【S-TEN】硫酸露点腐食・塩酸露点腐食に強い鋼材を紹介!

硫酸露点腐食や塩酸露点腐食に強い、日本製鉄株式会社のS-TENという鋼材について、わかりやすく解説しています。S-TENの特徴から価格、適用事例まで網羅的に紹介。この記事を読むことで、耐腐食環境下での腐食に対して、最適な鋼材選びをすることが可能になります。

【S-TEN】硫酸露点腐食・塩酸露点腐食に強い鋼材を紹介!のイメージ

目次

  1. 1S-TENとは
  2. 2比較してわかった!S-TENの特徴
  3. 3S-TENの注意点
  4. 4S-TENの価格
  5. 5S-TENの適用事例
  6. 6まとめ

製品の基準に適合した鋼材は一体どれを選べば良いのか、検討中ですね?

近年、重要視される環境対策に対応した工場建設のために開発された、腐食に強い鋼材があります。

それがS-TEN(エステン)鋼です。

他の厚鋼板の鋼材と比べて、どのような特徴があるのか?価格はどの程度なのか?

そのような疑問にお応えするため、S-TENシリーズの特徴や価格を、他の鋼材と比較しながらわかりやすくご紹介します。

この記事を読んで、硫酸露点腐食や塩酸露点腐食に強い鋼材選びをしましょう!

S-TENとは

S-TENとは

S-TENとは、石油・重油火力発電設備等での、耐腐食環境下での腐食に対して優れた性能を発揮するために、日本製鉄株式会社より溶接構造用として開発された鋼材です。

30年以上に渡るロングセラーの製品で、火力発電・ゴミ焼却施設でNo.1の使用実績があるのです。

使用実績の多さから市場への供給量が多いので、工場建設が必要となる際に、容易に調達することが可能です。

S-TENは、その特徴からS-TEN1とS-TEN2という二つのシリーズに大きく分けられます。

以下で、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

1ー1.S-TEN1

S-TEN1は、S-TENシリーズのうち、耐硫酸露点腐食、耐塩酸露点腐食に対して有効な鋼材です。

鋼材の規格としては、JIS規格の溶接構造用圧延鋼材規格であるJISG3106のSM400に適合。

常温環境下での使用に適しています。

1ー2.S-TEN2

S-TEN2は、S-TENシリーズのうち、耐硫酸露点腐食に対して有効な鋼材です。

鋼材の規格としては、JIS規格の溶接構造用圧延鋼材(3106)規格であるJISG3106のSM490Aに適合。

S-TEN2は、S-TEN1が向かない、排煙設備等の高温環境下での使用に適しています。

S-TEN1と比べると、高温耐性の分、少し高価です。

比較してわかった!S-TENの特徴

比較してわかった!S-TENの特徴

S-TEN鋼は、普通鋼やステンレス鋼と比較すると以下の点に優れています。
 

比較対象 S-TENが優れている点
普通鋼 約6倍耐硫酸性能が高い。
約11倍耐塩酸露点腐食性能が高い。
強度、施工性、溶接性は同等の性能。
普通鋼と同等の扱い易さで、加工性が良い。
ステンレス鋼 約7倍耐硫酸性能が高い。
約4倍耐塩酸露点腐食性能が高い。
普及しているのでコストが安く、経済性が高い。

これらの優れた特徴により、普通鋼やステンレス鋼材では問題となる、工場設備の排気に含まれる、硫酸と塩酸による激しい腐食を防ぐことができるのです。

硫酸露点腐食が支配的な工場設備の箇所では、普通鋼やステンレス鋼を使用することができないため、S-TEN鋼の使用が適しています。

工場建設の際にステンレス鋼よりも安価に鋼材を調達したい場合には、S-TEN鋼の使用を検討しましょう。

S-TENの注意点

S-TENの注意点

ここまで、S-TEN鋼の特徴についてみてきました。

優れた性能を誇るS-TEN鋼ですが、一方で以下の点に注意する必要があります。

3ー1.サビが発生することがある

サビが発生することがある

S-TEN鋼は、サビが発生することがあります。 

高い腐食耐性により、露点腐食による腐食を抑制する特性をもつのがS-TENですが、完全に腐食の発生を防ぐことはできません。

なぜなら、低合金耐食鋼の鋼材であるからです。

腐食の進行もありますので、購入前に把握しておきましょう。

3ー2.腐食の絶対量が他の温度域より大きくなる領域がある

腐食の絶対量が他の温度域より大きくなる領域がある

S-TEN鋼は、60̊Cや70̊Cの温度では、腐食の絶対量が他の温度域より大きくなる領域があります。

また、S-TEN鋼は、他の鋼材と比べて硫酸露点腐食に高い抑制効果が特徴です。

しかし、一定の温度状況では効果を発揮できない場合があり、工場設備の温度状況によっては、腐食が進む場合がありますので、こまめに温度確認をするなど注意が必要でしょう。

3ー3.高温・低濃度の硫酸に対して腐食が大きくなることがある

高温・低濃度の硫酸に対して腐食が大きくなることがある

S-TEN鋼は、特性として気液平衡状態で生じる腐食よりも、高温・低濃度の硫酸に対して腐食が大きくなることがあります。

S-TEN鋼を使用する注意点として覚えておきましょう。

3ー4.弱酸性・中性液の腐食に対しては弱い

弱酸性・中性液の腐食に対しては弱い

S-TEN鋼は、弱酸性・中性液の腐食に対しては、効果を発揮できない場合があります。

普通鋼やステンレス鋼と比べて高い腐食耐性を目指して開発されたS-TEN鋼ですが、弱酸性・中性液の環境には適していません。

使用環境が弱酸性領域に当たる場合は他の鋼材も検討すると良いでしょう。

弱酸性領域(pH2~4)における耐食性試験結果
 

鋼種 腐食速度(mg/cm2/hr) 試験条件
ph ph2 ph3 ph4 試験温度:30̊C
試験片と溶液の相対速度:1.8m/sec
試験時間:72hr
S-TEN1 1.6 2.0 0.36
S-TEN2 2.8 2.2 0.38

上記の表から、以下の特徴が読み取れます。
 

  • 弱酸性領域の非常に薄い硫酸濃度の環境下では、S-TEN鋼よりステンレス鋼の方が耐食性に優れている。
  • 弱酸性領域のうち、pH3~4では、S-TEN鋼は普通鋼と比べて耐食性に大きな差が無い。

使用する環境が適切であるかどうかの参考にしてください。

S-TENの価格

S-TENの価格

S-TEN鋼の価格に関しては、専門分野向け商品であるため、明確な価格が公開されていません。

価格は製作所や鋼材問屋によりますが、基本的には以下の特徴があります。
 

  • 普通鋼よりも高価である。
  • ステンレス鋼よりも安価。

S-TEN1よりもS-TEN2の方が高温耐性の分、高価である。
 
参考商品 参考価格
S-TEN1製の溶接棒 10,000円程度
普通鋼製の溶接棒 2,000円程度

参考として、S-TEN1鋼と普通鋼の価格差は、長さ400mm、直径4mの溶接棒であれば、5倍ほどの価格差があります。

S-TENの適用事例

ここまでS-TEN鋼の特徴と注意点について述べてきました。

次に、S-TENシリーズは具体的にはどのような工場設備に適しているかについて紹介します。

5ー1.乾式集塵機

乾式集塵機

乾式集塵機とは、乾燥しているもの、表面に水分の無いものを吸引するための設備のことです。

溶解炉・処理機等の設備において発生する煤煙を集塵処理するために使用します。

S-TEN1とS-TEN2の両方が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
ケーシング 設備の囲いのことです。
ダクト 換気・排気などのために、空気の通り道となる導管のことです。
集塵板 排気中の煤や粉塵などの粒子を気体から分離する装置のことです。


上記の部品箇所で、腐食に強い鋼材を求めている場合は、S-TENの使用を検討してください。

5ー2.湿式集塵機

湿式集塵機

湿式集塵機とは、液体、濡れているもの、湿っているものを吸引するための設備のことです。

乾式集塵機と場所に合わせて使い分けて使用しましょう。

S-TEN1とS-TEN2の両方は、乾式集塵機と同じ箇所に適用できます。

5ー3.減温塔

減温塔

減温塔とは、排ガスに水を噴霧し、温度を150℃位まで急速に下げるための設備のことです。

高温の温度領域では、ダイオキシン類の再合成が進むので、これを防ぐため排ガスの温度を下げる目的で使用しましょう。

S-TEN1とS-TEN2の両方は、乾式集塵機と同じくケーシングとダクトの箇所に適用できます。

高温耐性の高いS-TEN2が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
灰掃き出し羽根 換気・排気などのために、空気の通り道となる導管のことです。

上記の、部品箇所でS-TENは適しています。

5ー4.空気予熱器

空気予熱器

空気予熱器とは、燃焼機器において、燃焼用空気を余熱する熱交換器のことです。

節炭器を出た燃焼ガスは高温で、熱量が多いため、その熱を回収し、ボイラー効率を高めることができるのです。

S-TEN1とS-TEN2の両方が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
ユングストローム型 回転式の設備です。
バスケットケース 再生式空気予熱器で一群の加熱エレメントが入ったケースのことです。
エレメント 再生式空気予熱器で伝熱がおこなわれる波状の板のことです。

常温環境下に適したS-TEN1が以下の箇所に適用できます。
 
部品箇所 部品の説明
チューブ型パイプ チューブ形状のパイプ部品のことです。

上記の部品箇所で、S-TENは有効です。

5ー5.煙道

煙道

煙道とは、煙や燃焼排ガスを、炉またはボイラーから煙突に導く通路のことです。

多くの工場で配置される基本的な設備ですね。

S-TEN1とS-TEN2の両方が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
ダクト 換気・排気などのために、空気の通り道となる導管のことです。
エキスパンション 流体の温度により、配管が熱膨張を起こす際の、膨張した長さを吸収させる為の部品のことです。

上記の、部品箇所でS-TENが使用できます。

5ー6.煙突

煙突

煙突とは、燃焼の過程で排出されるガスが持つ上昇気流を風による外乱から守り、燃焼を促進させる筒状の構造物のことです。

常温環境下に適したS-TEN1が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
内筒 煙突設備における内側の筒のことです。

上記の、部品箇所でS-TENは最適です。

5ー7.排煙脱硫装置

排煙脱硫装置

排煙脱硫装置とは、ボイラー排ガスから二酸化硫黄(SO2)を取り除き、浄化するための装置のことです。

実用的には湿式法が多く用いられるでしょう。

S-TEN1とS-TEN2の両方が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
排気筒 排気するための筒部品のことです。
アフターバーナー用ダクト アフターバーナーに対して、空気の通り道となる導管のことです。

上記の、部品箇所でS-TENは使えます。

5ー8.塩酸酸洗槽

塩酸酸洗槽

塩酸酸洗槽とは、金属製品を塩酸溶液に漬けることで、表面に付着している酸化物を洗浄・除去する化学洗浄処理設備のことです。

加工する金属に対して、素材の表面を綺麗にする事で、その後の作業を簡素化することが可能。

常温環境下に適したS-TEN1が以下の箇所に適用できます。
 

部品箇所 部品の説明
槽本体 塩酸酸洗槽の本体部品のことです。

上記の、部品箇所でS-TENは最適です。

まとめ

まとめ

S-TEN(エステン)鋼の特徴と価格についてご紹介しました。

S-TEN鋼は硫酸露点腐食や塩酸露点腐食に強い耐性がある鋼材です。

普通鋼やステンレス鋼では激しく腐食してしまう工場設備において、S-TEN鋼を採用することで腐食の問題を解決できるでしょう。

S-TEN鋼は高い耐腐食性能を持ちながらも、普通鋼と同等の強度・施工性・溶接性を併せ持つ扱いやすい鋼材です。

ステンレス鋼と比較した場合は、加工しやすく安価に調達できるメリットがあります。

工場建設において、酸露点腐食や硫酸露点腐食に強い鋼材を検討している方にオススメな鋼材です。

本記事の内容を、工場設備に適した鋼材選びの参考としてどうぞご活用ください。

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