蒸着(じょうちゃく)とは?メッキとの違いや方法など

この記事では、蒸着とは何か?蒸着にはどのような特徴があるか?その用途や蒸着の方法などについて解説していきます。 また、蒸着とメッキの違いとは何か?蒸着とスパッタリングの違いは何か説明します。最後に、蒸着の主なメリットについても解説していきます。

蒸着(じょうちゃく)とは?メッキとの違いや方法などのイメージ

蒸着(じょうちゃく)とは?

蒸着とは、素材の表面に付着させる表面処理で、金属や酸化物などを蒸発させて処理を行います。もしくは薄膜を形成する方法のことをいいます。

蒸着の特徴

蒸着には「物理蒸着」(PVD)「化学蒸着」(CVD)の2種類があり、以下に解説します。

物理蒸着(PVD)

物理反応を利用する蒸着方法の一つで、切削工具やCDの記録面側のアルミ蒸着などがその一例です。一般的に「真空蒸着」は、この「物理蒸着」の分類に属し、真空蒸着だけを「蒸着」と表現することもあります。

化学蒸着(CVD)

化学反応を利用して行う蒸着方法の一つで、主に半導体の製造や合金向けの蒸着で使われています。金・銀・アルミニウム・クロム・亜鉛などの材料を薄い膜状にして製品にコーティングすることが可能です。さまざまな材料を使用することができるので色々なコーティングに応用できるというところも蒸着の大きな特徴の一つといえます。

蒸着の用途

製品製造をしている工場では、製造過程で蒸着工程が工程の一部として存在し、蒸着技術が幅広く利用されています。

主な使用例

  • メガネ、特殊ミラー、レンズの反射防止膜などの光学薄膜
  • オーディオテープ、ビデオテープなどの磁気テープ
  • プラズマディスプレイ、有機EL、液晶ディスプレイ
  • 携帯電話、PDAのディスプレイ表面、本体装飾コーティングなど
  • コンデンサ、抵抗、半導体集積回路などの電子部品
  • スナック菓子の袋などに用いられている、アルミ蒸着フィルムなどの食品包装材
  • ファッション素材など
  • 建材など

以上のように「蒸着」は、私たちの身近な製品に多く活用されています。

蒸着の方法

金属表面処理における皮膜形成法には、メッキやアルマイト(陽極酸化)などの湿式法に対し、乾式法としては物理的方法・化学的方法があります。物理蒸着(PVD)は大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた空間中で金属・無機化合物あるいは有機物の薄膜を作成する技術を総称しています。

物理蒸着の分類の中には真空蒸着・スパッタリング・イオンプレーティングが含まれます。また「湿式メッキ」(電気メッキあるいは無電解メッキなど)に対して「乾式メッキ」とも呼ばれています。

「電気メッキ」では、元素のイオンを含む水溶液中での電気化学反応で行われます。それに対して「乾式メッキ」では真空中で、皮膜を行いたい材料の気体(原子または分子の大きさ)を被処理物(基板)表面に飛ばすことによって行われます。メッキしたい基板を気体がふりかかる位置に置き、その気体の原子または、分子が基板表面で冷却され、液体状態を経て皮膜となります。

この際、気化した原子・分子の酸化防止または直進性向上のため、不要な気体分子の残留を防ぐように高真空が使用されます。この方法は「気相メッキ」とも呼ばれ、気体状態で皮膜が作られます。「真空蒸着法」では、作業が容易で真空を利用する他の方法と比較してコストが抑えられ、もっとも一般的な皮膜形成法といえます。

この方法をたとえて言うならば、寒い冬の時期に部屋の中でお湯を沸かした時に蒸発した水蒸気が窓ガラスを曇らすことと原理的には同じと考えられています。真空となった容器を使って、皮膜にしたい材料を加熱蒸発させ、その蒸気を基板表面に凝結させて皮膜とします。 

蒸着とメッキの違い

メッキ(湿式メッキ)では液体を使うのに対して蒸着(乾式メッキ)では気体を使います。湿式メッキは電解メッキ・無電解メッキなどをいい、乾式メッキは真空蒸着・イオンプレーティング・スパッタリングなどをいいます。

メッキは(湿式メッキ)の方法は、メッキを行う対象製品の表面に「防錆」や「装飾」などを目的として金属膜を形成し、薬品や液に浸漬させて対象製品に金属の皮膜を形成します。蒸着(乾式メッキ)では金属を気化させてメッキを行う対象物に金属の皮膜を形成します。 

蒸着とスパッタリングの違い

スパッタリングとは、真空蒸着と同じように物理的薄膜形成技術の一つで、蒸着加工と似ていますが蒸着とは加工方法が異なります。「蒸着」では真空中で皮膜を行いたい材料の気体材料を蒸発させて蒸気を蓄積することで膜を形成しますが、スパッタリングでは電気を通してイオン化させた材料成分を、直接素材にぶつけて膜を形成する加工方法のことをいいます。

スパッタリングでは、原子、分子、またはイオンが表面に衝突することで生じる固体形成物質の放出現象のことをいい、皮膜形成分野ではこれによって放出された粒子が基板表面に付着して、皮膜となる過程も含め、スパッタリングと呼んでいます。

スパッタリングは、真空蒸着での蒸発と同じで、粒子の放出現象のことを指しています。わかりやすい身近な例では、古い蛍光灯の両端ソケット部が黒くなる現象のことです。 

蒸着のメリット

真空蒸着では、アルミに通電した時に発生する電子ビームや熱で皮膜を行いたい材料を蒸発させて、蒸気の蓄積で膜を形成することによって様々な製品にメッキ加工を施す加工技術を指します。

一般的な方法として真空蒸着では、製品を機械に入れて機械内部を真空状態にした状態で製品を回転さることで、製品に均一なコーディングが出来るようにメッキ加工をします。

主なメリットとしては、

  • 気化しやすい
  • 金属、非金属両方に対応ができる
  • 酸、アルカリ素材にダメージを与えにくい
  • 薄膜の質が高い
  • 加工コストがかからない

などがあげられます。

まとめ

この記事では、蒸着(じょうちゃく)とはどのようなものか?をはじめとして、以下の内容を説明しました。

  • 製品などに薄膜を形成する方法のひとつである。
  • 蒸着には「物理蒸着」(PVD)と「化学蒸着」(CVD)の2種類がある
  • 蒸着はメガネやレンズの反射防止膜など身近なものに多く活用されている。
  • 蒸着の方法は、真空中で皮膜にしたい材料を加熱蒸発させ、その蒸気を基板表面に凝結させて皮膜にする方法。
  • 蒸着のメリットは、金属やプラスチックにも加工ができる。