鋳造法案の湯道とは?【基礎知識】

この記事では、鋳造とは何か?鋳造における鋳造方案とはどのようなもので、何を準備すべきか解説していきます。そして、鋳造における湯道とはどんなもので、湯口との違いは?役割と注意すべきポイントを解説していきます。また、湯道の検討をする際の留意点についても解説します。

鋳造法案の湯道とは?【基礎知識】のイメージ

鋳造と鋳造方案

鋳造

ここでは鋳造と鋳造方案について解説をしていきます。

鋳造とは

鋳造には型が必要で、その型には

  • 砂型:砂を固めて作った型
  • 金型:金属を削って作った型
  • その他、樹脂製の型や石膏による型
などの種類があります。

型そのものことを「鋳型」(いがた)と呼び、鋳造で作ったものを「鋳物」(いもの)といいます。

鋳造は、
  • 複雑な形の部品を低コスト大量生産できる。
  • 中空部を作ることが出来る。
  • 大きさに制限がない。
などの特徴があります。

 

鋳造方案とは

鋳造法案とは、製品の設計図から鋳物をどのようにして製作していくかの基本的な計画のことをいいます。鋳造はまず「方案」を練ることから始まります。

仕上がりの大きさや、肉厚などをしっかり検討して、どのような型を作るか、そして熔解する成分をどうするかなどを詳細に検討していきます。

冷却によって、鉄が狙い通りの形に固まっても鋳型から取り出せないと意味ないので、鋳型をいくつに分割するか、それをどこで分割するかを検討していきます。製品の形状によっては、上型、下型だけでなく、3つ以上の型に分割する場合もあります。

製品内部に空洞部分を作るためには、中子と呼ばれる型も仕込みます。不純物の混入を防ぐ方法、溶けた鉄を万遍なく鋳型に流し込む方法、冷却の際の収縮に対する対応など、型の設計にも様々なノウハウが必要となります。

流し込む溶湯の温度管理も大事な要素で、最新の機材を導入しただけでは解決できない問題もあり得ます。型の設計から最終チェックまで、鋳造製品のすべてを見通しての製造計画を検討していくことが方案であり、もっとも重要な作業といっても過言ではありません。
 

  • 鋳造図
製品形状に加工代、抜き勾配のついた鋳物の形状図を作成する。
 
  • 模型方案
製品のどの面を下にして鋳込むかの鋳造姿勢や分割面の設定。そして1枠の取り個数はいくつにするか、木型、金型の区分などの法案を考えていきます。
 
  • 湯口方案
湯口系、押し湯などの設定などをどのように設定するかを検討していきます。


これらの項目は、互いに関係しているので、鋳物を欠陥のないように、そしてコスト低く作るためには総合的に検討し、実施案を決める必要があります。また鋳物が使われるときの状態や役割・機械加工の条件などもよく考慮して、鋳造方案に折り込んでいくことが大切です。

鋳造の湯道とは

湯道


湯道とは鋳造において、溶けた金属が湯口(ゆぐち)から注がれ、鋳型へ流れ込む水平の通路のことをいいます。「湯道」は、ノロが鋳型内に流入するのを防ぐ役割もしています。ノロとは、装入地金の酸化物と、ライニング材などの反応によって生じるカスのことを示し、スラグとも呼ばれます。

湯道と湯口の違い

温泉の湧き出る湯の出口を湯口と言いますが、鋳造においては、溶けた金属を鋳型の枠に流し入れる入口のことを湯口と言います。湯口から入った溶けた金属は垂直に流れ落ちて、湯道へと流れていきます。湯口は鋳型に溶湯を導入する役目のほか、製品より高い位置まで注湯することで、製品に静圧を与える役目も持っています。
 

湯道の留意点

湯口部分の入口は面取りをします。湯口は鋳物の大きさや形状によってそれぞれに適した湯口を設ける必要がありますが、理想的な形状、寸法のものを見つけることは、なかなか難しいものです。特に注意すべきポイントを解説します。
 

  • 飛ばされに注意
鋳型が弱くて砂が飛ばされやすい状態、または鋭角や凸出部が注湯の時に飛ばされが生じないようにしましょう。
 
  • ノロやカスに対する対策
少なくとも溶湯からノロ、かす等が流入しないような法案を設計しましょう。ノロかみとは、鋳造のおける欠陥のひとつで、溶解時や溶湯処理時のノロが製品内に介在してしまうものです。ノロかみの原因は、鋳込み中にノロが溶湯に巻き込まれて型の内部に流入し、凝固後も製品内に留まってしまい、欠陥になることが多いものです。ノロかみの対策としては、ノロ取り作業を確実に行うことや、湯道にセラミックや陶器製のフィルターを設置し、ノロを捕捉する方法があります。
 
  • 湯口は垂直に
湯口が垂直に作られていることも重要なポイントです。小さな鋳型の場合では比較的問題はありませんが、湯口が長い場合、枠を重ねた場合には、上下の合せが合わない場合があります。湯口の最下部分は流しいれた湯が飛散するので破損しやすいものです。そのため底部を耐火煉瓦(レンガ)で作ったり、生型の場合には丈夫な油中子を入れたりすることがあります。また、カスをともない易いので、底に溜や逃げを設けましょう。湯口が、せきや湯道と比較して、あまり小さすぎる場合は、湯が続かないで負の圧力を生じてしまい、空気やガスを吸いこむことがあります。湯口に湯が常に充満して流れるようにします。


湯口方案設定において考慮すべきことは、
  • 乱流できるだけを少なくして、溶湯を鋳型内に導くようにします。
  • 溶湯の溶カスが湯道系を流れる際に浮上させて、鋳型内への流れこまないようにします。
  • 適正な速度で鋳型に溶湯が流入するようにします。
  • 歩留まりの向上を図るために、湯口・押湯を最少にします。


湯道は湯口より流れ込んだ溶湯を、せきに導く通路で、せきよりも断面積を大きくするのが普通です。流速を加減して、カスを湯から分離するように工夫します。湯道の端にカス溜りを設けることがあります。

一般的には湯口:湯道:せきの断面積は次のような比率です。
湯口:湯道:せき
3.6:4:2

まとめ

まとめ

この記事では以下の内容についてご説明しました。

  • 鋳造に必要な型には砂型・金型・樹脂製や石膏による型があります。
  • 鋳造の特徴として、複雑な形の部品を低コスト大量に生産できることや中空部を作ることが出来る、そして大きさに制限がないことを説明しました。
  • 鋳造方案では、鋳造図、模型法案・湯口法案を準備する必要があります。
  • 鋳造における湯道とはノロを防ぐ効果があり、鋳型へ流れ込む水平の通路です。
  • 湯口は溶けた金属を鋳型の枠に流し入れる入口のことで湯道は鋳型へ流れ込む水平の通路です。
  • 湯道の検討時の留意点として、飛ばされに注意、ノロやカスに対する対策、そして湯口は垂直に、という3つのポイントを説明しました。
  • 湯口方案設定において考慮すべき事項として、溶湯を鋳型内に導くようにする、溶カスが鋳型内への流れこまないようにする、溶湯の流入速度を適切に、そして湯口・押湯を最少にする、という4つのポイントを解説しました。