鋳肌とは?読み方/表面粗さなど
この記事では、鋳肌とは何か?鋳肌の読み方や鋳肌の表面粗さとその要因について解説します。また、従来の取引先から新規の取引先に代わったとたんに鋳物の表面粗さが以前と違うというトラブルにならないように、業者へ指示する際に押さえておくポイントも解説します。
目次
鋳肌とは
鋳肌とは鋳造したままの鋳物の表面です。つまり鋳放し状態の表面です。その鋳物の表面を鋳肌といい、黒皮とも呼ばれます。金属加工でいえば、切削する金属素材の、加工していない表面を「鋳肌」や「黒皮」といいます。
金属の表面が酸化して、黒ずんでいることに由来しているといわれています。実際の現場では、鍛造材も鋳物も、切り出した立方体の金属も、切削加工をしていない表面のことを「鋳肌」や「黒皮」と呼ぶことが多いです。
鋳肌や黒皮が問題になるのは、加工する予定の肉厚が薄いため加工のための取り代が少なく、予定の寸法まで削っても、削り残しが出てしまう場合です。このような状態を「鋳肌が露出」や「黒皮残り」と言います。
鋳肌の読み方
鋳肌は「いはだ」と読みます。同じ意味の黒皮は「くろかわ」と読みます。
鋳肌の表面粗さとは
砂型で鋳造した場合、使用する砂の粒の形状や粒度・樹脂量などの違いによって製品の表面の粗さに差が現れます。
鋳肌の粗さの要因
鋳肌は溶けた金属と鋳型との接触面であって、鋳造の際に最初に固まる場所です。鋳型の種類、性質、状態によって異なります。それと同時に溶けた金属の性質や鋳込み条件によって左右されます。鋳型が砂で作られている場合には、型表面が完全に滑らかな面とは言えません。
砂の粒の大きさによって凹凸の程度が異なります。一般的には、砂粒間を結合する粘結剤が必要で、この粘結剤は微細な粒子からなる粘土や合成樹脂や水などであるため、砂粒間を埋めて型表面を滑らかにしています。
砂粒は大きくともその間を埋める粘土分が多くなると表面は比較的滑らかになるといわれていますが、これには限界もあります。砂粒間を完全に微細粒子で埋めてしまうと空気の抜けがなくなってしまい、鋳物から発生するガスが抜けず巣が発生したり、注湯の際に亀裂が発生したりすることもあります。
鋳鉄を鋳肌で使用する場合と、表面仕上げをした場合では、強度にどれほどの差があるか
鋳鉄の鋳肌には砂との焼付きによる黒皮酸化層や表面での欠陥(巣や介在物,あるいは異常組織)などが存在します。
さらに鋳肌の表面粗さは不均一であり、その凹凸が著しい場合には応力集中による影響を考える必要もあります。
引張強さはそれらの要因があっても、粗さの凹凸が極端に大きくない限りはあまり影響しませんが、伸びは大きく低減します。
つまり、ねずみ鋳鉄の強度には鋳肌はあまり影響しません。球状黒鉛鋳鉄では鋳肌付き試験片と機械加工試験片の応力-ひずみ線図を比較しますと、弾性域の範囲で両者は大きく相違しませんが、塑性域の範囲では鋳肌の影響を受けて塑性変形能が極端に低下します。
たとえば、6号けい砂程度までの粗さ(Rz=250μm以下)では機械加工試験片に対して、鋳肌付き試験片の引張強さは90%以上を確保できますが、伸びは大きく減少して50%程度になることもあります。
鋳肌がさらに粗くなれば、両者はさらに低下します。
曲げ強さ、衝撃値及び疲労強さは鋳肌の影響がより明確に現れます。
一般には後処理としショットブラストが施されますので、その効果もあって鋳鉄の引張強さは鋳肌の影響をあまり受けないと考えて良いです。
『鋳造工学』87巻10号より引用
引用元:鋳鉄を鋳肌のまま使用する場合と表面仕上げを施した場合では,強度にどれほどの差がありますか?
表面粗さの指示方法
鋳物業者に表面粗さを指示する指標として鋳型の砂の粒の大きさを鋳肌面に「Rz 200」などと明確に指示すると良いです。
特に、鋳物の仕入先が何らかの理由で新規取引先に変更になった場合などに、表面粗さが悪くなったなどのトラブルが発生する可能性がありますので、最低限の表面粗さは図面に明確に指示しておくことをお勧めします。
まとめ
この記事では、鋳肌とは何か?鋳肌の読み方や鋳肌の表面粗さとその要因について解説しました。また、従来の取引先から新規の取引先に代わったとたん、鋳物の表面粗さが以前と違うというトラブルにならないように、業者へ指示する際に押さえておくポイントも解説しました。