3価クロム化成処理とは?特徴やメリット

3価クロム化成処理とは、6価クロムを含まない3価クロムの化成皮膜で、6価クロメート皮膜の代替技術として注目されています。また、現在では亜鉛めっきには、3価クロム化成処理が主流になっています。今回は、3価クロム化成処理の特徴やメリットなどを紹介します。

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化成処理とは?

化成処理とは、表面処理のひとつで、特に金属の表面を処理剤によって化学反応を起こさせ、耐食性や塗料との親和性など、元の素材とは違った性質を与えることをいいます。

電気化学による酸化や硫化、化学製品による酸化、還元、アルミニウム、クロム、亜鉛などの酸化物やリン酸塩によって皮膜を形成させます。

たとえば、亜鉛めっき、カドミウムめっきによる処理では、クロメート処理があります。

亜鉛めっきは、自ら熔解して水酸化亜鉛となることで鉄の腐食を防止するという特徴があります。亜鉛めっきは、後処理としてクロメート処理を施し、更に亜鉛の耐食性を高めています。

 

3価クロム化成処理とは?

従来、クロメート皮膜は亜鉛めっきの方法として一般的に用いられてきました。しかし、近年でクロメート皮膜の中に含まれている6価クロムの毒性が問題視され、ヨーロッパではその使用が制限されています。

2006年7月のRoHSやWEEE指令の施工によって、クロメート皮膜の代替えとして、6価クロムを含まない3価クロムの化成皮膜が広く用いられるようになりました。

3価クロム化成処理は、優れた耐食性を持っていて、塗装の下地としても使用されています。現在では亜鉛めっきには、3価クロム化成処理を施すのが一般的になっています。

また、従来のクロメート処理の難点だった加熱時の耐食性の低下において、3価クロム化成処理の方が耐食性に優れています。

ただ、その品質は処理条件に大きく依存していて、ロットによるばらつきも大きく、従来のクロメート皮膜よりも更に厳しい工程管理を必要とします。
 

3価クロム化成処理の特徴

3価クロム化成処理は、有害な6価クロムを含まずに、クロメート処理と同等か、それ以上の耐食性を得ることができます。

また、従来のクロメート処理のデメリットだった、加熱したときの耐食性の低下を抑えることができます。

3価クロム化成処理には、無色、有色、黒色の3つの色があります。また、3価クロム化成処理には薄膜型と厚膜型に分けられます。

現在、3価クロム化成処理は、クロメートのような厚い皮膜を作ることができず、緑色は出せません。そして、3価クロム化成処理の色調については、各自動車メーカーではっきりした規定がなく、透明または銀白色と黒色の3種類に分かれます。
 

3価クロム化成処理のメリット

3価クロム化成処理には、従来のクロメート処理と比較して、電気抵抗、耐食性、摩擦係数などでメリットがありますが、それぞれについて解説します。

電気抵抗

3価クロム化成処理の電気抵抗を測定した結果、3価クロム化成処理は無色、有色、黒色のいずれも電導性が良いことが分かっています。

耐食性

クロメート皮膜は、60℃以上に加熱すると、脱水や収縮が過剰に進み、皮膜全面にクラックが発生して、耐食性が著しく低下します。

しかし、3価クロム化成処理では、200℃以上の高温でもクラックの発生が起こりにくく、耐食性の低下が少ないというメリットがあります。むしろ高温で乾燥したほうが、早く皮膜硬化して耐食性が向上します。

これは、クロメート皮膜と比べて、含水量が少なく皮膜の厚さも薄いためだと考えられます。
 

摩擦係数

摩擦係数は、めっき浴の種類によって異なり、クロメートと比較すると、3価クロム化成処理の方がクロメートよりもやや高くなります。

3価クロム化成処理の用途

3価クロム化成処理の用途は、亜鉛めっきの用途と同じで、自動車部品、建築用品、事務機、電気機器部品、文具など幅広い分野で用いられ、また鉄鋼全般において用いられています。

無色クロメートは、あまり耐食性を要求しない部品で使われていて、一般的にクロメート処理や3価クロム化成処理といえば、有色クロメートや有色3価クロム化成処理のことだといっていいほど、最も多く使用されています。

 

3価クロム化成処理の注意点

3価クロム化成処理では、前加工において、強い油汚れや錆などが付着している場合は、予備脱脂(素材の表面の油分を取り除く)や、酸洗い(硫酸や塩酸といった強酸に漬け込む)を実施しなければなりません。

めっきした後に曲げ加工などを行う場合、めっき割れを起こすことがあります。また、めっきした後に塗装を行う場合、接着剤や塗料との相性がありますから注意が必要です。
 

まとめ

今回は、3価クロム化成処理について、その特徴やメリット、用途や注意点などを紹介しました。
 

  • 化成処理とは、表面処理のひとつで、特に金属の表面を処理剤によって化学反応を起こさせ、元の素材とは違った性質を与えることをいいます。
  • 3価クロム化成処理とは、クロメート皮膜の代替えとして、優れた耐食性を持っていて、塗装の下地としても使用されています。
  • 3価クロム化成処理の特徴として、有害な6価クロムを含まずに、従来のクロメート処理と同じか、それ以上の耐食性を得ることができます。
  • 3価クロム化成処理は、クロメートと比較して、電気抵抗、耐食性、摩擦係数などでメリットがあります。
  • 3価クロム化成処理の用途は、鉄鋼全般、自動車部品、建築用品、事務機、など幅広い分野で用いられています。