ワイヤーカットとは?加工の原理やメリット/デメリットを解説

ワイヤーカットってどんな加工なんだろう?本記事ではその疑問をすべて解消します。ワイヤーカットは金属加工方法の中でも特殊な加工方法となります。髪の毛程度の細いワイヤーを使って金属を切断するのです。興味が出ませんか?ワイヤーカット加工の原理についても解説しますよ。

ワイヤーカットとは?加工の原理やメリット/デメリットを解説のイメージ

目次

  1. 1ワイヤーカットとは?
  2. 2ワイヤーカット加工の原理や特徴
  3. 3ワイヤーカット加工のメリット
  4. 4ワイヤーカット加工のデメリット
  5. 5まとめ

ワイヤーカットとは?

ワイヤーカット放電

ワイヤーカットとは、極細のワイヤー(Φ0.05㎜~Φ0.3㎜程度)と加工物の放電熱により金属を切断する方法です。

ワイヤーカット放電加工機を用いてワイヤーカット加工を行います。

基本的に導電性のある材質であればどんな金属でも加工可能です。薄いアルミ板から厚さ50㎜の超硬素材まで幅広い素材に対して加工を行う事ができます。

加工精度も非常に高く、複雑な形状に加工する事も可能なので、主に精密部品の加工に使用されています。
 

ワイヤーカット加工の原理や特徴

ワイヤーカットの原理

ワイヤーカット加工は加工精度も高く、複雑な形状への対応力も高いので精密部品の加工には重宝される加工機の一つです。

「極細のワイヤーで分厚い鋼材を切断」という、一見手品みたいなワイヤーカット加工。

その加工機の原理や特徴についてもう少し詳しく解説し、種明かしをしたいと思います。

ワイヤーカット加工の原理

ワイヤーカットは、極細のワイヤーと加工物の間で発生する放電熱で加工物を切断する方法です。

電気がショートした場合もそうですが、ここではわかりやすく雷にしましょう。雷も一種の放電です。雷が落ちた木はボロボロになり、放電熱によって燃える事もあります。放電時には電気エネルギーが熱エネルギーに変換されるのです。

そして、電気のショートであっても、雷や溶接機であっても、すべて電気的に接触していない状態で放電が発生します。ワイヤーカットの原理も同じなのです。

極細のワイヤーはあくまで放電させるための電極です。加工物をゴリゴリと削っているわけではありません。ワイヤーと加工物の間では常に放電されており、非接触状態を維持しています。ワイヤーは周りに放電という鎧をまとって金属にアプローチしています。

これが極細ワイヤーで分厚い金属を加工できる理由となります。

もう少し補足すると、ワイヤーカット放電加工機ではパルス電流を用いて、加工金属とワイヤーの間で一秒間に数十万回放電爆発が繰り返されています。

このようなパルス電源を用いる理由は、加工物の加工屑の排出と冷却を行う必要があるからです。

加工物や加工水槽の温度が上昇すれば、金属の熱膨張により精密加工を行う事が困難になります。パルス電流により、放電と冷却(屑の除去含む)をハイスピードで繰り返し、放電状態を安定させることで、複雑な形状の加工や精密な加工が可能になると言えます。
 

ワイヤーカット加工の特徴

ワイヤーカット加工は他の金属加工方法と比べると少々特殊です。

放電加工という方法を安定して行うために、加工する際には加工液に漬けた状態で加工をします。

この加工液に漬けて加工を行うタイプを浸漬式と言い、一般的にはドブ漬け式などと呼ばれる事が多いです。一部、加工液を吹き付けるタイプも存在しますが、ドブ漬け式が主流となっています。

金属を複雑な形状に加工する際には、研磨機、フライス、マシニングセンタなど様々な加工機が使われますが、基本的には切削部分に加工液を吹き付けます。加工層の中で、加工液に浸した状態で加工を行うのはワイヤーカット加工独特の特徴だという事ができるでしょう。

なお、加工液に使用するのは「純水」や「油」です。

純水の場合:安定した放電が可能になる為、効率良く加工を進める事ができ作業時間の短縮へ繋がります。

油の場合:通常、加工後は表面がサビで変色します。(加工後にはブラストマシンなどを使用する事が多いです。)しかし、油を使用する事で加工面を錆びにくくすることができます。


 

ワイヤーカット加工が使われているもの

ワイヤーカット加工は、プレス金型や精密部品、硬度の高い焼き入れ部品の加工で使われる事が多いです。

ワイヤーカット加工は、同じ部品を量産、というよりもオンリーワンの複雑な形状であったり、誤差100分の1以内の寸法精度が要求されるような場合に使用されます。

なので、普段の生活の中でワイヤーカット加工を行った部品や製品を見る事はほとんどないでしょう。

しかし、あなたの家で使っている調理器具やアルミサッシ、爪切りなどはプレス金型を用いて製造されているのです。

プレス金型の部品加工は高精度が要求される為、ワイヤーカット放電加工がとても活躍しています。

ワイヤーカット加工は、陰ながら私たちの便利な暮らしを支えてくれていると言えるでしょう。

ワイヤーカットとレーザー加工の違い

「切断」という加工において、ワイヤーカット加工とレーザー加工の違いについて解説しておきます。

どんな加工をしたいのか。どれくらいの精度が必要なのか。

両者の違いを知っておくことで加工方法を使い分け、効率よく金属を加工する事ができます。

オーバースペックになると、どうしてもコストが割高になってしましますので適切な加工方法を選びましょう。

<加工精度>

ワイヤーカット > レーザー加工 

ワイヤーカット加工が断然優れています。切断面も波打つことなくきれいに仕上がります。レーザー加工の精度はメーカー保障で±0.2㎜以内となっています。

<加工時間>

レーザー加工(700~10,000㎜/分) > ワイヤーカット(20㎜~500㎜/分)

レーザー加工の方が短時間で鋼板の切断が可能です。ワイヤーカットは精密に放電加工する為時間が掛かります。ワイヤーカットの場合、板材を重ねて加工する事で、同じものを一度の加工で複数枚加工する事もできます。

レーザーで一枚一枚加工するのか、ワイヤーで5枚程度重ねて一度で加工するのかによって生産性は変わってくるかもしれません。

一回の加工時間はレーザー加工の方が断然早いです。

ワイヤーカット加工のメリット

ワイヤーカットのメリット

ワイヤーカット加工のメリットをまとめて紹介します。

・導電性があれば、材料の厚みや硬さに関係なく加工を行う事ができる。

・高精度な加工が可能。研磨機と同等の寸法精度(0.005㎜単位)を出す事が可能です。

・複雑な形状の加工が可能です。
(通常は困難な形状も一度で加工できます。直線や円弧、小径Rなどの組み合わせも問題ありません。上下のワイヤーを使い分ける事でテーパー形状の加工も行えます。)

・バリの発生が無い為、作業時間の短縮が期待できます。

・工具が不要。ワイヤーカット放電加工機の工具は、比較的安価な黄銅性のワイヤーのみとなります。刃物工具は一切不要です。

・無人運転及び夜間運転が可能です。

このようなメリットがあります。

ワイヤーカット加工のデメリット

ワイヤーカットのデメリット

ワイヤーカット加工のデメリットをまとめて紹介します。

・導電性のない材料は加工できない。

・加工速度が遅く、大量生産には不向き。

・底が必要なザグリ加工などは出来ない。
(放電加工で底が必要な場合は型彫放電加工機が必要になります。)

・加工物に対し水平方向の加工は出来ない。
(必要な場合は一度加工物を向きを変更して再度セッティングする必要があります。加工物の大きさによってはこれも不可能になります。)
 

まとめ

ワイヤーカットまとめ

今回はワイヤーカット加工について詳しく解説しました。

本記事を読むことで「ワイヤーカット加工はどんな加工なんだろう。」「あんな細いワイヤーでどうして金属が切れるんだろう。」そんな疑問は解消したのではないでしょうか。

ワイヤーカット加工は極細ワイヤーを電極として使用し、放電熱により金属を切断する方法です。その為、一番の特徴は「電気を通す素材であれば硬さや強度に関係なく加工する事が可能」という事になります。

ワイヤーカット加工の方法と特徴によって様々なメリットとデメリットがある事も解説しました。メリットが多く、他の加工方法では不可能な場合もあるので、プレス金型、精密部品には欠かせない加工方法の一つとなります。精密部品に携わる方は是非覚えておきましょう。

 

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