モリブデンの特徴とは?加工性や融点なども解説
皆さんはモリブデンを知っていますか?モリブデンはレアメタルの一種であり、私たちの生活を支える縁の下の力持ち的な存在です。表に出てくる金属ではありませんが、鉄には無い多くの特徴を持つ金属です。わたしたちの生活を陰ながら支えてくれていると言っても良いでしょう。
目次
モリブデンとは
モリブデンはレアメタルの一つで、鉄鋼用の添加剤としてよく使われている金属です。モリブデンを加えた金属は、硬度、耐衝撃性などが向上します。私たちが日ごろ使用する自動車、航空機、ビルの鉄骨などにモリブデンを添加した鋼材が使用されています。
モリブデンと聞くと、あまり馴染みのない方は多いと思いますが、私たちの社会基盤を支える縁の下の力持ち的な存在です。
なぜそう言えるのか、という部分なのですが、モリブデンは幅広く用いられ、鋼材の添加剤、石油や化学工場用の触媒、通信機器など様々です。その中でも鋼材の添加剤として用いられることが多く、モリブデンを含む特殊鋼は、私たちが普段利用している自動車や電車、航空機などの主要部品に使われています。
これらの主要部品と言えば、動力源であるエンジン部や車体、動力伝達部品などがありますが、かなり過酷な環境下で使われる金属である事は想像できると思います。
モリブデンは、金属に特殊な力を付与させ、このような過酷な環境下でも安定した性能を維持できるようにする力があります。「モリブデンって、なんだかすごいかも。もっと知りたい。」って思ったあなたの為に、引き続き詳しく解説していきます。
モリブデンの特徴とは
モリブデンという金属をイメージできない方が多いと思うので、まずはどんな金属で、どんな特徴があり、モリブデンを添加した鋼材にはどんなものがあるのか紹介します。
モリブデンの特徴を紹介しながら、わかりやすく解説していきますね。
モリブデンの見た目
モリブデンは銀白色の金属で、キラキラとした光沢があります。美しいと思ってしまう人もいるかもしれません。
加工後のモリブデンは光沢が落ち着き、アルミに近い見た目になります。
モリブデンの特徴
モリブデンには大きな特徴が3つあります。それは、「融点の高さ」「電気抵抗が大きい」「加工性が良い(高融点金属の中では)」といった特徴です。各項目の解説は後ほど行いますが、これらの大きな特徴を活かし、私たちの生活基盤を支えてくれています。
「融点の高さ」では、融点が高いことで通常高温とされる環境下であっても、安定した性能を維持する事ができるようになります。
わかりやすく言えば、大規模な火災が発生したとしても、簡単に建物が崩れることを防止してくれます。火災で鉄骨が簡単に折れてしまっては建築物の崩壊によって二次被害が発生する恐れもありますよね。建築物に使用される鋼材の中にはモリブデンが添加され、高温に強い特性を付与した鋼材もあるのです。
他には、電極として使用される事も多いです。融点の高さと、電気抵抗の高さを活かす活用方法だと言えますね。
モリブデンを添加した鋼材の特性
モリブデンは金属の添加剤として使用される事がほとんどです。鋼材にモリブデンを加える事で、高温下でも強度や硬度を向上させ、維持する事ができます。また、鋼材の靭性と呼ばれる粘り強さも高くなります。
せっかくなので、モリブデンを添加した代表的な金属である「クロムモリブデン鋼」について簡単に解説しておこうと思います。
鉄にクロムとモリブデンを添加した鋼材がクロムモリブデン鋼です。炭素0.1~0.5%、クロム0.9~1.2%、モリブデン0.15~0.45%の範囲で含まれるものとJISで決められています。
クロムモリブデン鋼は硬度、耐摩耗性、靭性に優れており、自動車や航空機の主要部品など、過酷な環境下で使用される鋼材です。それはすなわち、過酷な環境下でも安定した性能を発揮できる性能がクロムモリブデン鋼にはある、ということです。
モリブデンのみの添加でも鋼材の特性を変化させることは出来ますが、クロムとモリブデンを適量添加する事でさらに鋼材の特性を向上させることができます。
鋼材に添加する金属には様々な種類がありますが、モリブデンはその中の一つで、主に高温下での硬度・強度の向上と靭性の向上という重要な役割を果たすことを覚えておきましょう。
モリブデンの加工性や融点
モリブデンというレアメタルについて詳しく知るために、モリブデンの加工性や融点などについて数字を用いて紹介しようと思います。
- 融点が高い
- 沸点が高い
- 電気抵抗が大きい
- 加工性が良い
このような内容で解説し、最後にモリブデンの使用用途についても紹介しようと思います。
モリブデンの融点
モリブデンの融点は2620℃と非常に高いです。それでも金属の中で5番目に位置しますが、鉄の融点が1538℃であることを考慮すると、十分すぎるほど高温なのはわかって頂けると思います。
この特徴から熱膨張率が低く、高温で厳しい環境下でも、安定した性能(強度)を維持する事ができます。FR鋼(建築構造用耐火鋼材)などに欠かせない特徴となります。
モリブデンの沸点
モリブデンの沸点は4827℃と、これまた非常に高温です。ここまで高温に熱する事は無いと思うので、豆知識程度に知っておいてもらえれば良いと思います。しかし「沸点があるという事は、モリブデンも気体になるの?」そんな疑問も生まれそうなので少し豆知識を紹介します。
結論から言えば、モリブデンも気体になります。
水と同じように個体、液体、気体の3態があるということです。水はある程度熱する事で湯気が上がってきますよね?モリブデンも同じで、沸点まで熱する前から徐々に気体へ昇華していきます。水の場合は水蒸気となりますが、金属の場合はヒュームと呼ばれます。
身近な例としては、金属を溶接する際に発生する煙のようなものが溶接ヒュームであり、金属が気体になったものです。人が吸い込む事で塵肺になる恐れがあるので注意が必要です。
モリブデンの電気抵抗
モリブデンは53.4nΩ・m(20℃)という比較的大きな電気抵抗を持っています。
融点の高さと、電気抵抗の大きさから高温炉(セラミックスヒーターなど)のヒーター部や照明の電極などに使用される事があります。
モリブデンの加工
モリブデンは、高融点金属の中では比較的加工性の良い金属となります。複雑な形状に加工する事も可能です。しかし、一般的な金属から見れば加工性は劣ります。切削加工においてはSC材に比べ加工性が悪く、表面の仕上がりも悪いと言えます。
どんな加工方法を選択するかによっても変わってきますが、あくまで「高融点金属の中では加工性が良い」とされていることを覚えておきましょう。
モリブデンの用途
モリブデンは、単体で活躍できる場はそれほど多くはありません。モリブデンは鋼材の添加剤として、鋼材の特性を強化するために使用される場合が多いです。すでに紹介したように、モリブデンを添加した鋼材は高温下での強度、硬度の向上と、靭性が強化される事で知られています。
モリブデンを添加した鋼材は合金工具鋼、耐熱鋼材、高速度鋼など沢山の種類があります。このような特殊鋼は鉄には無い特殊な耐性を持たせるためにつくられた合金です。
モリブデンが添加される鋼材は、高温下で使用される部品、強度・精度が必要とされる部品、熱伝導率が求められる部品などに使用される事が多いです。もちろん、モリブデンのみではなく、クロムやニッケル、バナジウムなどを組み合わせ、適量添加する事でさらに特性を付与、変化させる事も可能になります。
モリブデンを添加した鋼材は、高温に強く強度が高いという特性を活かし、様々なところで活躍しています。
まとめ
今回は「モリブデンの特徴とは?加工性や融点なども解説」という内容で解説させて頂きました。
「モリブデンってどんな金属なの?」「モリブデンにはどんな特徴があるの?」このような疑問は解決できたのではないでしょうか。
モリブデンは、普段表に出る事はほとんどない金属です。しかし、鋼材の添加剤として様々なところで活躍していることはわかって頂けたと思います。
自動車や航空機のエンジン部など主要部で活躍している合金もあります。モリブデンを添加する事でそのような過酷な環境下でも安定した強度を保つことができる為、私たちは安心して移動手段として利用する事ができるわけですね。そういった意味で、モリブデンは私たちの社会基盤を支えてくれている金属の一つなのです。