、電極の陽極を治具に繋ぎプラスの電気を流します。それと同時に陰極を繋いだ電極番を電解液の中に入れて電気を流します。
すると電解液の中で電気分解が起こり、アルミ製品に酸化被膜が付きます。
カラーアルマイトをする場合は、この処理が終わったあとに、アルマイト被膜に空いている孔の中に電解処理で染料を染み込ませ、封孔処理を行うことで完了です。
このときに別の金属を電着させ補強させたりすることもあります。
アルマイト処理を個人diyで行う方法
アルマイト処理は個人diyでも行うことができます。必要になってくるものは基本的に全てホームセンターなどで購入することができ、気軽に行うことができます。
個人diyで行う場合のアルマイト処理の方法を解説します。
個人でアルマイト処理するときは、ゴム手袋などを付けて作業してください。
①アルマイトの剥離
まずアルマイト処理をする場合には、元々ついている酸化被膜を一度剥離させる必要があります。そのためにアルカリ性溶液に漬けます。
家庭でやる場合は苛性ソーダやパイプユニッシュなどで代用することができます。
漬けてしばらくすると、酸化被膜とアルカリ性溶液が反応して泡が発生します。泡が発生したら元からある酸化被膜が剥離したという合図なので、液の中から取り出してください。
取り出した後は、水道水で洗い流しておきましょう。
アルマイトを剥離させる前に、事前に水洗いなどをして汚れを落としてから行ってください。
②スマット除去
酸化被膜を剥離させた後に取り出すと、アルミが黒っぽくなっていることがあります。これはアルミに添加されている金属が原因で起こってしまいます。それがスマットと言われています。
スマットが出てしまったら、それを除去しなければなりません。スマットは酸性の液体を使うことで除去することができます。
スマット除去用のスマトリンが一般的に使われますが、サンポールやトイレのルックなどでも代用することができます。
これらの液体に漬けるとスマットが剥がれていくので、全て剥がれ落ちたと思ったら液体の中から取り出しましょう。細かい部分が気になる場合は取り出した後、歯ブラシなどで磨いてください。
この作業も終わり次第、水道水で洗い流すようにしてください。
③アルマイト処理をする
ここまでの作業が終わったら、アルマイト処理です。
個人でアルマイト処理をする場合は、アルミ線と処理したいものを結束して通電させます。結束するときにしっかりとアルミ線を密着させることが重要です。密着させたら、そのアルミ線と電極板を結束します。
陰極をつなぐ電極板も用意したら、電解液の中に入れてバッテリーなどを使い通電を開始させアルマイト処理をします。
アルマイト処理中は刺激臭が発生するので、常に換気をしてください。
30分ほど通電させたら酸化被膜が完成しています。
④封孔の処理
アルマイト処理が終わったら、アルマイトでできた孔を閉じるために封孔処理をします。
封孔処理はいたって簡単で、鍋で煮込むだけでOKです。基本的に水道水でも問題はありませんが、ph値が高い場合表面が荒れたりしてしまうことがあるので注意してください。
もし色をつけたい場合は、封孔処理を行う前に染料を溶かした液体に漬けておくと、簡単に着色することができます。
これらの作業のみで、個人diyでアルマイト処理を行うことができます。
アルマイト処理のポイント
アルマイト処理を行うときには、様々な液体を使うので間違えたり混ぜたりしないようにしましょう。
また、化学反応を使って行う作業なので常に換気ができる環境で作業を行ってください。特にアルマイト処理をしているときは刺激臭がするので、必ず換気をしてください。マスクをつけておくとより安全です。
液体をこぼしてしまうこともあるので、お風呂場などで作業をするのがおすすめです。お風呂場には換気扇もあるので、換気も簡単です。
アルマイト処理を失敗しないためには、アルミ線と処理したいものをしっかりと密着させないといけません。間が空いてしまうと、アルミ線の方が先に酸化被膜ができてしまい通電しなくなってしまいます。
そうすると、また1からやり直しになってしまうので必ず事前に確認しましょう。
まとめ
アルマイト処理はアルミ製品を保護し、見た目を綺麗に仕上げることができる処理なので、多くのアルミ製品に使用されています。
個人でもすることができ、ホームセンターなどで売っているものを使えばdiyで行う方法もあります。ですが予想以上にコストがかかったり、どうしても上手にできないこともあります。なので、綺麗に仕上げたい場合はプロに任せるようにしましょう。
プロに任せたら、完璧な状態の仕上がりになります。