りん酸塩処理とは?用途や工程を解説

りん酸塩処理とは、化成処理の代表的な方法で、りん酸亜鉛などの溶液を使って、金属の表面に化学的に薄い皮膜を生成させることができる化成処理のことです。今回は、化成処理について、また、りん酸塩処理の種類や特徴、りん酸塩処理の工程や用途などについて紹介します。

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目次

  1. 1化成処理とは?
  2. 2りん酸塩処理とは?
  3. 3りん酸塩処理の種類
  4. 4りん酸塩処理の工程
  5. 5まとめ

化成処理とは?

化成処理とは、表面処理のひとつで、素材に化学反応で皮膜を作り、元の素材とは違った性質を与える処理のことをいいます。塗装の下地に使用されるリン酸亜鉛処理、アロジン、パルコート、フェルボンド、あるボンド、パルシートといった種類があります。

亜鉛めっき、カドミウムめっきを対象とした処理には、クロメート処理がありますが、クロメート処理では6価クロムを含むため、RoHS対策として6価クロムフリーのものが代替として用いられます。

現在の代替の主流となっているのが、3価クロム化成処理で、鉄を対象とした処理では、りん酸塩処理や黒染めがあります。

黒染めは、ガンブルーと呼ばれる100℃以上の熱濃アルカリで煮沸し、表面に安定した四酸化三鉄の皮膜を作る処理です。

 

りん酸塩処理とは?

りん酸塩処理とは、化成処理の代表的な方法で、りん酸鉄、りん酸亜鉛、りん酸マンガンなどのりん酸塩の溶液を使って、金属の表面に化学的にりん酸亜鉛などの、薄い皮膜を生成させる化成処理のことです。

主に鋼の表面処理として使われ、表面に不溶性のりん酸塩皮膜を作って表面の腐食を抑えるために行います。また、塗装前の鉄製品においても実施されます。

また、腐食を抑える表面保護効果や、塑性加工の時の金属石鹸系潤滑剤の下地処理としても用いられています。

その時にりん酸カルシウムが使われ、液温を制御したりん酸塩溶液を用いて、さらに化成処理時間を調整することで皮膜の性質を変化させます。

糖蜜にはりん酸が含まれていて、体積比10倍の水で希釈した液に2~3日漬けてから使用します。

工業的な用途としては、以前は道具や武器などの金属製品において、錆防止として使用されていました。しかし、近年では塗装下地として塗膜が剥離しにくく、塗膜に傷が付いても錆が増殖しないようにするためであり、自動車をはじめ、工業製品において一般的に広く採用されています。

塗装下地以外の目的では、金属の加工、鍛造加工、押出し加工などで、潤滑剤と併用することによって、塑性加工を容易に行う目的があります。

また、りん酸塩処理のことを、本格的に発展させたパーカー兄弟の名前をとって「パーカライジング」や「パーカー処理」と呼ぶこともあります。
 

りん酸塩処理の歴史

りん酸塩皮膜処理自体は、古代エジプトで行われていたことが分かっていますが、それは19世紀ピラミッドを発掘した時に、出土品から皮膜処理されて鉄片が発見されたことからでした。

1906年、そのことをヒントにしたイギリスで最初の特許を取得し、当時の方法は、処理液に2~3時間浸漬する方法で、工業的にはその時点ではまだ発展の余地がありました。

1915年にアメリカのバーカー兄弟がイギリスの特許使用権を取得し、パーカー・ラストプルーフ社を設立したことから、本格的に工業用として発展していきました。

当時の戦時需要や自動車産業に用いられ、パーカライジングの名称が広まりました。日本でも、パーカー社の技術が導入され、1928年に日本パーカレイジングが設立されています。
 

りん酸塩処理の用途

りん酸塩処理の用途は、油の吸着性が良いことから、表面の潤滑性を向上させることができます。また、黒染処理とは違い、塗装に劣らない防錆能力を持ち、軽度の加工バリを除去することが出来ます。

また、回転や摺動部の金属同士の接触を防止しますから、焼付きやかじりを防ぐこともできます。
 

りん酸塩処理の種類

りん酸塩処理は、りん酸亜鉛処理が有名ですが、その他りん酸カルシウム処理、りん酸鉄処理、りん酸マンガン処理といった種類があります。この項では、それらについて以下に解説します。

りん酸亜鉛処理

りん酸塩処理で最も多く使用されているのが、りん酸亜鉛処理であり、りん酸亜鉛処理の液の主な成分は、りん酸イオンと亜鉛イオンからなります。

熔解亜鉛めっきを行ったスチール製品の美観を高めるために用いられ、重厚感や高級感、自然な質感を求められる場合に適しています。

このりん酸亜鉛処理は経年変化で除々に濃淡が落ち着いてきて、周辺の景観と調和してくる特徴があります。

処理温度は、60℃以下のものが大半ですが、常温タイプのものもありますから、使いやすいという特徴があります。
 

りん酸カルシウム処理

りん酸塩処理のひとつであり、処理液の主な成分はりん酸イオン、亜鉛イオンとカルシウムイオンからなります。

皮膜の成分は、ショルツァイトとホパイトが主であり、りん酸亜鉛処理と比較すると耐熱温度が高く、高温で焼付ける塗装の下地に最適です。

また、りん酸カルシウム処理で適用できる素材は鉄鋼製品で、冷間鍛造(常温での鍛造)による潤滑皮膜としても用いられていますが、処理温度は80℃~90℃と高いのが欠点です。
 

りん酸鉄処理

りん酸塩処理のひとつで、処理液の主成分はりん酸イオンです。また、他のりん酸塩処理との違いは、非晶質の皮膜が作られるところです。

皮膜厚は非常に薄いことで知られ、皮膜の成分である鉄が必要であるため、適応素材は鉄鋼製品に限定されます。

また、塗装下地処理として塗膜の密着性、耐食性、防錆性を高めることを目的に利用されています。

りん酸亜鉛処理と比べると耐食性に劣りますが、無処理よりはかなり耐食性があり、塗装密着性も得ることができます。
 

りん酸マンガン処理

りん酸塩処理のひとつで、液の主な成分はりん酸イオンとマンガンイオンです。

皮膜重量は1~60g/㎡で、りん酸亜鉛処理よりは厚く、表面の粒子が粗いという特徴があります。

耐摩耗性に優れ、潤滑作用が大きいことから、主に耐摩耗皮膜や潤滑用皮膜として用いられています。

具体的には、ギアやピストンなどの自動車部品や油圧高圧摺動部品で用いられています。りん酸マンガン処理によって、機械仕上げ面の削り目を消せるため、回転摺動部分の部品同士の馴染みが良くなります。

適用素材は鉄鋼製品であり、80℃~90℃と処理温度はが高く、処理時間も5~30分と長いという欠点があります。
 

りん酸塩処理の工程

りん酸塩処理の標準的な工程は、以下の5つの工程も分けることができます。

①    アルカリ脱脂剤を用いた金属表面の洗浄
②    水によるすすぎ洗い
③    りん酸塩による処理
④    水によるすすぎ洗い
⑤    熱温風による乾燥

薬剤を使用するのは、①と③の工程で、処理効果を上げるために一般的には加温されますが、その処理時間は1分から数分程度、中には10分以上かけることもあります。

防錆が目的の場合、表面に防錆油を塗布し、塗装が目的の場合は、電着塗装や溶剤塗装が同一ラインで実施し、さらに必要に応じて、上塗り塗装を施します。

また、塑性加工が目的の場合は、ステアりん酸ナトリウムを主成分とする石鹸処理を乾燥前の工程として施します。
 

まとめ

今回は、りん酸塩処理ついてその種類や用途、工程や注意点などを紹介しました。
 

  • りん酸塩処理とは、化成処理の代表的な方法で、りん酸塩の溶液を使って、金属の表面に、化学的に薄い皮膜を生成させる化成処理のことです。
  • りん酸塩処理の用途は、油の吸着性が良いことから、表面の潤滑性を向上させることができ、塗装に劣らない防錆能力を持ち、軽度の加工バリを除去することです。
  • りん酸塩処理には、りん酸亜鉛処理、りん酸カルシウム処理、りん酸鉄処理、りん酸マンガン処理といった種類があります。
  • りん酸塩処理は、アルカリ脱脂剤を用いた金属表面の洗浄、水によるすすぎ洗い、りん酸塩による処理、水によるすすぎ洗い、熱温風による乾燥といった工程があります。

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