ニッケルメッキとは?特徴/種類/自作/diyなど方法や基礎を紹介

ニッケルメッキにはどんな特徴があり、どんな加工方法があるのでしょうか。本記事ではニッケルメッキについて詳しく解説し、その後ニッケルメッキの機能性や錆の有無についても解説します。ニッケルメッキはdiyセットを用いることで補修や小物等のメッキを自作する事も可能ですよ。

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ニッケルメッキとは?

ニッケルメッキとは、鉄などで作られた製品の表面にニッケルの皮膜をつくる表面処理の一種です。ニッケルメッキは優れた光沢をもっており、錆や変色に強いため長期間その光沢を維持する事ができます。メッキにも様々な種類がありますが、ニッケルメッキは機能性だけでなく、美観性も大きく向上してくれる優れものです。

特徴や機能性についてはこの後、詳しく解説していきますが、一般的に耐熱性と耐蝕性に優れる特性を持っています。メッキを行う方法によっても、ニッケルメッキの特性が多少左右される部分があります。ニッケルメッキには「電解ニッケルメッキ」と「無電解ニッケルメッキ」といったようにメッキを行う方法は一つではありません。ニッケルメッキの加工方法についても本記事では解説していきます。

ニッケルメッキの特徴と用途

ニッケルメッキをすることで、どんな効果が得られるのでしょうか。ニッケルメッキの一般的な特徴や用途について解説していきます。

ニッケルメッキの特徴

まずは、ニッケルメッキの一般的な特徴としては、 

  • 優れた光沢をだす事ができるため、仕上がりが美しい。(半光沢や光沢を出さない事も可能。)
  • 仕上げメッキの下地にニッケルメッキを施す事で、分子の拡散防止処理を行う事ができる。
  • 耐熱性、耐食性が高い。
  • 硬度が高い。

このような特徴があります。それぞれ簡単に解説します。

光沢のある仕上がり

ニッケルメッキを施した製品の外観は、光沢があるもの、半光沢、光沢がないもの、といったように分かれます。製品の美観性を向上させるためにニッケルメッキを施す場合は光沢のあるニッケルメッキをおこないます。

ニッケルメッキの光沢は優れており、ただ美しいだけでなく、その美しさを維持する事ができます。錆びや変色に強く、400℃程度の熱を加えたとしても変色したりしません。光沢のあるニッケルメッキは美観性向上のために行われる場合がほとんどです。なお、ニッケルメッキのタイプは今回説明した外観以外にも、機械特性、表面の接合活性といった事も考慮して決められます。

拡散防止

拡散防止、と聞いても一体何の事だと思う方は多いでしょう。簡単に言えば、素材とメッキ間で分子による拡散が発生すると、本来メッキにより付与させたい効果が薄れてしまいます。拡散の強い金属の組み合わせの場合は、メッキそのものが失われていきます。

これを防止するために中間層としてニッケルメッキが活躍します。素材にニッケルメッキを施し、その上から金メッキを施す場合、中間層のニッケルメッキが分子の拡散を防ぐバリアの役割を果たし、分子による拡散を防ぐことができます。ニッケルメッキは、他のメッキ処理を施す前の下地処理として行われる場合も多く、拡散防止処理として優秀なメッキ処理となります。

耐熱性が高い

ニッケルメッキの耐熱性は高いです。約400℃程度までニッケルメッキが変色する事はありませんし、機能性が損なわれる事もありません。むしろ、表面硬度は上昇します。(これに関しては次項で解説します。)ニッケルメッキに他の元素を添加する事で耐摩耗性や耐食性なども向上させることができます。クロムを添加したニッケルクロムメッキの場合は、耐食性、耐摩耗性、電導性といった特性を付与できるようになります。

ニッケルメッキの硬度特性

ニッケルメッキは数あるメッキ処理の中でも硬い部類となります。ニッケルメッキ(無電解)の場合、室温では504Hvの皮膜強度があります。しかし、まだまだ皮膜強度の高いメッキは存在します。その中でニッケルメッキの大きな特徴は、温度の上昇と共に皮膜硬度が上昇することです。

室温20℃程度から約400℃にかけて硬度が上昇し、400℃を超えるとその後は硬度も低下していきますが、400℃のニッケルメッキの皮膜強度は1038Hvと2倍の硬度まで上昇します。耐熱性の強いニッケルメッキならではの特徴となります。

ニッケルメッキの種類

ニッケルメッキの種類は冒頭で解説したように、2種類あります。電解ニッケルメッキと無電解ニッケルメッキです。それぞれの方法にはどんな特徴があるのか知っておく事で使い分ける事もできます。製品形状によっても最適な選択は変わってくるかもしれません。

電解ニッケルメッキの特徴

電解ニッケルメッキは、電流を流してメッキを行う方法です。専用のメッキ層に製品を浸し、通電させる必要があります。なので、電気を通す素材でなければ電解ニッケルメッキを施す事はできません。

電解ニッケルメッキは、装飾や電気部品などの機能性など、幅広い用途で使用されています。電解ニッケルメッキと一言でいっても様々な方法(光沢別やメッキ浴種など)があり、使用用途に応じて使い分けられています。

無電解ニッケルメッキの特徴

無電解ニッケルメッキは化学反応によってメッキ加工を行う方法です。なので、こちらはメッキ加工に電気は必要ありません。無電解ニッケルメッキは科学的還元作用を用いた加工方法なので、複雑な形状の製品であっても、均一にメッキ処理を施しやすいです。

電解ニッケルメッキの場合は、製品形状によっては電圧の掛かり具合に偏りが発生する場合があります。その点では無電解ニッケルメッキが優れていると言えるでしょう。しかし、メッキの析出する速度が遅く、皮膜の厚みにも限度があります。

科学反応を利用しているため、メッキ浴を安定させるための維持管理が大変です。メッキ浴の組成がばらつくと、メッキの仕上がりに大きく影響します。そういった難しさがあるのは無電解ニッケルメッキだと言えるでしょう。

ニッケルメッキの加工方法

ここではニッケルメッキを行う工程について簡潔に解説した後、ニッケルメッキに錆が発生した場合疑うべき工程について解説しておきます。

無電解ニッケルメッキの加工工程

それでは各工程について順番に一口解説を行っていきます。

1、メッキする製品の脱脂

メッキを施す製品は加工工程で油脂が使われている場合が多いです。切削加工や防錆加工において油脂類を使いますよね。この油分をしっかりと取り除いておかなければメッキの密着不良が発生します。

2、洗浄

この洗浄工程では、脱脂工程で使用した脱脂液を次工程に混入しないために行います。また、洗浄時の水の滴り具合を確認する事で、洗浄工程が十分なレベルで行えているのか確認する事ができます。

3、酸浸漬

この工程はメッキが付きやすいように製品を酸に浸します。この目的は金属表面の酸化被膜や錆などを取り除くために行います。この処理を行わなければ密着不良の原因となる恐れがあるため、こちらも重要な工程になります。

4、電解脱脂工程

酸浸漬工程で除去できなかった微細なカスやスケールなどをさらに取り除きます。脱脂工程の仕上げ作業となります。

5、酸活性工程

メッキを施す前に素材を活性化させる事でメッキを付きやすくします。前工程で生じた酸化層の除去などを行います。各メッキメーカーによって大きくノウハウが分かれる部分です。

6、無電解ニッケルメッキ加工

先ほど解説したように、電気を使用しない加工方法で、化学反応によりニッケルメッキを施します。その後、製品を乾燥させてニッケルメッキ加工は完了となります。

ニッケルメッキは錆びる?

ニッケルメッキも点錆などが生じる場合があります。その原因は、素材表面のざらつきやニッケルメッキ皮膜のピンホールが関係していると言われています。そのため、メッキ加工前の下処理はやはり重要です。素材の性質を理解したうえで適した下処理を行う事がニッケルメッキ加工の仕上がりを左右すると言えるでしょう。

ニッケルメッキ自作/diyの方法

ここまでニッケルメッキについて解説してきましたが、実はdiyにより自作する事が可能です。簡易的なメッキ加工になるので小物や部分補修を行う用途に限定されるかもしれませんが、メッキ工房が販売しているdiyセットを購入する事でチャレンジする事ができます。

使用電源も乾電池なので、安全に楽しく自作する事が出来るでしょう。ただし、自分でdiyする事が好きな方向けです。多少仕上がりが不十分な結果になったとしても「自作する事に意味がある。」という方向けの製品だと思っておいた方が良いでしょう。

素材や手先の器用な方が行えばキレイに仕上げる事も可能なのですが、仕上がりにばらつきが出る事は言うまでもないでしょう。プロの手によって、満足のいく美しいニッケルメッキを施してほしい場合は、やはり専門家に任せるのが一番です。各素材の癖や特性を理解していなければ、美観性、機能性を兼ね備えたメッキ加工は難しいのです。

まとめ

今回は「ニッケルメッキとは?特徴/種類/自作/diyなど方法や基礎を紹介」といった内容で解説しました。

「ニッケルメッキにはどんな特徴があるのかな。」「ニッケルメッキって自作できるのかな。」といった疑問は解消できたのではないでしょうか。

ニッケルメッキは美観性だけでなく、機能性も兼ね備えたメッキ加工です。耐熱特性に優れ、高温下であるほど皮膜硬度が増します。さらに、ニッケルメッキは拡散防止として非常に優れているため、仕上げメッキの下地処理として中間層のメッキに使用される事が多いです。

このように優れた特性を沢山持つニッケルメッキですが、ニッケルメッキを自作する事も可能です。簡易メッキdiyセットが販売されているので、小物や部分補修程度であればdiyで行う事ができます。しかし、美観性や機能性を求める方は、やはりプロの手によってメッキ加工を行ってもらう事をおすすめします。