電気めっきとは?原理・メリット・デメリットを解説

電気めっきは、電気エネルギーによって溶液中の金属イオンを還元し、素材に皮膜を作るという方法でめっきします。電気めっきの原理は、両極間に直流電圧を与えることで金属がめっき皮膜に変化することです。また、電気めっきには多くの素材がありますが、それらを紹介します。

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電気めっきとは?

めっきとは、金属や樹脂といった素材の表面に、金属の薄い被膜を析出させることをいいます。析出するという意味は、溶液や気体から個体が分離して出てくることをいい、電気めっきのことを電解めっきとも呼びます。

カタカナでメッキと表記されることもありますが、めっきは滅金(めっきん)からきている日本語で、正確にはひらがなで「めっき」と表記します。

めっきは、金めっきのように見栄えをよくするだけでなく、錆止めや製品の機能を向上させる効果もあります。

電気めっきとは、電気エネルギーによって溶液中の金属イオンを還元し、素材に皮膜を作るという方法でめっきすることをいいます。

金属や樹脂の素材には、銅、ニッケル、クロム、金といったものがあります。

電気めっきの原理

電気めっきの皮膜はどのようにしてできるのかというと、めっきしようとする金属のイオンを含んだめっき液の中に、めっきするための製品を入れてそれを陰極(-)とし、めっきしようとする金属を陽極(+)とすることで、生成されます。

具体的には、両極間の直流電源を接続して電圧を与え、電流が流れて陰極で還元反応が起きますが、その時めっきしようとする金属が析出し、メッキ皮膜に変化します。

めっきが進行することによって、金属がめっき液に熔解した陽極のことを、可用性陽極というのですが、そのことにより少なくなっためっき液中の金属イオンを補うことができます。

たとえば、銅めっきなど、陰極で析出しためっき皮膜と陽極で溶解しためっき皮膜の、それぞれの金属量が同じであることが理想であり、めっき液の中の金属量は変化しません。

また、クロムめっきなどでは、めっき液に溶けない不溶性の陽極も使用されますが、この場合には金属イオンを補うために化学薬品が使用されます。

電気めっきの歴史

めっきが行われた世界最古のものは、2000年前のパルティア人によるものだとする説と、1700年前のスキタイ人によるものとする説などさまざまです。

パルティア人は、今のイラクの首都バクダッド郊外から出土したバグダッド電池を作った人たちです。バグダッド電池とはバグダッドで作られた土器の壺ですが、これを電池とする説とそうでないとする説とがあります。

少なくとも、紀元前1500年頃には、既にアッシリア錫めっきが行われたという記録があります。

日本にめっきの技術が伝わってきたのは、仏教と同じ頃だとされ、1871年に発見された仁徳天皇陵の埋葬品の甲冑が日本最古のものだといわれています。しかし、この甲冑は埋め直しされているため現存していません。

近代日本では、薩摩藩主の島津斉彬が初めて電気めっきを試みたとされ、1855年に初めて甲冑金具に電気めっきを行ったとされています。また、1871年に宮崎柳条によって『西洋百工新書』が出版されていますが、その中に電気めっきの工程が書かれています。

電気めっきの種類

電気めっきにはさまざまな種類がありますが、今回は以下の主な6種類のめっき方法について解説します。

  1. 金めっき
  2. 銀めっき
  3. 銅めっき
  4. 亜鉛めっき
  5. クロムめっき
  6. ニッケルめっき

金めっき

金めっきは、産出量が少ない金を最大限に有効活用した方法で、古代から馬具、刀剣、仏像、仏具、装飾品といったものに使われています。

現在においては、装身具、喫煙具、照明器具、メガネフレーム、時計、食器、仏具などで不可欠のめっき方法として高い評価を得ています。

銀めっき

銀めっきは、その独特の色調から古来より尊ばれてきました。金めっきと並んで装飾品全般で使われていて、現在でも装身具、食器、バッヂ、楽器などで光沢銀めっきが使われています。

また、フルートなどの管弦楽器に銀めっきを施すことで音色がよくなりますし、洋食器に銀めっきを施すことで水分中の微生物が殺菌されて、衛生上でも極めて好ましいのですが、そうした銀めっきの目に見えないメリットは、一般的には知られていません。

銅めっき

銅めっきは、銅特有の赤みを生かして、装飾用として多く使用されていますが、変色しやすいため、下層めっきとして使用されることが多いです。

また、密着性に優れ、均一にめっきできるため、亜鉛合金や鉄など幅広く下地として用いられています。

亜鉛めっき

亜鉛めっきは、防錆めっき法として幅広い分野で活用されています。鉄の防食に極めて効果的であり、めっき浴やクロメート処理の進歩によって外観性能も向上することから、装飾的な用途でも高い評価を得られています。

クロムめっき

ニッケルめっきの上にクローム層を施したものがクロムめっきです。クロムめっきはシルバーに美しく輝きますから装飾性が高いめっき方法といえます。

表面は大気中ではほとんど変色がなく、硬度が高く耐摩耗性も良好です。

ニッケルめっき

光沢をもつ綺麗なめっきで、装飾用に用いられます。鉄とよく密着させるために下地に銅めっきを施すこともあります。耐食性は亜鉛メッキよりも低く、めっき自体にピンホールがあるため、ダブルニッケルされる事が多いです。

電気めっきのメリット

電気めっきのメリットはコストが安いことと、色々な金属にめっきできることがあげられます。また、短時間でめっきできるというメリットがあります。

その他、電気めっきには金属感があり鏡面仕上げができること、耐熱性があり耐摩耗性、耐汚染性があり、めっきを厚く処理できること、無電解と比べると価格が安いというメリットがあります。

電気めっきのデメリット

電気めっきのデメリットとして、均一にめっきすることが難しいことや、複雑な形状の製品では、綺麗にめっきできないことがあげられます。

その他、酸性に弱いめっきが多いことや、ピンホールや焦げ、バリが発生する場合があること、精度を維持することが難しいといったデメリットがあります。 

電気めっきが使われているものは?

私たちの身の回りには、電気めっきが使われているものがたくさんあります。たとえば、以下のような分野でめっきがほどこされていますが、それぞれについて解説します。

    車のバンパー、ドアノブ、ミラー、エンブレムといった部品には、錆に強い亜鉛や傷が付きにくいクロムなどでめっきされています。

    自動車外装

    車のバンパー、ドアノブ、ミラー、エンブレムといった部品には、錆に強い亜鉛や傷が付きにくいクロムなどでめっきされています。

    回路基板・電子部品

    電気めっきには、スマートフォンやゲーム機などの電子部品にもめっきした製品が使われています。たとえば、スマートフォンの基板の素材はセラミックでそのままだと電気を通しませんが、めっきすることで電気を通すことができます。

    食器・衣類

    たとえば、銅や銀、コバルトといった金属は抗菌性を備えています。ですから、ナイフやフォークなどの食器類にそれらの金属でめっきすることで、細菌の繁殖を防ぐ効果があります。

    また、繊維のような細かいものにもめっき処理することも可能です。水虫の予防として、靴下の繊維に銅を使ってめっきされているものもあります。

    まとめ

    今回は、電気めっきについてその原理や歴史、素材の種類などを紹介しました。

    • 電気めっきとは、電気エネルギーによって素材に皮膜を作るめっき方法をいいます。
    • 電気めっきの原理は、両極間に直流電圧を与えることで金属が析出し、メッキ皮膜に変化することです。
    • 電気めっきの歴史は、2000年前のパルティア人によるものだとする説と、1700年前のスキタイ人によるものとする説などさまざまです。
    • 電気めっきの種類には、金めっき、銀めっき、銅めっき、亜鉛めっきなどさまざまなものがあります。
    • 電気めっきは、コストが安いことと、色々な金属にめっきできること、短時間でめっきできるというメリットがあります。
    • 電気めっきは、均一にめっきすることが難しいことや、複雑な形状の製品では綺麗にめっきできないというデメリットがあります。
    • 電気めっきが使われているものには、自動車外装、回路基板・電子部品、食器・衣類といったものがあります。