耐候性鋼板について!規格や用途を解説

耐候性鋼板ってどんな鋼材?耐候性鋼板も錆びているんだけど大丈夫なの?そんな疑問を解決します。耐候性鋼板は合金元素を添加することで耐用年数を大幅に伸ばした鋼材です。耐候性鋼板には様々な種類・規格が存在しますが、大きな特徴は独特の保護性錆を形成できることです。

耐候性鋼板について!規格や用途を解説のイメージ

耐候性鋼板とは

耐候性鋼板とは、有機溶剤等の塗装無しでも、屋外で長期にわたり性能を維持できる鋼材です。

鉄を屋外で使用した場合、表面から少しづつ酸化が進み、錆が侵食していきます。錆が進行した鋼材はもろく、性能は極端に低下してしまいます。

しかし、耐候性鋼板は違います。耐候性鋼板は一見錆びているように見えてしまいますが、この錆はほとんど進行することなく、内部まで侵食されることはありません。そのため、適切な環境下できちんと管理されていれば200年近く耐久性を維持する事ができると想定されています。

耐候性鋼板の特性

耐候性鋼板の大きな特性は、錆の侵食を食い止める保護性錆が形成される事です。

耐候性鋼板特有の保護性錆は通常の錆同様、空気中の酸素、水分を吸収し生成されていきます。はじめは赤みかかった色をしていますが、年月が経つにつれ表面の色調に変化が見られます。

年月が経つほどに色調に深みが出るので、ただの鋼材としてだけでなくデザインとしても採用されるケースがあります。デザインだけでなく、この表面の特殊な錆が鋼板を守り、長期間耐久性を維持する大きな役割を果たしています。

(鋼鉄にCu(銅)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)といった合金元素を添加する事で、保護性錆を形成できる耐候性鋼となります。)

耐候性鋼板の保護性さびの腐食

製造タイムズ_腐食イメージ

耐候性鋼板特有の保護性錆は、最初から形成されているわけではありません。なぜなら、ある程度錆が進行しなければ保護膜(アモルファス層)が形成されないからです。

耐候性鋼板初期の段階では、赤みの強い初期錆が発生します。しかし、この状態ではまだ保護性錆ではないという事です。錆は空気中の酸素と結びつき、濡れたり乾いたりを繰り返しながら錆は進行していきます。保護性錆となる目安は施工後3~4か月程度だと言われています。

注意点として、耐候性鋼板は絶対に錆が侵食しないわけではありません。

濡れたままになってしまう場所、水気、湿気の多い場所、こういったところでは通常の鉄板同様に錆が侵食していく恐れがあります。適切な環境下で使用できるように、使用場所を考えなければなりません。

耐候性鋼板の用途

耐候性鋼板は橋梁や鉄道、建築物など様々なところで活躍しています。

耐候性鋼は、環境にやさしいく、ライフサイクルコストを低く抑える事ができる魅力的な材料だと言えます。無塗装であっても高い耐食性を維持できる特性を持っているので、長期間においてメンテナンスフリーとなるでしょう。

橋梁がもし通常の鉄で構成されていたら大変です。大規模な補修工事を何度も行う必要性がでてきます。その点、耐候性鋼を使用する事で錆の侵食を止め、長期にわたり性能を維持する事ができるため、ライフサイクルコストの面で魅力的だと言えるでしょう。

耐候性鋼板の使用用途は実に様々ですが、耐候性鋼のメリットである

・長期耐久性
・独特の色調
・ライフサイクルコスト(LCC) の低減

このメリットを活かせる環境下で活躍しています。

      耐候性鋼板の規格や種類

      耐候性鋼板は大きく二つの種類に分けられます。溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材と高耐候性圧延鋼材です。それぞれJIS規格により定められています。

      ここでは、2つの耐候性鋼材の種類・規格について簡潔に解説します。 

      溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JIS G3114)の規格・種類

      鉄骨造によく使われる溶接構造用圧延鋼材と質量及び寸法、形状など許容差は同じです。

      溶接構造用圧延鋼材は溶接性を高めた鋼材なので、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材も同様に溶接性は高いです。溶接性だけでなく、耐候性も付与したものが溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材となります。

      • SMA400AP、SMA400BP、SMA400CP
      • SMA400AW、SMA400BW、SMA400CW
      • SMA490AP、SMA490BP、SMA490CP
      • SMA490AW、SMA490BW、SMA490CW

      といった種類があります。

      数字の直後のアルファベット(A~C)はシャルピー吸収エネルギーを表すアルファベットです。
      A:規定なし  B:27以上  C:47以上
      となっています。

      (シャルピー吸収エネルギーとは、切り欠きを入れた試験片に打撃を与え、試験片の粘り強さである「靭性」を測定する試験です。)

      高耐候性圧延鋼材(JIS G3125)の規格・種類

      高耐候性圧延鋼材は、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材よりも耐候性を高めた鋼板となります。

      高い耐候性を付与するために、P(リン)を添加しています。しかし、Pを添加したことで溶接性が劣ってしまいます。ボルト止めなど、溶接を必要としないところで活躍する鋼板となります。

      高耐候性圧延鋼材は一般的にSPA材と呼ばれ、SPA-HとSPA-Cに分類できます。規格上の大きな違いは耐力、引っ張り強さであり、どちらも合金元素においては同じです。
      SPA-H:熱間圧延鋼板(16㎜以下)  SPA-C:冷間圧延鋼材(0.6~2.3㎜以下)
      といったように、鋼材の厚みや加工方法に違いがあります。 

      まとめ

      今回は「耐候性鋼板」について解説しました。

      耐候性鋼板は、一見錆びているので耐候性鋼板について知見がないと「施工したばっかりなのに錆びているけど大丈夫なの?」そんな不安がよぎる事もあるでしょう。しかし、耐候性鋼板は適切な環境下で使用すれば表面の錆は保護性錆となり、錆が内部に侵食していくことはありません。

      この知識を有したうえで、各地の橋梁や建築物を見ると、今までと違った目線で楽しむことができるかもしれませんね。

      耐候性鋼板にも種類がある事を解説したので、使用する際には使用用途に応じて適切な環境下で使用してください。ライフサイクルコスト(LCC)低減に大きな効果をもたらしてくれるでしょう。

      耐候性鋼板に関するもっと詳しい情報が必要な方は、専門商社に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

      COR-TEN(コルテン)® 耐候性鋼板|製品情報|鋼板・鋼材の加工・専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

      創業100年以上の歴史を持ち、中部地区で唯一日本製鉄の指定特約店である、特殊鋼材・一般鋼材の加工・販売を手がけるクマガイ特殊鋼株式会社が取り扱う、COR-TEN(コルテン)® 耐候性鋼板についてご紹介します。