型彫り放電加工とは?利点・事例・注意点を分かりやすく解説!

電極次第であらゆる形状の加工が可能な型彫り放電加工について解説しています。仕組みや特徴など基本的なことから、型彫り放電加工の利点や注意点、型彫り放電加工の事例まで詳しく解説しています。この記事を読むことで、型彫り放電加工について理解でき、より良い製品を作れるようになります。

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型彫り放電加工についてお調べでしょうか?

型彫り放電加工とは、電極の形状に応じた超精密加工のことです。

電極次第であらゆる形状の加工が可能で、導電体ならどんなに硬い材質でも加工ができるというのが型彫り放電加工の利点となります。

しかし一方で、電気を通さない対象は加工ができないという型彫り放電加工のデメリットも。

そこで本記事では、型彫り放電加工の仕組みやメリット、注意点や型彫り放電加工の導入事例について紹介していきます。

本記事を読むことで、型彫り放電加工について詳しく理解でき、スムーズに導入することができるようになりますので、ぜひご一読ください。

型彫り放電加工について詳しく知り、無駄がない効率的な製造をしていきましょう!

型彫り放電加工とは?【電極の形状に応じて超精密加工を行う】

型彫り放電加工とは、電極の形状に応じた超精密加工のことです。

電極次第であらゆる形状の加工が可能で、導電体ならどんなに硬い材質でも加工ができるというのが型彫り放電加工の利点となります。

便利な加工方法ですが、特徴を理解していないと、適切に導入することができず、無駄にコストをかけてしまう可能性も。

そこで、下記について紹介します。
 

  • マイクロレベルの微細加工や大型品の3次元加工が可能
  • 型彫り放電加工の仕組み
  • 型彫り放電加工機

それでは見ていきましょう。

1ー1.マイクロレベルの微細加工や大型品の3次元加工が可能

型彫り放電加工は、マイクロレベルの微細加工や大型品の3次元加工が可能です。

型彫り放電加工は形状加工された電極を用いて加工をおこなうため、工作物はすべて電極の形状に依存しています。

そのため、微細加工から大型加工まで対応しているのです。

マイクロレベルの微細加工や大型品の3次元加工が可能なのが型彫り放電加工の特徴です。

1ー2.型彫り放電加工の仕組み

次に型彫り放電加工の仕組みについて解説します。

型彫り放電加工は以下の流れで工作物を加工することが可能です。
 

  1. 絶縁性の加工液内で電極と工作物を対向
  2. わずかな放電を何度も発生させて工作物を溶解
  3. 放電により発生する気泡爆発によって溶接部分を除去

上記の流れを繰り返すことで、型彫り放電加工による加工が行われます。

1ー3.型彫り放電加工機【精度などあらゆるニーズに対応】

型彫り放電加工機は、型彫り放電加工をおこなう際に使用する加工機のことです。

精度が高く、あらゆるニーズの工作物に使用することができるのが型彫り放電加工機の特徴となります。

型彫り放電加工機の仕組みをより詳しく理解し、さらに型彫り放電加工の仕組みについて把握していきましょう。

以下で詳しく見ていきます。

1ー3ー1.型彫り放電加工機の構造

型彫り放電加工機の構造

(参照:放電加工の基礎知識 – Tech Note

型彫り放電加工機は、以下の5部分で構成されています。
 

  • 電極を取り付ける主軸
  • 工作物を固定するXYテーブル
  • 加工液を貯める加工槽
  • 加工用の電源装置
  • 形状加工された電極

型彫り放電加工機は上記5部分が主要部となっており、各部分が連携して精密な加工を可能としているのです。

1ー3ー2.型彫り放電加工機のメーカー

型彫り放電加工機のメーカーについて以下にまとめました。
 

メーカー 代表的な型彫り放電加工機 特徴
アイクス 汎用細穴放電加工機 MT40LS II 加工ヘッドと電源制居装置のみが独立したユニット加工機。使用しなくなった機械に装着し、ニーズに合った型彫り放電加工が可能。
GFMS AgieCharmilles新型FORMシリーズ 金型や部品製造に対するコストパフォーマンスが高い加工機。工作物の表面積比に対してもっとも有効なスペース設計で加工が可能。
三菱電機 FA SV-Pシリーズ 加工の安定度・進行状況からの加工状態自動識別機能が充実した加工機。AI適応制御や光沢仕上げ回路で美しい加工を実現。
ナカヤマ精密株式会社 AP30L ビルトイン同期モーター搭載の小型加工機。環境温度変化の影響を最低限に抑えるための熱変異補正システムを搭載。


メーカーや型彫り放電加工機ごとに対応する工作物や得意な加工が違います。

製造ニーズに適した型彫り放電加工機を選ぶようにしましょう。

型彫り放電加工の利点を押さえよう!

ここまで、型彫り放電加工の特徴を確認してきました。

次に型彫り放電加工の利点について紹介します。

利点を押さえることで、型彫り放電加工を最大限に活かした生産が可能です。

型彫り放電加工の利点は以下の2点になります。
 

  • 電極次第であらゆる形状の加工が可能
  • 導電体であればどんなに硬くても加工できる

型彫り放電加工には、工作物を緻密に加工できること以外にも上記2つのような利点があります。

それでは早速見ていきましょう。

2ー1.電極次第であらゆる形状の加工が可能

型彫り放電加工は、電極次第であらゆる形状の加工ができます。

なぜなら、型彫り放電加工では電極の形状にしたがって工作物の型彫りをおこなうことができるからです。

工作物は電極の形状にあわせて加工されていくため、どんな形であっても微細に仕上げることができます。

電極次第であらゆる形状の加工ができるのが型彫り放電加工の利点の1つです。

2ー2.導電体であればどんなに硬くても加工できる

型彫り放電加工は、導電体であればどんなに硬くても加工できる加工方法となります。

なぜなら、型彫り放電加工は放電によって工作物を彫金する加工方法であり、非接触加工だからです。

工作物は放電によって加工されていきます。

そのため、ワイヤ硬度のように接触加工タイプの加工で重きが置かれる工具の条件は、型彫り放電加工においてはまったく影響を与えるものではないのです。

このように導電体であればどんなに硬くても加工が可能なのが型彫り放電加工の利点だと言えます。

型彫り放電加工の事例【大型から小型まであらゆる対象を加工できる】

ここまで、型彫り放電加工の利点を紹介しました。

次に以下の導入事例を見ていきます。
 

  • 精密ディスペンサーノズル
  • ロケットエンジンノズルスカート

型彫り放電加工の導入事例を詳しく知ることで、型彫り放電加工に適切な工作物を理解することができ、製造過程でどのように導入するかを判断することができます。

それでは早速見ていきましょう。

3ー1.精密ディスペンサーノズル

型彫り放電加工の導入事例として、精密ディスペンサーノズルについて紹介します。

型彫り放電加工は精密ディスペンサーノズルに適した加工方法です。

精密ディスペンサーノズルは、5μmのように精密な角加工が求められることがあります。

通常のノズル加工では、上記のように精密なノズルを加工することは非常に難しいと言われているのです。

また、型彫り放電加工は面粗度をRa0.06という高いレベルで加工することができるため、精密ディスペンサーノズルのように高い平面度が求められる工作物に適していると言えます。

このように型彫り放電加工は精度の高い加工が適しているため、精密ディスペンサーノズルの精密な加工を行うことができるのです。

3ー2.ロケットエンジンノズルスカート

型彫り放電加工はロケットエンジンノズルスカートのような大型加工にも適しています。

すでに述べたとおり、型彫り放電加工は電極の形状を変えることで、どのような工作物に対しても精密な加工をおこなうことが可能です。

ロケットエンジンノズルスカートは大きいもので1.8メートルの大きさがありますが、その大きさに準じた電極形状を選ぶことで、超高精度の加工ができます。

このように電極の大きさによって、マイクロレベルの微細加工や大型品の3次元加工が可能なのが型彫り放電加工です。

気をつけて!型彫り放電加工の注意点

ここまで型彫り放電加工の利点や、実際の導入事例について紹介してきました。

しかし、色々な形状の加工が可能だからといっても、万能な加工方法というわけではありません。

型彫り放電加工について、知っておくべき以下3つの注意点があります。
 

  • 電極自体を希望する形状にする必要がある
  • 電気を通さない対象は加工ができない
  • 電極材質を適切に選定する必要がある

注意点をしっかり理解することで、無駄にコストをかけることを避けられます

以下で詳しく見ていきましょう。

4ー1.電極自体を希望する形状にする必要がある

型彫り放電加工は、電極自体を希望する形状にする必要があります。

なぜなら、型彫り放電加工では工作物に対する加工のほとんどが電極の形状に依存しているからです。

ただし、希望する形状自体がすでに市販されているものであるならば、電極の形状を自ら変える必要はありません。

希望する工作物の形状にしたがって、適切な電極の形状を選択するようにしましょう。

4ー2.電気を通さない対象は加工ができない

型彫り放電加工では、電気を通さない対象は加工ができません。

なぜなら型彫り放電加工は、電気によって加工をおこなう非接触加工だからです。

工作物は放電現象によって加工されていくため、電気を通さないゴム製品などは加工することができません。

電気を通さない対象は加工ができないため、型彫り放電加工では事前に工作対象物の特性を理解しておくことが重要です。

4ー3.電極材質を適切に選定する必要がある

型彫り放電加工では、電極材質を適切に選定する必要があります。

以下に、電極材質の特性を表にしましたのでご覧ください。
 

電極材質 特性 デメリット
銅系 型彫り放電加工でもっとも使用されている材質。展延性に優れ、磨きによる電極修正が容易。 加工後にバリ処理が必要となることが多い。また剛性に不安がある。
グラファイト系 大物金型加工で使われることが多い材質。加工中に熱変形することがなく、バリが発生しない。 加工中に粉塵が発生することが多いため、グラファイト専用加工機が必要となることがある。
タングステン合金系 銅とタングステンを組み合わせた合金材料。高硬度のため、ソリが発生することが少なく、高精度金型加工に向いている。 添加物の脱落によって電極面質を低下させ、仕上がり加工面の質を悪化させる可能性がある。

電極材質によって特性が異なるため、導入したい現場のニーズに合わせて、型彫り放電加工の電極材質を適切に選ぶことが重要です。

型彫り放電加工にお困りの場合は鋼の専門商社へ相談もアリ!

型彫り放電加工の導入に不安や疑問がある場合は、加工技術の専門家に相談することがおすすめです。

ただし型彫り放電加工は、電気を通さない対象は加工ができないことや、電極材質を適切に選定する必要があるといった注意点があるため、何も知らない状態で導入すれば失敗する可能性もあります。

型彫り放電加工を使って、より緻密な作業がしたいということであれば、実績と技術のある会社へ相談しましょう。

5ー1.クマガイ特殊鋼株式会社

クマガイ特殊鋼株式会社

クマガイ特殊鋼株式会社は、型彫り放電加工のような高い技術力が必要な鋼材加工を得意としている会社です。

すでに創業100年を超え、歴史に裏づけられた信頼と実績を持つクマガイ特殊鋼株式会社は、型彫り放電加工に対しても熟練した技術を有しています。

型彫り放電加工を用いて、よりクオリティの高い製品を製造したいということであれば、クマガイ特殊鋼株式会社に相談することがおすすめです。

まとめ

型彫り放電加工は、電極の形状に応じた超精密加工のことです。

緻密な作業が可能で、導電体であればどんなに硬い材料でも加工を施せることがメリットだと言えます。

電極次第であらゆる形状の加工が可能で、導電体ならどんなに硬い材質でも加工ができるというのが型彫り放電加工の利点です。

ただし型彫り放電加工は、電気を通さない対象は加工ができないことや、電極材質を適切に選定する必要があるといった注意点があるため、何も知らない状態で導入すれば失敗する可能性もあります。

もし型彫り放電加工の導入にお困りであれば、クマガイ特殊鋼株式会社にご相談ください。

プロとしてきめ細かいサポートを約束します。