真鍮とは?特徴/銅との違い/加工/手入れなどを解説
真鍮ってどんな金属?真鍮のお手入れの方法はどうすればいいの?このような疑問を解決します。真鍮とは、銅と亜鉛の合金です。その特徴を知る事は、加工する立場の方、使用する立場の方にも役に立つはずです。加工時の注意点やお手入れの方法も詳しく知ることができます。
目次
真鍮とは?特徴や加工
黄金色に輝く美しい金属である真鍮。真鍮の身近な使用例は、金管楽器やアクセサリー、仏具などがあり、みなさんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。しかし「真鍮ってこんな金属ですよ。」と説明できる方は少ないと思います。
ここでは、真鍮がどんな金属で、どんな加工をされて私たちのもとに来るのか。真鍮の正しいお手入れの方法はどうすればいいのか。そんな疑問を解決しながら、真鍮について学んでいきましょう。
真鍮とは
真鍮(しんちゅう)とは銅と亜鉛からつくられる合金の事で、黄銅(こうどう、おうどう)とも呼ばれる事があります。
真鍮は銅と亜鉛の割合によっていくつかの種類に分かれます。一般的には亜鉛が20%以上のものを真鍮と言い、亜鉛の割合が20%以下の場合はかなり銅に近い真鍮となり、独特の黄金色の光沢はほぼありません。
私たちがよく目にする真鍮は、「七三黄銅」「六四黄銅」と呼ばれる、銅60~70%、亜鉛30~40%くらいの割合のものになり、美しい光沢と展延性が高くなります。(展延性とは、柔軟に形状を変化させることができる性質であり、この特性を利用して金属雑貨や工業部品などにも使われています。)
真鍮の特徴
真鍮という合金にはどんな特徴があるのでしょうか。特徴を知る事で、真鍮がどんなところで活躍できる金属なのか考えるヒントにもなります。代表的な特徴を4つ紹介していきます。
電気伝導性が高い
真鍮は電気伝導率が銀と同等に高いです。数字で言うと、銀を100とするなら97以上になります。
この特徴を活かした活躍の場は、コンセントやコネクターなどの接点部です。あなたの家庭にも使われているはずですよ。
展延性が高い
先ほども少し触れた内容ですが、展延性が高い為、柔軟に形状を変える事ができます。薄く広く伸ばしたり、引っ張って細く伸ばす事もできます。真鍮の代表的な特徴の一つです。
熱間鍛造性が高い
真鍮は熱間鍛造性が高い為、加熱する事で複雑な形状に加工する事が容易にできます。真鍮製の工業部品の中には複雑な形状のものも沢山あります。みなさんの身近な例で言えば、ガスコンロのバーナー部分が良い例となります。
切削加工性が良い
真鍮には鉛や鉄などの成分が含まれている為、被削性が高いです。高い被削性を活かし、精密加工を施す事も可能です。精密加工された真鍮は、時計や工業部品、ボルト・ナットなど精密部品として活躍します。
真鍮の歴史
真鍮は紀元前1000年頃から用いられ始めたと言われています。
古代ローマ帝国での貨幣として使われていたそうです。金のような真鍮の美しい輝きを活かし、メッキとしても活躍していたそうです。有名な話では、アルキメデスが見破ったとされる「偽の金の王冠」も金の重厚感を鉛で、金の美しさを真鍮のメッキで演出していたものです。
このように昔から各国で真鍮は使われてきましたが、日本の真鍮の歴史はまだ謎に包まれています。しかし、京都市中京区で江戸時代前期に使われていたとみられる真鍮の工房跡が発見されました。日本の真鍮の歴史が少しずつ見えてくるかもしれません。
真鍮の加工方法
真鍮は被削性が高い為、他の金属同様に一般的な加工は行えます。
- 切断加工
- 曲げ加工
- 溶接加工
- 切削加工
ただし、真鍮は銅材なので、加工時に他の金属には無い注意点や特徴があります。まず、熱伝導率が高いため、融合不良、またはスラグの巻き込みなどが発生しやすく難易度が上がります。切削加工においても、銅の融点の低さ、展延性の高さからバリが発生しやすいです。
通常の鋼材に比べ、熱伝導の高さ、材質の柔らかさが問題となる場合が多いので、銅加工は熟練した技術者に依頼するのが良いと思います。
真鍮のお手入れ方法
美しく黄金色に輝く真鍮。しかし、長年使用していると本来の輝きが失われてしまいます。真鍮は水分に弱く、空気中では徐々に表面が酸化し黒ずんでしまうのです。しかし、日頃から簡単なお手入れを行う事で、真鍮の美しさを取り戻し、輝きを保つ事も可能になります。
真鍮の輝きを保つ方法
- 湿気が強い場所に置かない。
- 素手で極力触れない。
- 長期間使用しない場合は、布でくるみ袋に入れて管理する。
基本的に水気に弱いので、気をつけるポイントはこの通りです。手から出る汗も、真鍮の黒ずみを加速させる原因になります。手で触った後は乾いた布で拭くなど、ちょっとした気遣いが真鍮の輝きを長く持続させるコツになります。
真鍮の輝きを取り戻す方法
- 専用のクリームで磨く。
- お酢(レモンやクエン酸などでも可)に2~3分程度漬ける。
- 重曹を水でペースト状にし、布で磨く。
このようなお手入れの方法があります。自宅であるもので輝きを取り戻す事ができるのでチャレンジしてみると良いでしょう。ただし、お酢に漬ける場合は長時間漬け過ぎると変色する恐れがあるので、最大でも5分程度にとどめておきましょう。しっかり水洗いをして、乾いた布で拭きとる事もお忘れないように注意してくださいね。
真鍮と銅やメッキとの違い
ここまで真鍮について詳しく解説してきました。ここからは真鍮と銅の違いや真鍮とメッキとの違いについて解説します。違いを知る事で、真鍮製の製品を購入する際に役に立つかもしれません。
真鍮と銅の違い
真鍮と銅の違いは、純物質なのか合金なのかという違いです。銅は純物質であり、電気・熱の伝導率の高さと素材の柔らかさから、私たちの生活を支える電化製品などに多く使われています。
一方真鍮は合金です。銅に亜鉛を加える事で銅の硬さを変化させることができ、多く添加されているほど硬度が高くなります。真鍮独特の黄金色の輝きを活かし、金管楽器や金属雑貨、給水管などに使用されます。どちらも銅材としての性質は大きく変わりませんが、活躍の場に違いがあります。
真鍮とメッキとの違い
真鍮製のものは、中身も表面も真鍮で作られたものです。しかし、メッキ製品は、同じ見た目でも中身は鉄など安価な材料で形を作り、上から別の素材で薄く覆ったものになります。
メッキの例としてはトタンやブリキがあります。鉄で土台を作り、亜鉛やスズで表面を覆っています。鉄単体では錆びやすいですが、メッキをすることで弱点をカバーし、見た目も美しく仕上げる事ができるようになります。
真鍮のみで作られた製品も良いですが、安価な材料にメッキという鎧をまとう事で、性能や外観を向上させるメッキも素晴らしい技術です。
まとめ
今回は「真鍮とは?特徴/銅との違い/加工/手入れなどを解説」という内容で解説しました。
「真鍮ってどんな金属なの?」「真鍮のお手入れはどうすればいいの?」このような疑問は解決できたのではないでしょうか。
真鍮は、私たちが思っている以上に身近にあります。この記事で真鍮について知る事で、「こんなところにも真鍮が使われているんだ。」といった新たな発見があるかもしれませんよ。金属雑貨やアクセサリーを選ぶ際にも、楽しみ方が広がりますね。
正しいお手入れを行って、真鍮の美しさや魅力を長く楽しんでください。