定盤は自作できる?種類やメンテナンス方法を解説

定盤は英語で「surface plate」と呼びます。機械加工において定盤は基準面という大切な役割を果たします。しかし、DIYや簡易的な定盤でよい場合は低コストで工具不使用で自作する事もできます。本記事では自作方法やメンテナンス方法についても解説します。

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定盤とは?用途や種類

定盤とは、平面の基準となる台の事です。主に機械の加工や組み立て、検査、ケガキなどで使用します。用途によって大小様々ですが、平面精度は高く仕上げられています。平面の基準となるのが定盤なので、定盤の平面精度に問題があると、その後の工程に大きな問題が生じます。そのため、定盤は剛性の高い素材を用いて制作され、内部応力の除去などを行っています。

定盤は、機械加工や機械据付の土台となる重要な役割を果たす事を覚えておきましょう。なんとなくでも「定盤は平面の基準になるから大切なんだな。」と思っていただければ良いと思います。その重要な役割を果たす定盤について次項より詳しく解説していきます。興味があればご一読ください。

定盤とは英語で

定盤とは「じょうばん」と呼び、英語では「surface plate」と言います。surfaceとは表面、水面、外見といった意味合いで使われる英語です。plateは金属の板や皿など板状のものを指す場合に使う英語ですね。

定盤の用途

定盤の主な使用用途を紹介します。平面精度の高い定盤があることで、精密部品の組み立てや加工が可能になります。精密部品は0.01mm単位の仕事をしなければならない場合が多く、その基準とするために定盤が使用されます。

簡単な例としては、二つの部品を精密に固定したい場合、定盤の平面を基準として固定する事で高精度な組み立てを行う事が可能になります。組み立てや加工だけでなく、メンテナンスや検査の際にも定盤は使用されます。製品の寸法検査を行う場合に大切になるのは、どこを基準として寸法を測定するのかです。

多くの場合、定盤を基準として測定を行います。定盤に製品を固定し、3次元測定器やハイトゲージなどを使用します。また、製品の歪みを確認する際、定盤を使用する事で簡単に確認できます。平面精度の高い定盤の上で製品ががたつくようなら、製品の平面精度は悪い、となるわけですね。

このように、定盤は精密な機械加工において欠かせない基準となります。

定盤の種類

定盤は鉄から作られている、と思っていませんか?実は鉄だけでなく、他の素材から作られている場合もあります。各素材別に特徴を紹介します。

鋳鉄の定盤

もっともよく使用されているのが鋳鉄製の定盤です。高い平面精度を確保するために、焼なましで内部応力を除去したのち、表面を精密に仕上げてあります。鉄製という事でマグネット治具を用いる事ができるのも魅力の一つです。

しかし、定期的なメンテナンスは必要です。メンテナンスを怠ると錆びる場合があります。また、使用時に発生した凹みやカエリなどで基準面として機能できなくなる場合があるからです。その際は、平面研磨を行うなど、メンテナンスが必要になります。

石の定盤

石から作られた定盤は硬く、精密です。表面の硬さは鋳鉄製に比べ2倍以上だと言われています。石定盤の良い点はメンテナンスがほぼ不要な点です。鋳鉄では錆が発生する恐れがありますが、耐食性の高い石製では心配ありません。凹みや傷からくる平面精度の悪化もよっぽどの場合を除きありませんので、最低限のメンテナンスで長期間安心して使用する事が可能です。

セラミックの定盤

セラミック製の定盤も石製と同じく表面硬度が高いです。そのため、摺動を伴う作業を安心して行う事ができます。その際に細かなクズが発生しにくいので、クリーンルーム内で定盤を使用する際にセラミック製が使われます。表面硬度が高いため、ある一定以上の衝撃には弱いです。凹むというよりは、欠けや割れに注意する必要があります。

ガラスの定盤

定盤の中にはガラス製のものもあります。機械加工の現場では見かける事はありませんが、ガラス板は製造過程上、平面度が高く仕上がります。他の素材と比較すると安価で購入する事が可能な点も魅力です。「DIYで定盤を自作したい。」といった思いがある方はガラス板から定盤を自作するのが一番簡単で手間が掛からないのではないでしょうか。簡易定盤を自作したい方向けに、記事後半では定盤の自作方法を紹介しています。

定盤の使用方法

ここでは定盤の使用方法について簡単に解説しておきます。想定する場面はハイトゲージを使用し、製品の寸法を測定する方法となります。

①定盤の状態を確認する

測定前に定盤の状態を確認します。定盤の上にクズが無いか、定盤に凹みや盛り上がりが無いか、精度は問題ないか、このようなことを確認します。定盤の平面精度を確認する際はてこ式ダイヤルゲージを使用すると良いでしょう。ダイヤルの振れ幅で精度を確認する事が可能です。

②ハイトゲージのゼロ点合わせ

ハイトゲージの底面、測定面の状態を確認し、問題が無ければ定盤上にハイトゲージを乗せてゼロ点を合わせます。

③製品高さの測定

ハイトゲージの測定面を製品の測定したい部分にあて、高さを測定します。ハイトゲージの読み方はノギスと同様ですが、デジタル式が主流なので問題ないでしょう。

定盤の自作方法

実際の機械加工の現場で簡易的な定盤が欲しいと思ったら、その辺の廃材から簡単に作る事ができるでしょう。フライス盤である程度形を整えたら、平面研磨で表面を仕上げてやれば簡易定盤の出来上がりです。日頃から現場で働く人にはこれができるでしょう。今回の定盤の自作方法は「家で簡単に作れる」という内容で解説します。なので工作機械を使用せずに、定盤を作成する方法をお伝えします。

まず、定盤の材質はガラスを使用します。ガラスで定盤を作るメリットは以下の通りです。

  • 軽くて持ち運びがしやすい。
  • 安価。
  • ガラス自体の平面精度が高い。
  • 機械加工が必要ない。

このような感じです。

手順はとっても簡単です。まずはガラス板を購入します。サイズはどんな用途で使用するのかにもよりますが、家庭で使用する事を考えると200×300のサイズで十分過ぎる程ではないでしょうか。ガラス板の厚みは12mm程度のものを選びましょう。薄すぎるとすぐに割れてしまう可能性があります。

ガラス板自体は4000円もあればおつりが出るくらいではないでしょうか。ガラス板購入時に端面の加工が指定できる場合は「研磨、面取り」を指定しておくことで、ガラスの端面で手を切る心配は無くなります。

ガラス板が届いたら、そのままでは扱いにくいので、足を付けましょう。100円ショップやホームセンターで両面テープで張り付けるタイプの足を4つ購入し取り付けましょう。足の材質はなんでも良いのですが、ガラスの定盤なので、ゴム製のようにクッション性のある材質が良いのではないかと考えています。迷った場合はゴム製を選びましょう。

たったこれだけで完成です。ガラスの端面処理を指定しておけば、工具や機械を一つも使うことなく定盤を自作する事ができます。ガラス製なのでメンテナンスも簡単ですね。興味がある方はDIYで活かしてみてくださいね。

定盤のメンテナンス方法

定盤の一般的なメンテナンス方法を紹介します。定期的なメンテナンスが欠かせないのは鋳鉄製の定盤です。鋳鉄製の定盤のメンテナンス方法と石製のメンテナンス方法を分けて紹介しておきますね。

鋳鉄製定盤のメンテナンス方法

日頃のメンテナンスは、定盤上をキレイな状態を保ち、錆止めを行うだけで良いです。必要に応じてベンジン、シンナーなどの油性の溶剤を使用すると良いでしょう。

定盤に凹みや盛り上がりが発生した場合は、ヤスリや油砥石で盛り上がりを除去してください。ある程度除去できたら、さらに目の細かい油砥石を使用して再度磨いてください。凹みをもとに戻す事は出来ませんが、盛り上がりを除去する事で、基準面として機能する事は可能になります。

石製定盤のメンテナンス方法

石製定盤のメンテナンスも上記同様に日頃から清潔な状態を保つよう心掛けてください。日頃の手入れはアルコールで拭くといったメンテナンスで十分だと思います。(鋳鉄製は水と親和性のあるアルコールの使用は控えてください。)石定盤専用のクリーナーも存在しますが、よほど汚れが気になるようであれば、使用を検討してみても良いかもしれませんね。

セラミック製やガラス製の定盤もこちらにあてはまります。日頃行うメンテナンスは清潔に保つ事で十分です。場合によっては柔らかい厚手の布を掛けて保管しておくと、もしもの時の割れ防止に繋がるかもしれませんね。

まとめ

今回は「定盤は自作できる?種類やメンテナンス方法を解説」といった内容で解説しました。

「定盤ってどんな使い方するのかな。」「定盤は自作できるのかな。」といった疑問は解決したのではないでしょうか。

ちょっとした豆知識で定盤は英語でsurface plateと呼ぶ、といった事から解説しました。表面、水面、外見といった意味で使われるこの英語の意味通り、水面のように平面度が高く仕上げられた板だという事が分かったと思います。英語で覚えておくと、思わぬところで意味が繋がる事もあるので、楽しいですよね。

それから、あらゆる機械加工の現場で必要になる定盤ですが、自作する事が可能だと解説しました。DIYや簡易的な定盤が必要な場合はガラス板を購入する事で、まったく工具を使う事なく自作する事ができます。

定盤のメンテナンスは神経質になる必要はありません。日頃は清潔な状態を保つだけで十分です。鋳鉄製は錆や盛り上がりに注意する必要があるので、油砥石で磨く、油性溶剤で磨く、といったメンテナンスは織り交ぜていくと良いと思います。