ロストワックス鋳造について分かりやすく解説!【5つの利点と欠点】

ロストワックス鋳造とは、ワックスで作った原型をベースに器物を作る工法です。一般的な鋳造工法より複雑で寸法精度の高い形状を作れます。この記事は、ロストワックス鋳造の方法や特徴について解説しています。記事を参考に最適な鋳造方法を選択して精度の高い器物を製造しましょう。

ロストワックス鋳造について分かりやすく解説!【5つの利点と欠点】のイメージ

ロストワックス鋳造についてお調べですね?

ロストワックス鋳造とは、ワックスで作った原型をベースに鋳物を作る工法です。

一般的な鋳造工法よりも、複雑で寸法精度の高い形状を作れるため精密鋳造とも言われます。

精密な鋳造を簡単に作れる一方で、簡易制作なので大量制作に転用できないというデメリットもあるのです。

そこで今回の記事では、ロストワックス鋳造の方法や特徴、必要な費用について解説しています。

記事を参考に、最適な鋳造方法を選択して精度の高い器物を製造しましょう。

ロストワックス鋳造とは

ロストワックス鋳造とは、ワックス(wax)を失う (lost) という性質を持った鋳造方法です。

ロウで原型を作り、周りを鋳砂や石膏で覆い固めた後、加熱をして中のロウを溶かし出して除去することでできる空洞に溶かした金属を流し込むと、原型と同じ形の鋳物が完成します。

あらゆる材料で精度の高い鋳造を実現

ロストワックス鋳造は、あらゆる材料で精度の高い鋳造を実現します。

使う金属素材は特殊鋼、ステンレス、銅合金、アルミ合金と自由に選択できるのです。

他の鋳造工法では、耐火度が低い結合材を用いるため、高融点の材料を鋳造できないという制限があります。

しかし、ロストワックス鋳造では使い捨てのセラミック型を使うので高融点の金属も鋳造可能です。

また、金型に対して殻のように型を作るので、三次元的な曲面を有する複雑な形状の鋳造も高い精度で鋳造できます。

ロストワックス鋳造の流れ【技術者の腕により不良品率が変動】

ここまで、ロストワックス鋳造の概要について紹介しました。

ここからはロストワックス鋳造の流れを8つの手順で紹介します。

手順1:金型にワックスを流し込む

制作物の原型をワックスで作るため金型にワックスを流し込みます。

手順2:ワックスツリーの組み立て

原型ができたら、ワックスツリーの組み立てをします。

湯道と呼ばれる金属が流れる通路に、原型を複数つなぎ合わせて型を作るのです。

湯道につながれた原型の形が木のような形をしているので、ワックスツリーと呼ばれています。

形状によって、1つのツリーで作られる数量は変わるので事前に確認しましょう。

手順3:セラミックコーティング

ワックスツリーをセラミックコーティングします。

セラミックで周りをコーディングして金型にするのです。

コーティングを5、6回繰り返して厚みをもたせた鋳型を作ります。

また、施工の際の室温・湿度管理が重要です。

手順4:ワックスを溶かす

続いて、ワックスを溶かして排出します。

鋳型を高圧の蒸気で熱して、ワックスを溶かすのです。

溶けたワックスを排出して鋳型に空洞をつくります。

ワックスが溶け出した耐火材が製品の鋳型になるのです。

手順5:焼成して固める

空洞を作ったら焼成して型を固めます。

焼成炉という窯でセラミックを加熱処理して、粒子を接着し硬化させるのです。

焼成は、鋳込み時の鋳型の割れ防止や湯回りを良くする効果があります。

手順6:溶融金属を流し込む

硬化させた金型に溶融金属を流し込みます。

溶融金属に不純物が混じると器物が設計通りに完成しません。

なので、鋳込み前に鋳造炉から不純物を取り除いた状態であることを確認してから鋳造しましょう。

手順7:型バラしをし取り出す

金属が冷えて固まったら、型をバラして部品を取り出します。

セラミックの型を割って金属を取り出してください。

手順8:検査

取り出した製品にキズや歪みがないか検査・修正します。

問題がなければ、完成です。

ロストワックス鋳造の利点と欠点

ロストワックス鋳造の利点と欠点を紹介します。

ロストワックス鋳造は精度が高く素材の汎用性も高い一方で、コスト面での欠点もあるのです。

利点と欠点について、見ていきましょう。

ロストワックス鋳造の利点

ロストワックス鋳造の利点は2点あります。

  • 寸法精度の高さ
  • 汎用性の高さ

以下で、詳細についてご紹介します。

寸法精度が高い

ロストワックス鋳造は、寸法精度が高いのが利点です。

通常の鋳造では、複雑な形の成形には合わせ型を用います。すると、合わせ面でどうしても誤差が生じて精度が下がるのです。

ロストワックス鋳造は一体鋳型なので合わせによる誤差は生じず、高い寸法精度を達成できます。

なので、高い寸法精度が求められる機械部品の鋳造にはロストワックスが有効です。

あらゆる材料の鋳造が可能

ロストワックス鋳造では、あらゆる材料の鋳造が可能です。

通常の鋳造方法では、型にバインダーと言われる耐火物が不可欠になります。

しかし、バインダーは高温に対応していないため高融点の金属鋳造はできません。

一方でロストワックス鋳造は、型となるセラミックが高温に耐える耐火物なので融点が高い金属の成型が可能になります。

通常の鋳造では扱えない炭素鋼、ステンレス鋼のような高融点の材料を鋳造する際は、ロストワックスが有効です。

初期コストが他の鋳造方法と比較して安い

初期コストが他の鋳造方法と比較して安い利点もあります。

初期コストが原型制作だけなので価格が安く済むのです。

プラスチック部品用金型と比べて約1/5と低価格で制作できます。

ロストワックス鋳造は初期コストが安いのです。

表面の仕上がりが綺麗

ロストワックス鋳造は表面の仕上がりが綺麗です。

型に金属を流し込んで作るので、表面は滑らかになります。

なので、制作物に見た目の美しさを求める際にも、ロストワックス鋳造は適しているのです。

複雑な形状にも対応可能

ロストワックス鋳造は複雑な形状にも対応可能です。

ワックスで原型を作るので、複雑な形状の金型も容易に作れます。

現在では3DCADやCGでデザインしたものを、3Dプリンターで原型が作成できるので、図面さえあれば複雑な形状の金型が作れるのです。

ロストワックス鋳造の欠点

ロストワックス鋳造の欠点は、ランニングコストと作業難易度の高さです。

以下で詳細を説明します。

ランニングコストが他の鋳造方法と比較して高い

ロストワックス鋳造のデメリットは、ランニングコストです。

セラミック型が使い捨てなので、鋳造の度にコストがかかります。

つまり、大量生産の場合は数が増えるほどに費用がかかるのです。

通常、大量生産の場合には金型鋳造が推奨されます。

金型鋳造では、金型の使いまわしが可能なので大量生産に適しているのです。

一方で、ロストワックス鋳造は型が使い捨てになります。

なので、初期コストは低い一方で、ランニングコストが増えていくデメリットがあるのです。

作業難易度が高い

ロストワックス鋳造では、作業難易度の高さもデメリットになります。

複雑な構造の鋳造に用いる場合が多いので、原型制作の難易度も高いのです。

ですが、現在は3Dプリンターのお陰で図面さえあれば複雑な造形も容易になります。

しかし、設備がない場合は原型の造形に技術が必要なので、作業難易度が高くなるのです。

【参考】ロストワックスの費用

ロストワックスの料金は、造形物に対して地金代と鋳造工賃によって算出されます。

基本料金に加えて、金属の料金とロストワックス鋳造の型にかかる費用の合計で算出されるのです。

例えば、基本料金50円、鋳造料金が80円/gの業者である場合、85円/gの値段の金属を使って5gの造形物を作る場合であれば、50+(85*5)+(80*5)=890円が、鋳造1つ当たりの単価になります。

値段はあくまで参考なので、詳細は加工を依頼する業者へ問い合わせましょう。

ロストワックス鋳造について不安な場合はプロに相談!

ロストワックス鋳造に自信がない人は、プロへの依頼も検討しましょう。

専門業者であれば、経験豊富な技術を元に精度の高い加工対応が可能です。

こちらでは、クマガイ特殊鋼株式会社について紹介します。

クマガイ特殊鋼株式会社【図面があればどんな加工にも対応】

クマガイ特殊鋼株式会社は100年以上の歴史があり、溶接加工に対する経験や知識も豊富です。

幅広い知識を元に、図面があればどんな加工にも対応できます。

目的にあった素材の選び方がわからなかったり、加工精度に自信がない場合はクマガイ特殊鋼株式会社に相談しましょう。

まとめ

ロストワックスは、”寸法精度が高い”、”あらゆる材料に対応できる”、”初期コストが低い”といった特徴をもつ鋳造方法です。

しかし一方で、鋳型が使い捨てなので、大量生産向きではありません。

また、3Dプリンターなどの設備があれば複雑な原型の作成も簡単ですが、無い場合は手作業で原型を作ることになるため技術の必要な鋳造方法です。

ロストワックス鋳造におけるメリット・デメリットを理解した上で、目的に合わせた最適な鋳造方法を選択しましょう。