焼き入れとは?焼きなましや焼き戻しの方法も解説

熱処理の方法には、「焼入れ」「焼戻し」「焼きなまし」「焼ならし」といった4つのパターンがありますが、今回は主に「焼入れ」についての特徴や方法、メリットやデメリットに関して詳しくまとめました。また、熱処理の他の種類についても簡単に紹介します。

焼き入れとは?焼きなましや焼き戻しの方法も解説のイメージ

目次

  1. 1熱処理とは?
  2. 2焼き入れとは?
  3. 3熱処理の他の方法
  4. 4まとめ

熱処理とは?

熱処理とは、一定の温度以上に鋼を加熱し、その後適当な方法で冷却することで、もとの鋼の性質を変えることを指し、そのことで理想的な材質にすることを目的としています

熱処理には、主に「焼入れ」や「焼戻し」など4つの種類がありますが、熱処理とはどの方法も鋼材を構成する組織に加熱と冷却を施して、硬さ、強さ、柔らかさなど、目的の性質を得ることをいいます。
 

熱処理の種類

熱処理の方法には、「焼入れ」「焼戻し」「焼きなまし」「焼ならし」といった4つのパターンがありますが、今回は主に「焼入れ」について紹介していきます。

焼き入れとは?

鋼の組織の構造が変化する温度を変態点といいますが、その変態点以上の温度まで上昇させ、一定時間経ってから、急激に冷却することを焼入れといいます。

焼入れのことを英語では、ハードニング(硬くする)、クエンチング(急冷する)、クエンチ・ハードニング(急冷して硬くする)という表現を使い、JISの加工記号では「HQ」と表現します。
 

焼き入れの特徴

焼入れは、鋼を固くする目的で施される熱処理の一種ですが、鋼が硬化する程度はその鋼に含まれている炭素の量で決まります。

炭素だけでなく、さまざまな合金元素によっても最高硬さや硬化の度合いが変わってきます。

そして、その変化の度合いが高いほど、「焼入れ性が良い」ということになります。焼入れ性が良いといわれる鋼の種類では、空気や油といった冷却媒体を選ばずに焼入れすることができます。

逆に焼入れ性が良くない鋼の種類だと、加熱した後に水などによって急激に冷却しないと、理想的な鋼の硬さにはなりません。

焼入れは、鋼の量が大きくなればなるほど冷却速度が遅くなりますが、この現象を質量効果と呼び、量的に大きな鋼を熱処理する場合は、質量効果のことを考えて工程を設計する必要があります。
 

焼き入れの方法

焼き入れの方法は、まず鋼を加熱し、オーステナイト(変態点を上げて911℃以上になったときに生成されるもの)にしてから、急激に冷却することでマルテンサイト(オーステナイトから急冷することで得られる組織)という状態にします。

マルテンサイトは硬いものですが、脆い性質もあるため、さらに30~50℃の変態点以上に加熱し、オーステナイト化したら今度は臨海温度(770~550℃までの温度域)まで冷却します。

その後、危険区域(焼割れや焼き入れひずみなどが生じやすい温度範囲)はゆっくりと冷却します。

マルテンサイトが発生すると、低温で硬化する時に膨張し、その後急激に冷却すると焼割れが生じやすくなります。

焼き入れの方法には、引き上げ焼き入れという種類があり、鋼を焼き入れ液の中に入れ、ある程度の時間が経ったのちに引き上げ、ゆっくりと冷却する方法です。

引き上げ焼き入れのことを、時間焼き入れともいいます。焼き入れの冷却には、一般的に水や油を使用します。急速に冷却するためには水が使われますが、その場合曲がりや焼割れが発生しやすいといったデメリットがあります。

また、油で冷却する場合は、冷却性能は水の3分の1程度ですが、水で冷却するよりも曲がりが生じにくいメリットがあります。
 

焼き入れのメリット

焼入れのメリットとして、鋼の硬質化や強度の向上、耐食性や耐疲労性の向上といったものがあげられます。

焼き入れのデメリット

焼き入れによって、焼割れや変形を生じる恐れがありますから、加工する鋼全体を均一に冷却することが必要になります。

そのために、冷却速度をゆっくりと行いますが、その他にも加工する鋼のサイズや形状などを考慮しなければならないといったデメリットがあります。
 

熱処理の他の方法

熱処理には、焼入れの他に以下の3つの工法がありますが、それぞれについて以下に解説します。
・焼き戻し
・焼きなまし
・焼ならし
 

焼き戻し

焼き入れによって、鋼の組織をマルテンサイト化することで硬くなるのですが、そのままではもろくなって、割れなどが生じやすくなります。

そこで、「焼戻し」という工程を行うことで、粘りや靭性を高めることができます。焼戻しは、焼き入れから更に加熱して、硬さを調整する作業です。

なお、マルテンサイトとは、鋼などを急冷することで得られる安定した組織のことをいいます。鉄鋼組織の中でも最も硬くて脆い組織です。

英語で、焼戻しのことをテンパリングと呼び、JISの加工記号は「HT」と表記します。

焼戻しの効果として、鋼の内部応力の緩和や焼き入れの硬さの調整、靭性の強度や靭性の調整といったものがあります。

焼き入れと焼きもどしは、基本的にワンセットであり、硬くて丈夫な鋼を作るために効果的です。もし、焼き入れだけで作られた製品だとしたら、傷がついたり破損したりで、理想的な製品にはなりません。この焼戻しには低温焼戻しと高温焼戻しに大別することができます。
 

焼きなまし

工具や機械部品を作る場合、切削が容易な鋼の方が理想的です。そのために、鋼を柔らかくする必要があり、焼きなましという熱処理を行います。

焼きなましは、英語でアニーリングと呼ばれ、JISの加工記号では「HA」と表記します。焼きなましは、鋼材の組織や硬さを均一にするといった効果があります。

ですから、焼きなましが不完全だと、鋼材の組織が不均一となって、機械加工に適さないなど加工にムラが生じる要因となります。

焼きなましには、その目的によって「拡散焼きなまし」「完全焼きなまし」「球状焼きなまし」「等温変態焼きなまし」「応力除去焼きなまし」といった種類があります。

たとえば、低温で応力を除去するために「応力除去焼きなまし」を行います。また高温で成分や不純物を均一にするために「拡散焼きなまし」を行います。

焼なましの効果としては、鋼の内部応力の除去や組織の軟化、切削性の向上、組織の改善、炭化物を球状にするといったものがあげられます。
 

焼きならし

鉄鋼製品の材料となる鋼材は、鋳造、鍛造、圧延といった方法で作られますが、いずれの工法でも、そのままでは加工の段階でひずみにより、鋼の組織が不均一になってしまいます。

そこで、鋼の組織を均一化させ、微細化するのが焼ならしという工法です。焼ならしのことを英語で、ノーマライジングと呼ばれ、JISの加工記号では「HNR」と表記されます。

焼ならしは、変態点よりも高めの温度で再加熱し、その後、空冷することで結晶粒が微細化し、強靭性などが向上し、残留応力(外部からの圧力や熱が内部に残ること)を除去することができます。

焼ならしの効果として、結晶粒の整粒化、塑性加工組織の改善といったものがあげられます。
 

まとめ

今回は、焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、焼ならしという4つの熱処理についてまとめましたが、特に焼き入れに関する特徴や方法、メリットやデメリットについて詳しく紹介しました。
 

  • 熱処理とは、一定の温度以上に鋼を加熱し、その後適当な方法で冷却することで、もとの鋼の性質を変えることをいい、そのことで理想的な材質にすることを目的としています
  • 熱処理の方法には、「焼入れ」「焼戻し」「焼きなまし」「焼ならし」といった4つのパターンがあります。
  • 焼き入れは、鋼を固くする目的で施される熱処理の一種ですが、鋼が硬化する程度はその鋼に含まれている炭素の量で決まるといった特徴があります。
  • 焼入れのメリットとして、鋼の硬質化や強度の向上、耐食性や耐疲労性の向上といったものがあげられます。
  • 焼き入れのデメリットは、焼割れや変形を生じる恐れがあり、そのために加工する鋼全体を均一に冷却する必要があります。

関連するまとめ