せん断加工とは?鋼のプロがわかりやすく解説します。

せん断加工は、金属板を目的の形状に切断するための加工法です。本記事では、せん断加工の仕組みや、使われている技法、注意点について紹介します。本記事を読めば、せん断加工の方法と、失敗しないための注意点を理解することが可能です。

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せん断加工について、お調べでしょうか。

せん断加工は、金属板を目的の形状に切断するための加工法です。

シンプルな加工ですがなんでも切断できる訳ではなく、条件から外れた作業を行えば設備の破損といったリスクもあるのです。

そこで本記事では、せん断加工の仕組みや、使われている技法、注意点について紹介します。

本記事を読めば、せん断加工の方法と、失敗しないための注意点を理解することが可能です。

正しい知識をつけて、せん断加工を成功させましょう。

せん断加工とは?

せん断加工とは、金属の切断加工に用いられる技術です。
 
ここでは、加工法の特徴と用途を紹介します。

紹介の内容は以下の2つです。
 

  • せん断加工とはどんな加工法か
  • どんな製造工程で用いられているか

特徴と用途を知れば、目的とする加工に適合しているか判断が可能です。

それでは、せん断加工の特徴を見ていきましょう。

ハサミの原理で材料を希望の形状にする加工

せん断加工とは、金属板の切断に用いられる加工法です。

上下一対の金型を用いて、素材の平板に圧力をかけることで切断します。

シンプルな構造で加工時間が短いので、大量生産に適しているのが特徴です。

せん断加工は、材料を希望の形状に切断する加工になります。

せん断加工はあらゆる製品製造に必要な工程

せん断加工は、あらゆる製品製造で必要な工程となります。

製造の第一歩は、板材を目的のサイズに切断することです。

日常で使う文具の製造から大量生産の工場現場、小型精密機器部品の製作とあらゆる製造現場で利用されています。

このようにせん断加工は、幅広い製造の第一工程に用いられる重要な加工法なのです。

せん断加工の仕組みをわかりやすく解説!

せん断加工は、平板の切断に用いられる加工法です。

ではせん断加工は、どのような仕組みで金属を切断するのでしょうか。

ここからは、せん断加工の仕組みをわかりやすく解説します。

仕組みを理解することで加工に対する理解が深まり、設計精度の向上が可能です。

それでは、詳細を見ていきましょう。

パンチとダイで材料を挟む

せん断加工は、対となる金型で挟み込み圧力をかけて金属を切断する加工です。

金型はそれぞれ、パンチ、ダイと呼びます。

せん断加工では、ダイで固定した材料にパンチを打ち下ろすことで、切断するのです。

せん断加工は、穴あけパンチの構造やハサミの構造と同様の仕組みになります。

せん断加工は、耐久限界以上の力を加えると材料が切断される仕組みを利用した加工法です。

クリアランスの調整がポイント

せん断加工では、加工精度をあげるためにクリアランスの調整がポイントになります。

クリアランスとは、パンチと加工金属の間に発生する隙間です。

隙間がない状態で圧力をかけるのは、簡単ではありません。

ハサミで分厚いものを切る際に、少し隙間を空けて切ったほうが少ない力で切断可能です。

せん断加工でも同様に、クリアランスを少しあけることで効率よくスムーズに切断できます。

しかし加工する上で重要なポイントとなるクリアランスは、大きすぎても小さすぎても駄目で、調整が必要です。

クリアランスが大きすぎるとどうなる?

クリアランスが大きすぎると、素材がちぎれるように分断されます。

ちぎれるような分断が起これば、破断面が乱れた断面となり大きなだれやバリが発生するのです。

クリアランスが大きすぎると、製品の品質が低下につながる要因となります。

クリアランスが小さすぎるとどうなる?

クリアランスが小さすぎると、パンチを打つ際にダイとの隙間が少なくなります。

分断力の逃げ場がなくなり、断面に二次クラックと呼ばれる湾曲したような形状の大きなクラックが発生しその部分が脱落します。

また、パンチとダイにも摩擦が発生し、不適切な負荷がかかり工具を傷めてしまうことにもつながるのです。

クリアランスは小さすぎても大きすぎても、不具合が発生します。

覚えておこう!せん断加工には3つの技法がある

続いて、せん断加工の技法について見ていきましょう。

せん断加工の技法の分類は以下の3種類です。
 

  • ブランク加工
  • トリミング加工
  • 穴あけ加工

技法には、それぞれ特徴があり加工したい形状によって使い分けます。

違いを理解すれば、目的の形状に適した技法を選択することが可能です。

それぞれ見ていきましょう。

ブランク加工

ブランク加工は、板材の打ち抜き加工に用いる技法です。

コイル状や大きな板状で用意した素材を、プレス加工に適した形状の板材へと打ち抜きます。

単純な打ち抜き作業以外にも、コイル材の巻きぐせの除去や素材の洗浄などもブランク工程の一部です。

一連の打ち抜き加工をブランク加工と言います。

トリミング加工

余肉を取り除いて、目的の形状に加工するせん断を、トリミング加工と言います。

素材をゴムパッドで固定して、パンチで打ち抜く加工法です。

一枚の大きなクッキー生地から、丸い抜き型を使ってくり抜きをするイメージで、目的の形状へと加工します。

トリミング加工では、発生した余肉の除去も工程の一部です。

余肉の除去ができなければ、工場ラインのストップなど大きな損害に繋がります。

切り抜きと、切り抜きによって発生した余肉を除去する一連の加工をトリミング加工と言います。

穴あけ加工

穴あけ加工は、穴状のせん断を加える加工です。

素材をダイ上に固定して、パンチで打ち抜きます。

文房具の穴あけパンチと同様の構造で、素材に穴を空けることが可能です。

穴空け加工は、素材の軽量化にも用いられるせん断加工の一種になります。

気をつけて!せん断加工の注意点

せん断加工は、シンプルな構造の加工法です。

しかし構造がシンプルだからといって、注意点がないわけではありません。

万能の技術という訳ではなく、注意点を守らなければせん断後の加工に影響のでる粗悪品を製造してしまいます。

せん断加工の注意点は以下の2つです。
 

  • クリアランスの大小が断面精度に影響する
  • せん断できる板圧に限界がある

注意点を理解すれば、より精度の高い加工の設計が可能です。

それでは、詳細を見ていきましょう。

注意点1.クリアランスの大小が断面精度に影響する

せん断加工では、クリアランスの大小が断面精度に影響します。

クリアランスが大きくなると打ち抜きに要する力は小さくて済み、一方で断面が大きすぎれば、切断面のだれや破断面の傾きが大きくなります。

クリアランスの適切な値は一定ではなく、素材の材質と厚みによってさまざまです。

また製品断面に精密な精度を求めるのか、ある程度許容されるかによっても、とるべき値は異なります。

素材に対する適正なクリアランス値を以下に表にしましたので、参考にしてください。
 

材質 精密抜き 一般抜き
軟鋼 2〜5 6〜10
硬鋼 4〜8 9〜15
けい素鋼 4〜6 7〜12
ステンレス鋼 3〜6 7〜12
1〜3 4〜7
黄銅 1〜4 5〜10
りん青銅 2〜5 6〜10
アルミニュウム(軟) 1〜3 4〜8
アルミニュウム(硬) 2〜5 6〜10

せん断加工では、加工精度に影響するクリアランスの設定が重要です。

抜き条件の変化にあわせてクリアランスを変えれば、パンチ・ダイの摩耗対策や製品のひずみ対策にも繋がります。

クリアランスの設定は、せん断加工において重要な要素なのです。

注意点2.せん断できる板厚に限界がある

鋼材が厚くなると切断が難しくなります。

素材の厚みが増すと金属にたわみを起こせないため、せん断を起こすことができません。

せん断加工が問題なく行える鋼材厚は下記の基準になります。
 

  • 鋼板:板厚13mm以下
  • 山形鋼:板厚13mm以下
  • 丸鋼:棒径13mm以下

上記の基準より厚く、太くなる鋼材はせん断加工できないので注意しましょう。

せん断加工にお困りの場合は鋼の専門商社へ相談もアリ!

せん断加工の設計と実施に自信がない人は、プロへの依頼も検討しましょう。

設計と加工のプロである鋼材専門業者であれば、経験豊富な技術を元に精度の高い加工対応が可能です。

こちらでは、クマガイ特殊鋼株式会社について紹介します。

クマガイ特殊鋼株式会社

クマガイ特殊鋼株式会社

クマガイ特殊鋼株式会社は100年以上の歴史があり、せん断加工に対する経験や知識も豊富です。

業界の長い歴史で培われた基盤と幅広い知識を元に、鋼材加工に対応可能な素材知識と加工技術を有しています。

目的にあった素材の選定や、素材に合わせた精度の高い加工設計に自信がない場合はクマガイ特殊鋼株式会社に相談しましょう。

まとめ

せん断加工は、材料を圧力によって切断する加工法です。

板材を目的のサイズや形状に整えて、製品製造の初期工程として用いられています。

シンプルな構造ですが、クリアランスの調整など注意点を理解しなければ精度の高い加工
はできません。


本記事を参考に注意点を抑えた、適切なせん断加工を行いましょう。

もし、せん断加工を用いた作業にお困りの場合は、実績多数の専門商社クマガイ特殊鋼株式会社までお問い合わせください。

せん断加工について、プロとして親身に相談に乗ります。