溶接の種類!アーク溶接など種類やワイヤーなど溶接機器/資格などを解説

溶接にはどんな種類があるのかご存じですか?アーク溶接機やワイヤーを使用する半自動溶接機を知っている方は多いと思いますが、この記事では大型の機械を要する抵抗溶接機などについても解説します。溶接を行うために必要な資格も紹介するので参考にしてください。

溶接の種類!アーク溶接など種類やワイヤーなど溶接機器/資格などを解説のイメージ

溶接の種類

「溶接」と聞くと、まず頭に浮かぶのはアーク溶接ではないですか?バチバチと光と音を発しながら溶接していく作業風景はまさに溶接そのものです。しかし、溶接と一口に言っても沢山の種類がある事はご存じでしょうか。ざっくりと溶接加工の方法には60種類以上存在すると言われています。

そのすべてを理解する必要はないのですが、その沢山の溶接の方法は大きく以下3つに分類する事ができます。

  • 融接(溶融溶接)…母材を加熱して接合する方法。
  • 圧接(加圧溶接)…母材に圧力を加えて接合する方法。
  • ろう接…母材を溶かさずに、溶加材で接合する方法。

このように大きく3つに分類できるのですが、それぞれの方法がさらに細分化されていくイメージです。

本記事では代表的な溶接の種類、そして分類についてまずは解説していきます。後半では、溶接の機器や資格についても触れていきますので、興味があれば読んでください。

アーク溶接

アーク溶接は母材同士を溶融させて接合する「融接」に分類されます。アーク溶接は電気が放電する際に発生するアーク熱で溶接を行う方法となります。このアーク熱の温度は軽く5000℃を超えていますので、金属を溶かすには十分な温度となっています。

アーク溶接にも様々な種類があるのですが、シールドガスを用いる方法が一般的です。シールドガスとは、大気中の酸素などを溶接個所から遮断し、金属の酸化による溶接不良を防止する役割を果たしています。一般的にはヘリウムやアルゴンなどの不活性ガス、炭酸ガスなどが用いられる場合が多いです。

アーク溶接機の中でも被覆アーク溶接棒を用いた溶接の場合は、被覆(フラックス)が燃える事でCO2が発生し、シールドガスの役割を果たしています。昔からある代表的な溶接方法なので、皆さんの会社にもあるのではないでしょうか。

他にも半自動溶接機によるワイヤーを電極として使用する場合もあります。電極(ワイヤー)は消耗していくが、自動的に電極が供給されていくため、溶接棒交換といった手間が掛かりません。作業性の高い溶接方法です。

電子ビーム溶接

電子ビーム溶接も「融接」に分類されます。電子ビームの原理は少し難しく聞こえるかもしれません。電子ビームにおける電子は、真空中で高電圧をかける陰極と陽極が存在し、その陰極をフィラメントで加熱する事で発生します。発生した電子を電磁コイルで収束、加速させて母材に照射する事で高温になります。この熱を利用して溶接するのが電子ビーム溶接です。

電子ビーム溶接の特徴としては、局所的にビームを照射するため、溶接部周囲に与える熱量が少なく熱による歪みが発生しにくいです。電子ビームのビームスポットは一般的に約0.2㎜程度となります。エネルギー密度はアークで得られるエネルギー密度の1000倍です。局所的に高エネルギーを照射し、溶接する事ができるのが電子ビーム溶接となります。

レーザー溶接

レーザー溶接も上記同様に「融接」に分類されます。レーザー溶接とはレーザー素子に光を当て、誘導放出現象により高エネルギー状態になったレーザー光の熱を利用した溶接方法です。

レーザー光は計測や通信、医療現場など様々な場面で活躍しています。そのレーザー光を金属を溶融させることができるレベルまで高めたものが溶接で使用されます。レーザー光は用途に合わせて出力をコントロールできるため、溶接を含む様々な用途で使用されます。

レーザー溶接の仕組みを簡単に解説します。まずはレーザー発振器が必要です。溶接ではCO2レーザーやYAGレーザーなどが良く用いられます。それから、レーザーが進む光路(光ファイバーやミラーなど)があり、集光装置で収束されて母材に照射される事になります。

もちろん、このレーザー溶接を行うための加工テーブルの駆動系統やシールドガスによる溶接部の酸化防止対策も必要になります。電子ビーム溶接と同様に、熱を掛ける範囲が小さいため歪みが発生し難いです。局所的に熱を加えるので加工速度も比較的早いです。レーザー光のコントロールにより、より繊細な加工も可能になります。

プラズマアーク溶接

プラズマアーク溶接も引き続き「融接」に分類されます。プラズマアーク溶接は非溶融電極式の溶接方法になります。プラズマアークはタングステンを電極として使用し、プラズマアーク熱で溶接を行う方法です。プラズマガス、シールドガス、冷却水が必要になります。水冷インサートチップにより、ウォ―ル効果とサーマルピンチ効果が得られることで、エネルギー密度の高いプラズマアークを発生させることができます。

類似の溶接方法であるTIG溶接と比較すると、アークの広がり方はかなり違います。プラズマアーク溶接は熱集中性が良いので高速で溶接することも可能です。熱による歪みも比較的抑える事ができます。その他の特徴は、電極の消耗がかなり少ないので長期間にわたり高品質な溶接を行う事ができます。ランニングコストは比較的安価となります。

スポット溶接

スポット溶接は「圧接」に分類される溶接方法です。スポット溶接は重ねた金属板を電極で挟み、圧力を加えながら一瞬で大電流を流す事で溶接を行います。挟み込んだ金属板が抵抗となり、大電流を流した際に大きな抵抗熱が発生します。この熱を利用して溶接を行う抵抗溶接の一種としてスポット溶接が存在します。

スポット溶接は薄い金属板を重ね合わせて接合する際に良く使用されます。代表例は自動車です。自動車はプレス加工にて成型した鋼板を接合していく事でボディーが組み立てられていきます。その際にスポット溶接が多く使用されています。スポット溶接はその特性上、他の溶接のように気密性を得ることはできません。あくまで板同士を接合するために用いられる溶接方法です。

自動車の場合、スポット溶接を行った箇所は直径数ミリ程度の圧痕が付いています。接合部には等間隔でこの圧痕が付いているはずです。局所的に溶接を行っていく方法なので鋼板への熱の影響はほとんどありません。

プロジェクション溶接

プロジェクション溶接は「圧接」に分類される溶接方法です。プロジェクション溶接はスポット溶接同様に抵抗発熱を利用して溶接を行う方法です。溶接を行いたい部分にあらかじめ突起を作り、そこが母材同士の接点であり、溶接を行う部分となります。大電流を流しながら圧力を加える事で、接点部が発熱・溶融し、接合する方法となります。

プロジェクション溶接は母材に圧力を加えながら電流を流すだけで行えるので、熟練した技術が必要になるアーク溶接などと違い、機械的な作業となります。自動化も比較的容易ですし、マニュアルがあれば誰が溶接しても仕上がりは美しいものとなるでしょう。

機械的に短時間で溶接を行えるため、加工コストも安く大量生産向きの溶接方法となります。ただし、溶接部が多くなれば大型の装置が必要になりますし、プロジェクション溶接を行う前提の設計・加工を行う必要があります。

シーム溶接

シーム溶接は「圧接」に分類される溶接方法です。スポット溶接、プロジェクション溶接同様に抵抗発熱を利用して溶接を行います。シーム溶接はローラー型の電極を使用します。母材(金属板)を重ね合わせ、溶接を行いたいところをローラー電極で挟み込み、電流を流す事で溶接を行います。

スポット溶接やプロジェクション溶接と違い、このシーム溶接は電極部がローラーとなっているため連続した溶接が行えます。直線、曲線ともに対応可能で、おもに製品のフランジ部を溶接・密閉するために多く使用されています。

設備費用は高いですが、プロジェクション溶接同様に機械が溶接を行ってくれるため技術者の技量に依存する事はありません。一般的に気密性の高い溶接は熟練した技術者による高度な技能が必要になるのですが、シーム溶接ではこれらを比較的容易に行う事ができます。

ろう付け

ろう付けは「ろう接」に分類される溶接方法です。ろう付けと聞くと、溶接というよりははんだ付けに近いイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、ろう付けは溶接の一種となります。

ろう付けは他の溶接方法と違い、母材を溶かす事なく溶接を行います。イメージとしては母材同士を接着させるような感じです。ろう材を溶かして母材の接合部に流し込み、ろう材が冷えて固まる事で溶接を行う事ができます。

ろう材は比較的低温(450℃以上)で溶融させることができるため、ガスバーナーで溶接する事が可能です。自宅で簡単な溶接を行う場合、ろう付けが費用も手間も掛からない一番簡単な方法となります。DIYで溶接が必要になった際にはろう付けにチャレンジしてみるのも良いかもしれませんね。

溶接に使う機器

一般的なアーク溶接機を使用する場合、準備しなければならないワイヤーや溶接棒について解説していきます。半自動溶接機の場合はワイヤーが必要になります。被覆アーク溶接の場合は被覆溶接棒が必要になります。今回はこの汎用性が高く、長年にわたり広く使用されている代表的なアーク溶接機に絞って解説していきます。

ワイヤー

溶接ワイヤーとは、アーク溶接機の中でも「自動溶接機」「半自動溶接機」に使われるものです。溶接ワイヤーを使用する溶接機は、このワイヤーが電極となります。ワイヤーと母材間でアークが発生し、アーク熱で溶けたワイヤーが溶加材となります。ワイヤーは自動・半自動溶接機において電極であり溶加材なのです。

溶接を行うたびに消耗するワイヤーを自動で供給してくれるため、溶加材が無くなるたびに作業を一旦止める、といった必要がありません。そのため効率良く溶接作業を行う事ができます。様々な溶接ワイヤーが存在しますが、大きく「ソリッドワイヤー」「フラックスワイヤー」の2種類に分けられるので、簡単に解説しておきます。

ソリッドワイヤー

ソリッドワイヤーは同質の材料で作られた純粋なワイヤーであり、日本では最も使用頻度の高いワイヤーだと言えるでしょう。半自動溶接以外にもロボット溶接などにも使用されています。汎用性が高く様々なシーンで活躍しており、価格も比較的安価です。このあと紹介するフラックスワイヤーと比較するとヒュームやスラグの発生が少ないメリットがあります。

フラックスワイヤー

フラックスワイヤーは、名前の通りフラックス入りの溶接ワイヤーであり「ガスシールドアーク溶接用」となります。フラックスワイヤーにも多くの種類がありますが、ワイヤーの使用目的に応じたフラックスの配合がされています。

基本的にはアークを安定させる役割や脱酸材、合金剤、スラグ形成剤など溶接を補助する様々な成分から成り立っています。ワイヤーの種類により含まれる原料や配合比率は違うので、目的に合わせてワイヤーを選択する事が大切です。

フラックスワイヤーの中でも「スラグ系」「メタル系」の2種類に分ける事ができます。スラグ系は溶接後、ビードの表面をスラグで覆うため、どんな姿勢で溶接しても、溶着速度に優れるため問題ありません。メタル系はスラグ形成剤をほとんど含みません。スラグやスパッタが発生せず、溶着速度も良いのですが下向き溶接向きのワイヤーとなります。

溶接棒

溶接棒は被覆アーク溶接で使用します。アーク溶接の方法では最初に実用化された方法であり、すべて手作業で行われます。溶接棒ホルダに溶接棒を挟み込んで使用するタイプです。工場であればどこでも一台はおいてあるのではないでしょうか。

溶接棒は金属の心材にフラックス(被覆剤)を塗布したものです。フラックスの役割は先ほどフラックスワイヤーで説明した通りです。被覆溶接棒にも様々な種類が存在し、溶接する鋼材の種類や目的に応じて使い分けられます。

溶接棒の区分記号の読み方について以下解説しておきます。

E4319

と記述されている場合、頭の「E」は電極(Electrode)の頭文字を意味します。次の「43」は、溶着金属の最小引張強さを表します。最後の「19」は、フラックスの種類を表し、今回の場合イルミナイト系のフラックスが使用してあるという意味になります。フラックスの種類により、どんな違いが生まれるのか理解しておくことが大切です。

溶接の資格の種類

溶接に関する資格は色々と存在するのですが、今回は代表的な溶接の資格である「アーク溶接作業者」と「ガス溶接技能者」について解説しておきます。未経験者がはじめて溶接作業を行う場合、最初に取るべき資格がこちらになります。

アーク溶接作業者

アーク溶接作業者は、放電現象を利用するアーク溶接を行うにあたり必要となる国家資格です。被覆アーク溶接やティグ溶接、半自動溶接機などが使えるようになります。国家資格と言っても特別難しい試験ではありません。アーク溶接はとても危険ですが、正しい知識と正しい取り扱い方法を知っていれば安全に作業を行う事ができます。

この資格はみなさんがアーク溶接を安全に行えるための土台となる知識を学ぶために必要となります。イメージ的には、落とすための試験、というよりは所定の「技能講習」を受講し、適性が認められれば資格を取得する事が可能です。

ですが簡単に受かる試験だからと甘くは見ないでください。正しい知識と取り扱い方法をしっかり学び、実施しなければあなたが危険なのです。火傷、もしくは感電して命を落とすかもしれない、そんな危険を避けるためにも「アーク溶接作業者」という資格取得を通して正しい取り扱い方法についてしっかりと学んで欲しいと思います。

ガス溶接技能者

ガス溶接技能者は、ガス溶接、ガス切断などの作業が行えるようになる資格です。本記事では電気を用いた溶接について詳しく解説してきましたが、アセチレンガスと酸素を使用するガス溶接も溶接方法の一つとなります。

アーク溶接を行うための材料の切り出しや破損部位の切断作業などが行えるため、アーク溶接とセットで取得しておきたい資格となります。自動車工場、鉄工所、建設現場など多彩な場面であなたも活躍できるようになる事でしょう。

アーク溶接作業者同様に資格の取得難易度は低く、講習の内容をしっかりと聞いていれば合格する事は容易です。ガスも取り扱いを誤れば爆発事故などを引き起こしかねません。アセチレンや酸素などの取り扱いやガス漏れの点検方法など、資格取得を通してしっかりと学んでおく必要があります。

まとめ

今回は「溶接の種類!アーク溶接など種類やワイヤーなど溶接機器/資格などを解説」といった内容で解説させて頂きました。
「溶接にはどんな種類があるんだろう。」「溶接をしたいけれど、どんな資格がいるんだろう。」こういった疑問は解決できたのではないでしょうか。

溶接と言えば、溶接棒を用いた被覆アーク溶接が真っ先に頭に浮かぶ方は多いと思います。しかし、実際は溶接には沢山の種類が存在し、小型の溶接機から大型の設備が必要なものまで様々です。工場のラインで自動運転している溶接機もあるでしょう。

本記事では、代表的な溶接の種類について簡単に解説させて頂きましたが、各溶接方法の特性やコスト、メリットデメリットなどを見極めたうえで使い分ける事が大切です。

アーク溶接やガス溶接を行う予定の方は資格の取得が必要になります。溶接は火傷や感電などの危険があります。資格取得を通し、基本的な知識をしっかりと身に着けておくことが安全に作業する上で欠かせません。

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