【ハイマンガン鋼】摩耗に強く、磁性が無いハイマンガン鋼を紹介!

耐摩耗性に優れ、磁性がないという特徴を持つ、ハイマンガン鋼について、わかりやすく解説しています。特徴から価格、適用事例まで網羅的に紹介。この記事を読むことで、ハイマンガン鋼の特徴がわかり、摩耗の激しい箇所にどの鋼材が適切か判断できる様になります。

【ハイマンガン鋼】摩耗に強く、磁性が無いハイマンガン鋼を紹介!のイメージ

ハイマンガン鋼に関して、調べていますね?

リニアモーターカーの線路の素材等に使われる事例のニュースを聞いて、興味を持つ方も多いと思います。

新しい産業に採用される、ハイマンガン鋼がどのような特徴があるか、気になりますよね。

適切な鋼材選びが行えないと、鋼材加工品がすぐに消耗して、部品交換などのランニングコストが高くついてしまいます。

そこで、本記事ではハイマンガン鋼に関する特徴や注意点をまとめました。

この記事を読めば、ハイマンガン鋼の高い硬度を持ち、磁性が無いユニークな特徴がわかるようになります。

それでは、確認していきましょう。

ハイマンガン鋼とは

ハイマンガン鋼は、炭素鋼にマンガンを加えた合金鋼です。JIS規格として対応しているのは、JISG5131(高マンガン鋼鋳鋼品)です。別名として、発明者の名を取りハッドフィールド鋼と呼ばれることもあります。

ハイマンガン鋼は加工に高い技術を要する鋼材ですが、磁性が無いので、リニアモーターカーや精密機械等の利用に有効です。

耐摩耗鋼板として、鉱山機械や工作機械の摩擦の多い部分に対して利用されています。

硬くて磁性が無い!?ハイマンガン鋼にある3つの特徴

こちらでは、主に3つの性質特徴を詳しく確認していきます。

特徴は以下の3つです。

  • 衝撃を与えるほど硬くなる性質をもつ
  • 磁性が無いので磁石にくっつかない
  • 冷間加工による硬化が大きく耐摩耗性が高い

1つずつ、見ていきましょう。

2−1.衝撃を与えるほど硬くなる性質をもつ

ハイマンガン鋼は、衝撃を与えるほどに硬くなる性質を持ちます。

加工硬化性の強い鋼材として打撃を加えることで、普通鋼よりも高い硬度を得ることが可能なのです。鋼材が硬くなることで、耐摩耗が上がるので、摩耗の激しい箇所に利用する部品材料に適しているといえます。

2−2.磁性が無いので磁石にくっつかない

ハイマンガン鋼は、磁性が無いので磁石にくっつかない性質を持ちます。

特殊な用途として、磁石がくっついては困る箇所での部品材料に有効です。具体例として、産業技術であるリニアモーターカーの線路の外装部分に採用されています。デリケートで、電気が安定して流れることが必要な精密電子機械での利用も多いです。

磁性が無いことは、ハイマンガン鋼が普通鋼と違う大きな特徴の一つなので覚えておきましょう。

2−3.冷間加工による硬化が大きく耐摩耗性が高い

ハイマンガン鋼は冷間加工によって硬化が大きくなるため、耐摩耗性を高めることができます。

冷間加工とは、加工において常温もしくは材料の再結晶温度未満で行なう加工方法のことです。
反対に、加工に際して再結晶温度以上で行う加工方法のことを熱間加工といいます。ハイマンガン鋼を加工する際は、熱間加工よりも冷感加工が適していると覚えておきましょう。

これだけは気をつけて!ハイマンガン鋼の注意点

ここまで、ハイマンガン鋼の特徴を紹介しました。

ハイマンガン鋼は耐摩耗鋼材として優れた性能と磁性が無いユニークな特徴を持ちます。

一方、鋼材の中では加工が難しい部類とされているのです。ハイマンガン鋼の利用を検討する際は、知識として注意点を押さえておく必要があります。

以降で、ハイマンガン鋼を取り扱う際の注意点をまとめましたので、確認していきましょう。

3−1.加工が難しく、高い技術が必要

ハイマンガン鋼は加工の難しい鋼材なので、加工に際して高い技術力が必要です。不適切な加工を行うと本来引き出せる性能が十分に発揮できず、ひび割れなどの問題が起きかねません。

また、ハイマンガン鋼は非常に硬い素材のため、加工に利用する工具機械への負担も大きいです。

加工に際しては、高い技術力と加工実績のある鋼材メーカーに依頼しましょう。

3−2.切削や精密な穴あけなどの加工は避ける

ハイマンガン鋼を加工する際は、切削や精密な穴あけなどの加工は避ける必要があります。

元々加工が難しい製品ですが、穿孔加工などは特に難しく、熱割れなどの問題が生じるからです。

ハイマンガン鋼を部品材料に利用する際は、採用する加工方法が鋼材に適しているか専門性を持った技術者に確認する必要があります。

使用を検討する際は、確認すべき注意点として覚えておきましょう。

3−3.水靭処理による加工が必要

ハイマンガン鋼を加工する際は、水靭処理による加工が必要になります。なぜなら、ハイマンガン鋼は水靭処理を前提とした鋼材として設計されているから。水靭処理とは、加熱した鋼材を急速に冷却して、靭性を高める熱処理技法のことです。
ハイマンガン鋼を加工する際は、水靭処理が必要であると覚えておきましょう。

ハイマンガン鋼の価格

ハイマンガン鋼の価格に関しては、専門分野向け商品であるため、明確な価格が公開されていません。
参考として、リニアモーターの線路の素材の選定時には、ステンレス鋼よりは安価のため採用されたこと例があります。

購入を検討する際は、クマガイ特殊鋼株式会社に問い合わせてみましょう。

ハイマンガン鋼の取り扱い実績が豊富にあるので、購入後のことまで相談した上で購入することができます。

鋼板・鋼材の加工・専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

創業100年以上の歴史を持つ、特殊鋼材・一般鋼材の加工・販売を手がけるクマガイ特殊鋼株式会社です。中部地区で唯一、日本製鉄の指定特約店であることを活かし、新鋼種の開発や、お客さまのものづくりに最適な鋼板・鋼材をご提供いたします。

【事例紹介】ハイマンガン鋼は何に使われている?

ここまで、ハイマンガン鋼に関する、情報をまとめてきましたので、鋼材に対する理解が深まったかと思います。

では実際に、どのようなところでハイマンガン鋼が利用されているか、気になりますね?
用途としては、耐摩耗性と靭性が必要な部品箇所で、長期的に見た製造コストを抑えたい所でよく使われています。

工作機械の種類としては、粉砕や破砕等を行う機械に向いていると言えるでしょう。
以降で、ハイマンガン鋼の事例に関してご紹介します。

5−1.油圧ショベルのパケット爪

ハイマンガン鋼は、油圧ショベルのパケット爪の部分に使われています。油圧ショベルとは、土を掘り返したり、運んだりする工作現場で使われる機械。

パケット爪とは、アームの先端に取り付けられた、土をすくう工作用のカゴのことです。

土を掘り返す摩耗の激しい用途なので、ハイマンガン鋼が向いていると言えるでしょう。

5−2.インパクトクラッシャー用ライナー

ハイマンガン鋼は、インパクトクラッシャーのライナー部分に使われています。インパクトクラッシャーとは、原石などをより細かく砕くための破砕機のことです。

主に鉱山や砕石場等で利用されている工作機械になります。

ライナーは、インパクトクラッシャーに材料を運ぶための配管のことです。

硬い原石などを砕くため部品摩耗が大きい箇所なので、ハイマンガン鋼が有効になります。

5−3.ローラーミル用のブルリング

ハイマンガン鋼は、ローラーミルのブルリング部分に使われています。ローラーミルとは、装置の内部で回転するローラーとブルリングにより、鉱石や産業廃棄物を押しつぶす工作機械のことです。

ブルリングとは、ミル内部に固定されて、ローラーと連携して押しつぶすための部品箇所になります。

主に鉱山や砕石場の加工場で利用されている工作機械です。

鉱石などの硬い材料を押しつぶす摩耗の激しい箇所なので、ハイマンガン鋼が高い効果を発揮するでしょう。

まとめ

本記事では、ハイマンガン鋼について特徴や注意点、価格に関してまとめてきました。

耐摩耗鋼板として高い性能と、磁性が無いという普通鋼には無いユニークな特徴があります。ハイマンガン鋼(高マンガン鋼、ハドフィールド鋼)は、耐摩耗性に優れた鋼材です。

衝撃を与え、冷感加工を行うと硬くなる性質が特徴で、摩耗の激しい箇所の鋼材として適しています。

また、ステンレス鋼より安価に調達できるのもメリットの1つです。

加工には高い技術が必要な点に注意して、導入しましょう。

今後、読者のみなさんが利用する鋼材選びの際に参考としてください。